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悪魔の保育園

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 相談に来た相手であっても、話を聴いてあげて、ストーキングを行っている相手が分かっているのであれば、ストーキングをしないように、注意勧告を行うことはできるであろう。
 しかし、それも電話などがほとんどで、実際に遭ったこともない相手なのだから、相手が下手に出たり、謙虚な態度に出てくれば、
「なんだ、話せばわかる相手ではないか」
 とばかりに、信用する刑事もいるだろう。
 しかし、そもそもストーキングを行うようなやつなので、本当は相当頭のいいずる賢いやつなのかも知れない。だが、警察の方は逆に、
「どうせ、ストーキングのような卑劣で陰湿なことしかできないんだから、一般の人に比べて、抜けていたり、異常性格なんだろう」
 という思いから、相手を舐めてかかっていることもあるだろう。
 だからコロッと騙されて、被害者に対して、
「相手は分かってくれましたよ」
 と言って、安心させようというのかも知れない。
 相手の女性も、
「警察が言ってくれたのだから」
 ということで安心する人も少なくないだろう。
 そもそも、警察に話してもらい、相手に納得させることができ、ストーキング行為がなくなれば、それでいいわけだからである。
 ストーキング男も、さすがに警察から電話がかかってきて、彼女が警察に駆け込んだということが分かると、
「しばらくはおとなしくしておくしかないな」
 とうことは分かるはずである。
 それを考えずに、先走ってしまうと、自分が逮捕されてしまうことも分かるからだ。
 そもそも、ストーカーというのは、自分が悪いことをしているという意識はないだろう。むしろ、
「俺がこんなに好きなのに、あの女はどうして分かってくれないんだ?」
 という気持ちである。
 人間全体に対して、自分の優越性を持っているわけではなく、逆に世間一般に対しては、劣等感やコンプレックスを抱いているに違いない。だから、逆に自分が支配できるような、自分のいうことであれば何でもいうことを聞いてくれる人が現れるのを待っていたのかも知れない。
 そんな男の正体を分からずに、誰にでもするような気遣いをしたとすれば、男の方としては、果たして、
「ああ、こんな俺に優しくしてくれる女性」
 と感じると、今度は、
「この人を待っていたんだ。この人はもう俺のことが好きで、俺のためなら何でもしてくれる人なんだ」
 とやっと、探し当てた気持ちが男を有頂天にさせたに違いない。
 そして男の奥にある、
「オンナへの征服欲」
 が、芽生えてくるのだろう。
 男性が誰でも持っている、
「オンナへの征服欲」
 ただ、これは男性だけに限らず、女性が男性に持っている場合もある。それがこの男の精神状態とシンクロしている存在なのではないかと言えるのではないだろうか。
 そんなことを考えていると、
「ここで、男女の関係の間に、決定的な結界ができてしまうのではないか」
 と感じられるのだった。
 ストーカーは、
「俺のことを好きな女を追いかけて何が悪い? 嫌がっているのは、恥ずかしがっているだけなのだ」
 と、思い込み、逆に女性は、
「どうして、私にばかり粘着してくるのかしら? 気持ち悪い」
 という気持ちが芽生えてくる。
 男は、
「女を自分の奴隷であるかのように見ていて」
 女の方は、
「この人、生理的に受け付けないわ」
 と感じながら、その視線の先には、まるでゴキブリを見ているかのような気持ちなのだろう。
 そんなことを考えていると、そこに結界ができてしまい、その結界を果たして、どちらも分かっているのだろうか?
 それに関しては難しいところで、その時のパターンにとって別れるところではないだろうか。
 ただ、言えることとしては、ストーカーの方が、攻めている分、勢いがある。逃げる方が、辛いという意識はあるが、なぜ自分が逃げているのかということは分かっていないだろう。
 それは、相手が、
「理不尽だ」
 としか思えないからだった。
 一番最初に、
「理不尽だ」
 と思ってしまうと、そこから先の思考は止まってしまうのだ。
 なぜなら、一番最初に結論を見出してしまったからだった。
 最初に結論を出してしまうと、目の前の出来事がすべて理不尽に思えてくる。女性はストーキングされたことで、精神の安定が保てなくなり、体調にも変調をきたしてしまうかも知れない。
 そこで考えるのが、
「私が女だからかしら?」
 というものだった。
 男と女というと、力関係であっても、すべての意味で、
「圧倒的に不利だ」
 と思っていることだろう。
 世間では、
「男女雇用均等法」
 に基づいた考えで、
「やけに女性の権利、いや、人間としての権利を女性も持たなければいけない」
 と4-考える女性が増えてきた。
 それに対して、なぜか男性もそのことを了解しているのか、法律の整備も進んでくる。
 しかし、考えていることと、実際とでは、
「天と地」
 ほどの差があり、言いまわした言葉だけが先行し、実際の会社や、一般社会の中で、
「女性の権利」
 というものが皆から容認されるようになったのは、だいぶ経ってからであろう。
 しかも、みんなが皆熟知しているわけではなく、
「納得はいかないが、納得したふりをしないと、社会でおいていかれる」
 という思いから、渋々、いうことを聞いているという人もいるだろう。
 しかし、女性には、そういう男性の態度が露骨に見えるようだ。すると、遠慮することなく、そんな男に対して、女性から、鋭い視線がいくことだろう。
 そうなると、男の方も委縮してしまい、社会に出れない輩も増えてくる。
「こういうやつが、ストーカー予備軍になる」
 と言っても過言ではない。
 なるほど、確かにストーカーというのは、
「気が弱い人が」
 なりやすいものだという話も聞いたことがある。
 だからと言って、女性にコンプレックスを持っているわけではない。大嫌いな人が、生理的に受け入れられない人だということも一概には言えない。
 女性の方でも迷っていたり、悩んでいたりする。
 ストーカー予備軍は、孤独だと思っていることで、同じタイプの人間を仲間だと思うのだろう。
 だから、女性が悩んでいたりすれば、
「あの人も仲間なんだ」
 ということで、無意識に近づいていることもあるだろう。
 それが、
「ストーカー行為の始まり」
 である。
 男とすれば、無理強いをしているつもりはない。
 なぜなら、
「この人は自分と同類で、同じような相手を探していたんだ。それが僕だということで、心の底では喜んでいる」
 と思い込むのだ。
 しかし、女性とすれば、
「生理的に受け付けない相手が、目の前に飛び出してきた」
 という感覚になっていて、だから、逃げるのだった。
 男性とすれば、
「なぜ逃げる?」
 と思うだろう。
 そう思ったのだったら、止めればいいのに、それができないのだ。自分にも同じものがあって、同じタイプの人が寄ってくれば、
「両手を差し出して受け止めてあげよう」
 と思うことだろう。
 しかし、そこまで思い切ることができないのは、
「俺は女の扱いに慣れていない」
 と思うからだ。
「慣れていない」
作品名:悪魔の保育園 作家名:森本晃次