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神の輪廻転生

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 ただ、里穂自身もどうして一人に絞るという付き合い方に憧れたのか、そのあたりがよく分かっていないようだった。まりえの世界では、里穂のようなやり方は通用しない、一歩間違えれば犯罪になってしまう。数人の男性と付き合うことは犯罪ではなく、禁止事項でもないが、倫理的にはアウトではないか。ただ、これが相手に配偶者があれば話はまったく変わってくる。不倫ということになり、刑法的には犯罪ではないが、社会的には許されることではなく、民事訴訟に発展することはあるであろう。
 民事訴訟に入れば、証拠があれば有無もなくであるが、物証がなくても、まわりの証言などから、有罪判決に導かれることもある。少なくとも離婚は免れないだろう。そうなると社会的制裁は絶対のものとなり、不倫は悪だという風潮に逆らうことはできないだろう。
 中には不倫を自分の売名行為に使うような輩もいるようだが、そういう連中は恋愛などというのは最初からなく、自分の名誉欲のために行っているだけである。名誉欲を求めるのは悪いことではないが、やり方を間違えると、その制裁は本人が思っているよりも場宇内になって帰ってくることになるだろう。
 里穂は、さすがに不倫までは考えていない。不倫するくらいなら、複数の相手と付き合っている方がマシだからである。なぜ一人に絞りたいのかというと、やはり。
「一人の相手を真剣に愛してみたい」
 という感情からであろう。
 一人の相手を真剣に愛するという感情は、正直今の自分からは感じられない。このままでいても、憧れだけで実行することが不可能なのは分かっている。
 なぜかというと、
「一人に絞ることができないからだ」
 と言えるのではないだろうか。
 一人に絞るということは、好きな相手を選んだ時点で、好きになっていなければならないということだ。今まで複数を同時に好きになることには長けていたが、一人が気になって、その瞬間に好きになるということができないと思っていたからだ。
 しかし、里穂は勘違いしていた。
 まりえの世界であっても、誰かを好きになるのは一瞬である必要はないのだ。それはあくまでも一目惚れであり、一目惚れだけが人を好きになる手段ではないのだ。むしろ一目惚れなど珍しく、知り合ってから、徐々に好きになることの方が多いのではないか。相手のいいところや、今まで気付かなかった自分に気づかせてくれるなどの理由があって、その人を好きになるのだ。
 つまり、いきなり好きになるよりも、好きになる理由があって好きになったその理由を自分で納得してからの方がよほど、理に撒かっているというのではないだろうか。
 だが、一目惚れというのは、そんな中でもセンセーショナルな感動を与えてくれる。なかなか一目惚れができる相手など、そう簡単には見つからないものだ。
「運命ではないか?」
 と思ったとしても、無理もないことだ。
 そんな世界において、一目惚れというのは、危険なものでもある。
 特に若い男女であれば、衝動の元に感情が先に突っ走ることで、失敗した時のことを一切考えない。下手をすると、騙されているとしても分からないだろう、相手が離れても、まわりがすべて騙されていると思ったとしても、本人だけは、一番分かっていないといけない本人だけが分からないという状況に陥るのだ。
 その状況だけが分かってしまうと、つまりまわりが分かっているのに、自分だけが分からないという構図が出来上がっているということに気づくと、本人は余計に意固地になって、
「私の目に狂いはない」
 と、自分の殻に閉じこもるという形になるのではないか。
 そんなことを里穂はまったく知らない。ただ一目惚れというものに憧れているのだ。恋愛という意味においては、まったくの素人だと言ってもいい里穂は、こちらの世の中でまりえを見ながら勉強しようと思うのだった。
 時折夢に出てきて話を訊いて、自分が感じたことが正しいかどうかの答え合わせをしているような感じである。
 ただ、まりえの方も里穂の世界や、他の世界に興味を持っているようで、それに答えながらになるので、なかなか思った通りに答えを引き出せないというのが本音であろうか。里穂は、そんなまりえの世界を、どのように感じているのだろうか?

                 特別というもの

 まりえの彼氏は、まりえとだけ付き合っているのだが、彼は最近、まりえと会っている時、どこか上の空のことが多かった。
 それはまりえにも言えることなので、人のことはいえないが、実は、彼もまりえと同じような夢を見ていたのだ。つまり、里穂の世界にいる「もう一人の自分」が夢に出てくるのである。
 里穂の世界の人間は世界を超えることができて、夢の中に出てくることはできるのだが、夢の中で会える人間は、「もう一人の自分」でないといけないのだ。
 まりえの彼氏は名前を西川豊といい。彼はまりえとは高校時代からの仲であった。
 高校時代にはお互いに意識をしていなかったが、高校を卒業したら、もう会うことのないと思っている人たちの中にお互い含まれていたのだが、同じ大学に合格し、入学式の日に再会したことで、お互いに惹かれるようになったのだ。
 入学式というのは、第一日目の大切な日、その日に知り合った相手とはずっと仲良くしていけると思っていただけに、入学式での再会は、まさにタイミングがよかったのだ。
 逆にいえば、入学式の日に遭ったのでなければ、ここまで仲良くはならなかっただろう。
「友達の中の一人」
 という程度くらいのもので、まさか男性として意識するなど思ってもいなかった。
 まりえも、西川も、高校時代まで付き合った相手はいなかった。お互いに初めての付き合う相手であり、
「えっ、西川君。誰とも付き合ったことないの?」
 と聞くと、
「まさか、まりえさんもだったなんてね」
 と言って、意外な思いと、嬉しさとが半々だった。
 まるで初恋を大学時代にしたみたいな感覚だった。
「初恋は淡い思い出しか残さないものだ
 と思っていたが、それはほとんどの場合、十歳未満なので、失恋する可能性が当然高く、それが恋愛の最初の定番のような感じだが、同じ初恋でも、大学生になっていれば、お互いに知識もあるので、対応方法も大人なのだろう。
 下手に、高校時代までのようなドロドロな恋愛を経験した人と違って、新鮮な感覚があるおかげで、長続きしていて、そして、
「私にはこの人がいればいい」
 というところまで感じるようになっていた。
 最初は、まりえよりも豊の方が熱心だった。そのうちにまりえの方が気持ちが高ぶっていって、ちょうどいい仲になってきたのだ。
 ただ、最近はまりえの夢の中に、里穂が出てくるようになってから、デートしていても、少し上の空のことがあったが、幸いにも豊かには分かっていないようだった。
 豊はそれほどボーっとしているわけではなく、結構気付く方だった。それなのに、まりえに対しては若干分かっていないことも多いようで、
「贔屓目に見ているのだろうか?」
 と、豊は感じたのだ。
 そんなまりえの様子が変わったことに気づかなかったのには実は理由があったのだ。何と豊かにもまりえと同じようなことが起こっていたのだ。
作品名:神の輪廻転生 作家名:森本晃次