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時間の螺旋階段

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 などというものが起こり、ネットカフェ難民などと言われる人が増えてきたり、急に派遣契約を解除された人が年末にどっと増え、路頭に迷った人を助けようと、ボランティア団体が、彼らのために、テントを用意したり、炊き出しを行ったりして、いわゆる、
「派遣村」
 というものを作って、援助したというニュースは、まだ耳に新しいのではないだろうか。
 そんな状態なのに、首にした会社は何ら手を差しのべない。
「自分たちもそれどころではない」
 と言いたいのだろうが、果たして、
「正義はどこにあるというのか?」
 と思わざるおえない。
「世の中というのは、何かを捨てないと成り立たないものだ」
 とでも言いたいのだろうか。
 それからネットカフェにはシャワーや寝泊まるグッズが置かれるようになったのではないだろうか。
 そんな時代があり、街にはホームレスが溢れた。前述のように、元々は駅や地下街の通路で生活をしていたホームレスが、一時期、自治体か政府がどこかの施設に彼らを収容するような話があったが、結局、それもどうなったのか分からず、一時公園や河川敷が彼らの住処となっていたが、それもいつの間にか数が少なくなっていた。
 夜中に公園を歩いても、今は以前ほど見かけることがないような気がする。一体どこに行ったのだろうか?
 やはり基本的には、インターネットカフェなどが一番多いのかも知れない。昭和の頃であれば、一泊百円程度の二段ベッドの一段をねぐらにするかのようなところで生活している人もいたようだが、今はインターネットカフェということになるのだろう。
 また、あれはいつ頃のことだっただろうか?
 かなり前のことだったような気がするが、
「おやじ狩り」
 などという言葉が流行り、夜中に男性の成人を襲い、金品を奪うということもあった。
 鉄パイプなどを使い、集団で例えば酔っ払いのおやじを殴る蹴るなどの、いわゆる集団暴行であった。
 それも犯罪を行っているのは未成年の、いわゆる少年犯罪、これは路上強盗の一種だと言ってもいいだろう。
 そんな中で、ホームレスが殺されたこともあった。それだけ治安が悪かったということなのだろうが。
 そんなおやじ狩りの舞台になったのが公園だったりもする。そういう意味で、夜の公園は一人だと恐ろしいというイメージもあり、なかなか一人でいるのも恐ろしくなっていた。確かおやじ狩りの時期というと、街の光景を一変させる事件が起こったのもこの頃ではなかっただろうか。
 この時期は信じられない事件や災害が多かった時期でもあった、
 まずは、冬に起こった阪神地方を襲った大震災。そして、三月に起こった、帝都営団地下鉄の通勤時間における、「毒ガスによるテロ事件」、いわゆる、
「地下鉄サリン事件」
 である。
 この事件が起こってから、街で起こったこととして、
「ゴミ箱の撤去」
 というものがあった。
 特に、駅や公園内に設置させていたゴミ箱が撤去されたのが特徴で、駅ではまだあるところもあるが、公園ではほとんど見ることができない。
 下手に置いていて、そこに不審物として毒ガスのようなものが仕込まれていると恐ろしいという観点からなのであろう。
 それがいいことなのか悪いことなのかは分からないが、公園からゴミ箱が消えたのは事実だった。
 そうやって考えてくると、公園というのも、昭和の頃とはまったく違った様相を呈してきたような気がする。
 当時当たり前にあったものがなくなったり、あれだけいて社会問題だったホームレスが消えたりして、公園というのは、そういう意味で、
「歴史の証人」
 という言い方をするのは大げさであろうか。
 令和三年のある日のことだった。当時は伝染病の流行によって、政府による緊急事態宣言なるものが、出されたり解除されたりで、国家が迷走していた時代。いや、
「これは政府による人災だ」
 という人もいるが、なまじただのウワサではないと、誰も言わないだけで、心の中で思っている人も大半だっただろうが、そんな時であったので、夜の公園は、ほとんど人がいなかった。
 最初に発出された宣言の時は、誰もが伝染病の恐怖のためか、自らで自粛する行動に動いたものだ。
 家から出る人もそんなにおらず、問題は、飲食店や商業施設などに人が来ないことでの売り上げ減少による経済の滞りであった。
 政府としては、それらの経済の問題と人流とをいかにバランスよく収めるかという難しい選択ではあったのだろうが、すべてが裏目、感染のさらなる拡大をしてしまったことで、収拾がつかなくなった。
 しかも、政府が自分たちの利権に走ってしまったことで、さらなる蔓延を招いたことで、国民はもう、誰も政府を信じなくなっていた。
 特に首相自らが、国民全員が反対しているオリンピックを、
「自分の在任中に行いたい」
 というだけのエゴのために強行しようとしている。
 それこそ、狂気の沙汰ではないと言われる状態だった。
 何しろ、日本よりもひどい状況の国もあるというのに、それらの国からかなりの数の外人が入ってくるのである、これを暴挙と言わずに何と言えばいいのか、
「首相は、国民の命を犠牲にしてまで、自分のわがままを通そうとする史上最低の首相だ」
 と言われるようになったいるのだったが、それを止める人がいないのは、まるで独裁者ではないか。
 そんな令和三年の春先のことだった。地方の中でも割合大きめの都市にある公園で、一人の男性の他殺死体が発見された、
 当時はちょうど、緊急事態宣言が発令されていて、昼間はさほど人流に変化はない(それでも、政府は減ったなどと言っていたようだが)状態であったが、宣言の骨子として、
「夜八時以降の飲食店、商業施設の営業自粛」
 が要請されていた。
 もちろん、強制力はあっても中途半端で、要請に応じたところには、支援金が出るというが、
「それっぽっちのお金で賄えるはずがない」
 と言って、営業しているところもあるにはあったが、実際には人がいるわけでもないので、開けていても、客は入ってこない。
 しかも、その宣言中は、アルコールの提供は不可ということだったので、余計に開けることができなくなる。
 普段であれば、午後五時に開店し、十二時頃までの営業だったのが、八時まででは、まったくもって売り上げにはならないというところが大半だっただろう。
 それなのに、感染が減るわけではない。一旦減っても、一月か二月でまた蔓延してくる。そして、緊急事態を宣言する。この繰り返しは、いかにも負の連鎖だったのである。
 緊急事態宣言が出ている間、居酒屋やバーのような店が開いていないことで、一時期。公園での、
「路上飲み」
 というのが流行った。
 歩道や公園で酒を飲み、マスクを外して大声で笑ったり喋ったりしている馬鹿者たちである。
 そんな連中をマスゴミ(マスコミではない)が煽るものだから、余計にそういう連中が増えてきて、一時期、夜の公園は賑やかなものだったが、取り締まりを強化し、駅近くの大きな公園などでは、バリケードや柵を作って人が来ないような措置を施しているところもあったりした。
作品名:時間の螺旋階段 作家名:森本晃次