神の輪廻転生
将来の職業としては、本当の自分を探して、その自分の@役に立つことというし事が存在する。この世界の人間は、他の世界の自分の役に立つことができれば、この世界にも恩恵があり、社会的な立場が保証され、死ぬまで社会からの恩恵が得られるというそんな世界である。
それだけこの世界は、他の世界に比べて立場は劣っているのであろうが、何しろ世界は無数にあるのである。それぞれの世界にランクが存在してもしかるべきだ。
確かに里穂のいる世界は他の世界に比べて立場は弱いが、その分、他の世界の誰もしらないことをこの世界では皆が知っているのである。
こんなにたくさんの世界があることは、ほとんどの世界では、ごく限られた、いわゆる決められた人間しか知らない。ただ、想像するのは勝手なので、こんな世界があるということを小説などにして、フィクションとして作り出す人もいるだろう。里穂のいる世界でも、その本を買うことができる。その本はベストセラーになったが、
「あちらの世界の人でここまで想像できるんだ」
と言って、尊敬する人、
「まさか、本当ンこっちの世界に来たことがあったとか?」
という疑惑を感じる人、それぞれであった。
真意のほどは、正確には分かっていないが、どうやら、他の世界にいた人が小説家のその人と出会って、他の世界の話をしたようだ。
それは別に悪いことではない。他の世界を知らない人を、別の世界に連れ出すことも法律的には問題のないこととされていた。
もっとも、その能力を持っている人間は里穂のいる世界の人間だけだ。だから、里穂の世界の、国内法によるものだが、それらのことについてはいくつか賛否両論であった。
一つは法律上、
「この世界の人間は、この世界の人間としか混人ができない」
ということである。
他の世界の人間と交わって混血ができると。その遺伝子は、他の世界の人間の方が圧倒的に強くなる。つまりせっかく、今であれば、この世界から他の世界に行くことができたり、他の世界の人間を別の世界に移動させることができる力を持っている。
そんなことをしてしまうとどうなるか、何もできない人間が増えてきて、ただでさえ立場の弱いこの世界が何とか存在できるのも、この能力によって、他の世界と差別化され、存在理由を持てるからだ。それがなくなると、この世界が消えてなくなるだろう。この世界は他の世界に対して、とての大きな影響を持っていて。バランサーのような血がらがある。そのバランサーがなくなるということは、この世界だけの問題ではなく、大きな世界が混乱してしまい、下手をすれば、すべての世界が一つになろうとするかも知れない。
そうなるとどうなる?
一つの世界に、同じ人間は一人しか存在できない。そうなると、無数にいるもう一人の自分との間で、生存をかけることになるのではないか。そんな恐ろしい危険を秘めた混血の存在や、その原因となる他の世界の人間との婚姻はご法度であり、見つかれば、一発私刑であった。
あまりにも厳しい裁定に、皆疑問を持っていたが。まさかそんなビッグバンのようなことが起こりうるなど、この世界の人間でもそこまでは知らされていなかった。それこそm一部の人間が知っているだけである。
「ということは、別の世界には、この事実迄もすべてを把握している世界があり、そこにはさらなる万能の連中が存在するが、その人たちは、自分たちよりも劣る世界に存在はしているが、我々から見ると、万能の存在なのかも知れない」
と考えている人もいた。
その人の意見としては、
「それを神様というんだ」
という考えである。
この考えは、間違いではない。それこそが真実なのだ。
そんな神の世界は余談であったが、この世界でもできないことがあった。それは人の心を動かすことであり、それはその人の人権を揺るがすこととなるので、能力すら与えられていない。
人の心を揺るがすことは、どの世界の人間にもできるものではない。神の世界と思っている世界でもできないことで、完全にアンタッチャブルな聖域であった。
里穂はこの世界では落ちこぼれであり、他の世界が存在しているとか、他の世界に行けるなどの話は学生時代には知らなかった。
「小学生の頃に、他の世界の存在を少し勉強して、中学になると、その仕組みを勉強する。高校生からは、実際に各論に入って、大学では実習などを行う学部があるんだ」
と聞かされた。
小学生の頃から勉強が嫌いで、いつも居眠りをしているような生徒だったので、そんな世界の常識すら知らなかったのだ。
他の世界では、
「男性と女性がいて、その二人から赤ん坊は生れる」
というレベルのことを、里穂は知らなかったのだ。
そんな常識も分かっていない里穂にとって、義務教育である中学生までで、それ以降はないのは誰が見ても明らかだった。
里穂は生きていくために、男に身体を売った。もちろん、身体だけであり、相手もそのつもりだった。
この世界では、それも一種の合法だった。売春も悪いことではなく。むしろ生きていくために必要なことであれば、アルバイト感覚で許されていた。
だから、中学卒業から成人するまで(この世界では二十歳)は、売春をしている女の子たちを保護する法律もあり、彼女たちに対しては、どの権力もその権利を犯してはならないという法律である。
成人してしまうと、そこから先は自営業として行うとしても、どこかの会社に入るとしても、自由であるから、保護の必要はなくなる。だから、売春をしている女の子の中には、二十歳になるまでに自分を保護してくれそうな人を探すのも、一つの仕事の一つだった。
だが、里穂はどうしても人間関係を嫌がっていた。そんな時、お客さんから自分たちの能力について教えられ、まるで、
「目からうろこが落ちた」
そんな気分になっていた。
そのお客さんは、他の世界のことに九らしい会社に入っていて、いろいろ教えてくれた。里穂にとって初めて心が通じ合える人に出会ったような気がして嬉しかった。
ちなみに、この世界では、売春買春は悪いことではない。倫理やモラルに反するという理屈もない。正当な職業として認められているのも当然で、むしろ、人を癒す仕事、リラ浮くや、マッサージなどと同じような、いや、もっと大切な仕事として位置づけられていた。
他の世界では、クリニックなどと呼ばれることもあるようだが、まさに医者のようなもので、人気のある売春婦は、名医と同じレベルの扱いであった。
夕方のテレビニュースで、
「今週の名ランキング」
というコーナーでも紹介され、カリスマという称号を与えられるほどであった。
なぜこんなにも他の世界と違うというのか、この世界では、風俗は立派な職業なのだ。
他の世界との一番の違いは。
「この世界には昔から、男女差別などという概念がなかった」
というのが一番の理由であろうか。