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神の輪廻転生

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「ええ、その通り。だから、私の中での恋愛は一人なのよ。他の人みたいに恋愛をちょっとでも付き合いった相手にカウントしてしまうと、何人になるか分からない。要するにお試し期間でも、入会したことになるかどうかというような考えに近いのかも知れないわね」
 とまりえが言ったが、
「こちらの世界では、そんな考え方が主流なの?」
 と里穂が聞きなおした。
「そんなことはないわ。これはきっと私の思い込みにすぎないと思うの。ただ同じことを言っていても、表現はニュアンスが違っているだけだと、あなたなら思うんじゃないかしら?」
 とまりえは言ったがまさにその通りだった。
「まりえさんは、どうしてそんなによく分かっているの?」
 と聞くと、
「今まであまり人と話さずに寡黙な人というのは、結構頭の中で考えがフル回転しているものだから、考えていることが柔軟なんじゃないかっていうのが、自己分析かしら? そのために、まわりの人の考えがあまりにも低俗に見えてくるという弊害もあるんだけどね」
 というのを訊くと、
「いやいや、そんなことはないと思いますよ。あなたくらいの考えを持っている人は。差別的であっても、私はいいと思うんですよ。この世界のように私利私欲に塗れた世界だったら、それくらいの意志を持っていないと、激流に飲み込まれてしまったりするんじゃないかしら?」
 ということを、里穂は言った。
「里穂さんの世界ってどんな世界なのかしらね?」
「私はこちらの世界も少しは勉強しているので、比較する感じの話になるかとは思うんですが、きっとあなたたちの世界から見れば、自由奔放な世界に見えるでしょうね。でも、それは今までの歴史に大きな違いがあるとということもあると思う。私たちの世界では、歴史は時系列に沿って、忠実に流れてきた。でもあなたたちの世界では、時代が逆行するようなことだってあったでしょう? 文化文明などはその最たる例で、せっかく時代が先に進むはずだったのに、ある人物が殺されたことによって、歴史が百年逆行したなんて話を訊いたことがあるでしょう。私もこの世界を勉強してきて、それは特に感じたことなのよ」
 と、里穂はいう。
「確かにそうかも知れない。歴史のターニングポイントの話はよく聞くんだけど、私も歴史を勉強していて感じたことね。でも、これは仕方のないことだと思ってきたけど、それは間違いだったのかしら?」
「そうじゃないわ。今の社会の考え方として、あなたの世界では、どうしようもないことなのかも知れない。歴史の限界とでもいえばいいのか、だから、あなたたちは、次元を超えることも、世界を超えることもできない。時代を超えることは私たちにもできない。それはあなたたちの考えと同じで、過去を変えると未来が変わるからよね。でも、私たちはもっと深く考えている。歴史を変えると、この世界だけではなく、別の世界にも影響を及ぼす。当たり前よね。もう一人の自分がいる別の世界なんだから。もし過去が変われば、あっちの世界には自分がいるが、こっちには存在しないということが起こってくる。時代がそれを許すかどうかね」
「というと?」
「どの時代にも絶対にもう一人の自分が存在するのは当然なのよ。だから、それは決まった歴史の中で動いているからうまくいっているんだけど、何かの歴史の歪で誰かが死んでしまうと、もう一人の自分がいる他の世界でも、その人は消えてしまうことになる。最初からいなかったという感じで綺麗に消えてくれればいいのだけど、下手をすれば、中途半端に消えてしまうこともあるでしょう。そうなると、その人は現実と夢の世界の狭間に落ち込んでしまって。抜けられなくなる。そのイメージがサルガッソと呼ばれるもので。いわゆる『宇宙の墓場』に落ち込んでしまったという感覚に陥るんでしょうね」
 というのが、里穂の見解のようだった。
「さすがに、そのあたりの話になると、壮大すぎて、すぐには何らかの結論は出てこないだろうから、これ以上考えるのは、余計なことなのかも知れないわね」
「そうね、もう一人の自分という感覚を、私以外の世界の人は誰も知らないのよ。私は知ることができて、それぞれの世界に夢という形で入り込むことができるんだけど、その中で私が一番気になったのがあなた、ありえさんなのよ」
 と、里穂は言うのだった。
「里穂さんは、どんな恋愛感情を持っているの?」
 と、今度はまりえからの質問だった。
「私の場合は、恋愛感情というのは、よく分からないんですよ。私たちの世界はこっちの世界のように、倫理などという考えは結構希薄なんです。もっと言えば、恋愛とセックスは切り離すとでもいえばいいのか、身体と心は別物のようなイメージがあります」
 と、里穂は言葉を選んで話したつもりだったが、少なからず、まりえには、その意味が分かりかねているようだった。
「どう解釈すればいいんだろう?」
 というまりえに対して、
「私たちは、性風俗も別に悪いことだという認識はないの。こっちの世界では、彼氏や旦那が性風俗のお店に行けば、怒るでしょう? 向こうではそんなことはないのよ。彼がそんな店に行ったとすれば、女の子は、自分が至らなかったんじゃないかって思うのが普通なんじゃないかな? それに向こうの世界では、男女平等というのが当たり前になっていて、当然、男の風俗があれば、女性の風俗もある、いわゆるこちらの世界でいえば、逆ソープなんていう商売だって、当たり前のことになっているのよ。それにね、向こうにはキャバクラもホストもほとんどないのよ。だって、あれは、癒されたいという気持ちと、その後のセックスを目論んでのことでしょう? 癒されるという感覚は、心身共に一緒だと思うので、身体が癒されることで、精神も癒される。キャバクラとかは、精神が癒されても肉体は癒されるわけではないでしょう? 却って悶々するくらいのもので。それを思うと、向こうのようにソープや逆ソープが世間一般の通常の会社と同じレベルの市民権を持っているわけだから、誰に白い目で見られることもなく、堂々と行けるのよね。それを思うと、こちらのような嫉妬もなければ、嫉妬に絡む犯罪もない。そんな世界なのよね」
 と、里穂は言った。
「何か、ユートピアを思わせる世界ね。言い方は悪いけど、酒池肉林が合法って感じで聞こえるわ」
「聞こえるんじゃなくって、それが当たり前の世界ということかしら」
 二人のそんな会話は、他の人が訊けば、きっと顔を背けるレベルのものであるに違いない。
「里穂さんは、たくさんの男性を知っているということなの?」
作品名:神の輪廻転生 作家名:森本晃次