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悪魔の保育園

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「普通なら、スマホの指紋を誰かが拭いたというのなら分かるんですが、ふき取った跡はないんですよ。そうなると、その指紋が誰のものかということになるんでしょうね」
 と鑑識官がいう。
「ところで、その指紋はどこから出ているのか分かりましたか?」
 と言われた鑑識官は、
「確認してもらったのですが、指紋は照合できたようです。それも、つい最近になって出てきた指紋なんですよ」
 というではないか。
「それはどういうものなんですか?」
 と聞くと、
「最近、ニュースで騒がれている事件の中で、幼児虐待をしているのではないかという疑いのある保育園があるでしょう? あそこの保育士の女が三人浮かんでいるんですが、そのうちの一人の指紋なんですよ」
 というではないあ。
「ああ、その事件なら、最近、毎日のようにニュースに出てくるよな。正直、許せないと思って見ているんだけど、その事件の容疑者? 容疑者でいいのかな? その三人のうちの一人と指紋が合致したんですよ」
 というではないか。
 その事件というのは、管轄は違うが、同じ県での事件で。
「今時、そんな保育士が本当にいるのか?」
 とばかりに、世間を騒がせていた。
 事件のあらましというのは、こうである。
 ここ数か月くらい前から、子供の様子がおかしいといって、親が病院に連れて行くと、
「この子は、精神が病んでいる」
 と言われたのだという。
「どういう教育をされているのか?」
 と聞くと、
「ちゃんと保育園に預けている」
 と母親はいうではないか。
 すると医者は、
「この子は完全に、まわりに対して恐怖症を感じていて、虐待を受けた子供に見られるような症状があります」
 というのだ。
 そこで、親が保育園に連絡を入れてみると、
「うちの保育園に限って、そんなことはありません」
 というではないか。
 しかし、いろいろ調査してみると、同じような悩みを抱えている保護者もいるようで、連絡を取り合って話を聴いてみると、
「お宅もなんですか? うちもなんですよ」
 というではないか。
 ここに至って、保育園が関わっていることが明白になり、元凶が保育園であることは、ハッキリしたのだ。
 そこで、他の保護者で似たような不安や疑念を持っている人がいないかと思って探してみると、出るわ出るわの大騒ぎであった。
「皆、同じ悩みを持っていたんですね」
 ということで、皆で金を出し合って、弁護士を雇い、その指示でいろいろな証拠集めを行った。
 もちろん、弁護士事務所の人たちも実際に動いてくれて、いろいろなことが分かってきたのだ。
「どうやら、保育士は、6人いたそうだが、そのうちの3人が、今回のことに関与しているということみたいですね。それも、虐待というのも結構ひどいもので、脚を持って、逆さ吊り状態にしてみたり、バインダーで頭を殴る。さらに、ナイフを鋭利な部分を見せて、脅していうことを聞かせるなどという、ありえないことが繰り返されていたようです」
 という報告で、
「なんだ。それは、大人に対してでも、トラウマを与えるようなことを、よく子供にできるものだ。相手が子供だからって。やっていいことと悪いことがある」
 と憤慨する親もいて、
「いやいや。あいつらは、金をとっているんだから、そんなことが許されるわけもない。常識以前の問題だよ」
 というではないか。
「じゃあ、どうするか?」
 ということになったので、
「とりあえず、あいつら三人を訴えよう」
 ということになったようだ。
 それでも、中には、
「そんなことでは生ぬるい。特に保育園がどこまで関わっているかということも問題ではないか?」
 ということになり、
「じゃあ、これをマスゴミにリークすればいいのではないか」
 と、あらかたその方針で固まったようだ。
 だから、それがマスゴミのスクープによって暴かれると、案の定、世間はハチの巣をつついたような大騒ぎになった。
 それはそうだろう。最近は、保育園の問題が結構山積していたからであった。
 保育園の問題で最近多いこととして、
「保育園バスに園児を置き去りにしてしまい、気が付いた時には、脱水症状で亡くなっていた」
 という、これも信じられないような事件だった。
 それも、このような報道があってから、数か月しか経たないのに、似たようなことが他の幼稚園でも発生していた。
「保育園の管理体制はどうなっているんだ?」
 と父兄や、ここまで問題が大きくなると、保育園を管轄している、厚生労働省も、見て見ぬふりはできないというものであった。
 実際に、そういう問題に発展してくると、警察の捜査も入り、管理体制を見直すという意味でも。実態解明のため、警察は家宅捜索を行い、いろいろな書類を押収していったりしたものだ。
 証拠隠滅に繋がるからであるが、警察がここまで踏み込むのは、それだけ社会問題として大きいということをうかがわせるものであった。
 そうなると、もう保育園は経営も成り立たないだろう。
「あの時、少しでも確認していたら」
 と思ったとしても、すべては後の祭りであり、死んだ人間は帰ってこないのだ。
 だが、この問題は、あくまでも、
「業務上過失」
 によるものである。
 それでも、保育園は経営を行えなくなり、裁判沙汰で、心神ともにズタズタになったことだろう。
 同業者であれば、
「かわいそうに」
 と思うかも知れないし、逆に、子供を預かっているという思いが強いと感じている全国の保育園関係者のほとんどは、
「自業自得」
 と思いながらも、その反面、
「明日は我が身だ」
 と感じていることだろう。
 そう感じているところはまだ救いようがあって、それを考えず、
「まったく自分たちとは関係のないところで起こっていることだ」
 と思っているとすれば、それは大きな間違いである。
 他人事にしか思えないから、再発を防止できないのであり、今回のような、
「救いようのないという意味で信じられない事件」
 が明るみに出るのである。
 何と言っても、
「置き去り事件」
 の場合は、あくまでも過失なのだ。
 しかし、虐待に関していえば、これは、わざとやっていることであって、しかも、相手が、まともにしゃべることもできず、考えもあってないような子供たちを、本当は、養育を目的にお金を貰っているのに、ズタズタにして親に返しているのである。
「お金を貰って預かっておきながら、見ていないのをいいことに、自分たちのやりたい放題のことをして帰している」
 ということである。
 人道的にも明らかにアウトであり、許されることではないであろう。
 そんな状態が明らかになるにつれ、保護者たちも怒りで震えたに違いない。
「これまで、どれだけの保育園が問題になってきたのか、分からないわけでもないだろうに、日常的に、年端もいかない幼児を、何も分からないのをいいことに苛めて、親に説明できるだけの能力がないことを百も承知でやっているのだから、確信はとしても、甚だしい」
 といえるであろう。
 確かに、進んできた捜査を見るうえで子供を見ていると、
作品名:悪魔の保育園 作家名:森本晃次