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悪魔の保育園

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「ええ、その話は分かってます。我々がこうやってお邪魔したのも、彼女が警察に相談した時、ストーカー被害に遭った時、緊急連絡があったとして、彼女の連絡を最優先で対応できるというシステムに電話番号を登録していたんですよ。だから、彼女のケイタイから連絡があったが、無言で切れたそうなんですよね。それで、我々も、GPSを使って捜索してみると、発信がとある学校の教室からだったようで、そこに行ってみると、ケイタイだけが放置され、本人がいなかったというわけなんです。それで、彼女の安否をます確認しようと、こうやって捜査しているんですが、今のところ、とっかかりがないというところですね」
 と刑事が言った。
「そうなんですが。彼女の家にはいかれましたか?」
 と聞かれると、
「どうやら引っ越しをしているようで、引っ越し先が分からないんですよ
 というと、
「ああ、分かりました。後で、住所はお教えしますね。でも、彼女に何かあったなどということは、信じられません。前のストーカー問題も解決していましたからね」
 と、上司はいう。
「どう解決されたんですか?」
 と刑事が聞くと。
「実は、彼女にストーキングしていたのは、彼女の後輩だったんですが、その男が、実は他にもつき合っている女の子がいたようで、その女の子が嫉妬し始めたんです。その男は、まさかつき合っている彼女が嫉妬するなどということを思ってもいなかったようなので、相当驚いたようなんですよ。結局、向こうがもめてしまって、彼女に対しては、それ以降ちょっかいを出してこなくなったんです。会社もその男は辞めてしまいましたからね。たぶん、彼女が嫉妬し続けると思って、その懸念があったんでしょう。だから、自分から辞めていきました」
 というのであった。
「じゃあ、その男が今はどうしているかということは、ご存じないわけですね?」
 と刑事が聞くと、
「ええ、分かりません。彼女からは、一度。ご迷惑をおかけしましたが、何とかなりましたということを言われただけでしたね。こちらも気を遣って、それ以上は聞かなかったし、聞く必要もないですからね」
 と上司は答えた。
「まあ、もっともなことだろう」
 ということで、とりあえずの事情は聴くことができた。
「上司の話から判断すると、前のストーカーの男が絡んでいる可能性は低いんだろうな」
 と刑事は思った。
 そこで、上司から、彼女の家を聴いて、行ってみることにした。一応緊急連絡の電話がかかって、その相手が行方不明で、無断欠勤をしたことのない人が、3日無断欠勤をしているということなので、捜査令状は取ることができた。
 聞いた住所に行ってみると、学生が住むような、いわゆる、
「学生アパート」
 のようなところだった。
 管理人に、捜査令状を示し、カギを開けてもらって中に入ったが、いくら一人暮らしとはいえ、女性の一人暮らしの部屋の割には、あまりにも何もなかった。
「生活臭がしない」
 と言ってもいいのではないだろうか。
 管理人に聴いてみると、
「おとなしい感じの方だと思いますね。実際に目立つタイプの方ではなかったです。自分から何かをしようというタイプではなかったので、そんな風に感じるんでしょうね」
 ということであった。
 一緒にきたもう一人の刑事も、部屋の様子に相当な違和感があったようで、
「まるで断捨離でもしたんじゃないか?」
 というほどだったのだ。
 実際に部屋に入ってみると、そこには、ゴミもなければ、冷蔵庫を見ても、ほとんど入っていなかった。
「やっぱり、生活熱のようなものが感じられないんだよな。女性が一人で暮らしていたとは思えないような部屋なんだよな」
 という。
「本当に、2,3日いなかったくらいなんでしょうかね?」
 というので、
「会社には出勤していたというのだから、ちゃんといたんだろうよ」
 と、先輩刑事は言った。
「とりあえず、指紋だえでも、採取してもらおう」
 と言って、同行してもらった鑑識の人に、指紋の採取をしてもらった。
「指紋など取ってどうするんです?」
 と後輩刑事が聞いたが、
「そりゃあ、そうだろう。何と言っても、昨日見つかったスマホに残された指紋とを照合する必要があるだろう。それによって、あのスマホが、本当に、西牟田さんの所有のスマホなのかということが分かるというものだよ」
 と先輩は言った。
「なるほど、確かにそうですよね。それに、これで彼女の指紋も分かりますよね」
 と後輩刑事は、そこまでいうと、
「ねるほど、これで彼女に何があっても、指紋さえ残っていれば、それで何かを分かることができるんだ」
 ということであった。
 二人の刑事はそのことを自分なりに理解していたようで、さらに感じたこととして、思うところがあったが、後輩刑事はそれについて確認したかった。
「すみません。桜井刑事」
 どうやら先輩刑事は、桜井という名前のようだった。
「ん? どうした。坂口」
 後輩刑事の方は、坂口刑事という。
「少し気になっていたんですが、彼女の勤めている会社の社長さんなんですけどね。どうにも気になるんですよ。何がきになるのかと聞かれると、ハッキリとは言えないんですけど、何かが気になるというところなんですよね」
 というのだった。
 それを聞いた桜井刑事は、
「ああ、それは私も思っていたよ。もっとも、会社社長などをしていると、どうしても、会社を守りたいという思いがあるからか。あんな自信がないような態度になるのも分からなくもないが、それにしては、我々に喋りすぎるところがあると思ったんだよ。あの態度はおそらく、何かを隠しているからだと思うんだよね。よくいうだろう? 木を隠すなら森の中ってね。あの発想ではないかと思うんだ」
 と、いうのだ。
 それを聞いた坂口刑事も、必要以上なオーバーアクションをしているようだったが、ただ、二人とも、どこか阿歯切れが悪い気持ちになっているのが、その隠していることが、今回の彼女の失踪に何か影響しているかどうかということだと思えた。
 実際に、これが失踪であるとすれば、あのケイタイからの、
「無言通報」
 なるものがなければ、まったく捜査の対象になることはなかったのだ。
 それを思えば、
「何か、我々が踊らされているような気がするな」
 という思いがあるのだが、その意図が分からないだけに、警察側は、
「相手の思惑に乗っかる」
 ということしかないのだった。
 もし、これが事件であって、後から発覚したことで、警察が攻められるようなことにでもなれば、後悔しても、後の祭りとなるだけに違いない。
 それを思うと、
「少々のことでも、捜査を怠るとロクなことはない」
 というのは、桜井刑事には身に染みて分かっていることだった。
 実際に、桜井刑事は、殺人事件を扱うことが多いので、それは、死んだ人のことを操作するものである。しかし、他の課は、生きている人間を相手にしていて、特に八重子が先署に駆け込んだ生活安全課などは、被害者が相談に来ることが多い。
 とはいえ、生活安全課というのは、ストーカーなどの犯罪を扱うことが多く、正直、法律の範囲内でしか捜査できないのも事実だった。
作品名:悪魔の保育園 作家名:森本晃次