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ポイントとタイミング

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「死体が発見されたのは、四日前のことでした。河川敷にある結構雑草が生えそろった場所があって、普段はあまり誰も立ち入ることのない場所だったのですが、イヌを散歩させていた人が、イヌの反応を見ておかしいと思って警察に通常されたんです。死後少し経っていたので、イヌには分かるくらいの異臭が漂っていたんでしょうね。さすがに犬の飼い主はその現場に立ち入ることを恐れてすぐに警察に通報したのですが、正直、飼い主の行動派正解でした。ナイフで刺されて、亡くなって否んです」
 とH署の刑事がいうと、
「凶器はどうだったんですか?」
 と、桜井が訊き返した。
「胸に刺さったままでした。凶器が刺さったままだったので、付近にそれほど血痕が残っていたわけではなく、もし、血がもっとたくさん付着していれば、あのあたりは犬の散歩をする人が多いので、もっと早く死体が発見されていたのではないかと思いました」
「ということは、他の場所で殺害されて運ばれてきたのかどうかは分からないということでしょうか?」
「いえ、あんな危険な場所で殺し合いはしないでしょう。あの場所にある雑草はまるで竹のように鋭いものを持っている場所でもあります。格闘すると自分もけがをする可能性がある。疑われた時に傷ができたことをどういいわけすればいいか分かりませんからね。つまり、死体を放置するにはちょうどいいけど、殺人現場としては、まずありえない場所ということになります」
 と、相手の刑事は言った。
「殺されたのはいつ頃だったのでしょう?」
 と、浅川刑事が訊いた。
「鑑識の話によると、死体発見から三日ほど経過しているということですから、今から一週間前くらいということでしょうか? つまりこちらのマンションを引き払って、引っ越してから、一週間くらいが経過していたということですね」
 という話を訊いて。
「じゃあ、その一週間、一体どこで何をしていたんだろう? それに一緒に失踪したと思われる奥さんはどうなっただろう?」
 と桜井刑事は独り言のように言った。
「そこが大きな問題なのは間違いないだろうね。我々もあれから夫婦の行方に関してはいろいろ調べたんですが、まったく足取りがつかめない。特に、引っ越しの夜に近くのビジネスホテルに泊まったのは間違いないんですよ。宿泊履歴にも残っていますし、宿の受付の人に写真を見せて、間違いないということだったからですね。しかも、朝食の時、ちょっとしたクレームがあったとかで、余計に覚えていたということなんです」
 という浅川の報告だったが、
「というと、どんなクレームなんですか?」
「いや、クレーム自体は大したものではなかったようで、別にトラブルに繋がることではなかyったようだ」
「ということは、彼らは自分たちを印象付けようとして、わざとクレームを申し立てたと言ってもいいかも知れないんですね?」
「穿った言い方をすれば、そういうことだろう。真相のほどは分からないが、結果的に彼らが停まったということを印象付けるには十分だったわけだからね:
 という浅川の報告だった。
「先ほど、残っていたナイフというが、そのナイフに付着していた血液は?」
 と訊かれて、
「B型に血液だそうです。ただ、どうも血痕が一種類ではないようなことを鑑識は訝しがっていました。まさかと思ったので、こちらに持参して、今こちらの鑑識に見てもらっています」
 とH署の刑事が言った。
「なるほど、竜二というチンピラを差した凶器も見つかっていませんからね」
 と浅川は言ったが、考えてみれば、もう竜二の遺体は荼毘に付されていて、火葬されてしまっていた。新たな科学捜査は不可能であるため、同じナイフが使われたのかどうかは確定はできないが、少なくとも、竜二の血液型がB型で、凶器の種類は似たような傷口だったことから、限りなく同じ凶器だという結論に達してもいいだろう。
 浅川は、やはりこの二つは切っても切る離せない関係にあることは分かった。
「イヌを散歩させていた人が発見したということは、イヌの散歩コースでもあったんですよね? 他には子供が遊んだ李、カップルが近くにいたりとかはないですか?」
 と浅川刑事が訊いたが、
「確かに子供が遊ぶことはあるかも知れませんが、カップルがいちゃつくには、少し寂しすぎるし、やはり危ないというのもありますね」
 と、H署の刑事は言った。
「じゃあ、ホームレスなどはどうですか?」
 と桜井が訊いたが、
「それは可能性は大きいと思います。もしあのあたりで何かを発見する可能性が高いとすれば、ホームレスというのが一番だと思うんです。あのあたりには結構ホームレスもいますからね」
「とすると、即座に見つけるとすると、ホームレスに見られる可能性、時間が経ってしまうと、今回のように犬の嗅覚ということになるんでしょうか?」
「その可能性が一番高いと思います」
「ということは、犯行現場はやはり別の場所だという可能性が高くなったというわけですね。争っていたのであれば、ホームレスの誰かが発見しているというわけですよね?」
「おっしゃる通りだと思います。ただ、どうしてあそこに死体を遺棄したのかはよく分かりません。処分しようと思えば、いくらでも方法があったと思います。どこか山の中に埋めてしまうとか、海の底に沈めるなど、あんな場所に放置するというのは、死体を隠滅しようとしたわけではないと思われます。発見されることを最初から予知していたことは間違いのないことでしょうね」
「発見されても構わないが、すぐに発見されては困る。そう考えると、いろいろなパターンが考えられますね。例えば、犯人のアリバイの立証に、少しでも死亡推定時刻が遅いことを願っているという場合や、少しでも時間が掛かっていると、鑑識の結果に何かの誤差が出るような話であったり、何かの証拠が時間とともに隠滅できたりなどのことが考えられますよね」
 と、桜井刑事は言った。
 それに付け加えるかのように、浅川刑事が質問した。
「ちなみに、発見された死体の身体から、何かの薬物反応はありませんでしたか?」
 と訊かれて、最初は何のことを言われているのか分からなかったH署の刑事だが、
「被害者は雑誌社に勤務していて、一時期、ゴシップネタとして、麻薬ルートを調べていたということなんです。少なくとも麻薬をやっていた可能性もあるので、少し聞いてみたかったのですが」
 と浅川が訊くと、
「いえ、薬物反応は出なかったということです。一応、司法解剖もされましたが、薬物に関しての反応はなかったようです。ただ……」
 と言って、H署の刑事は少し言葉を濁したが、
「実は被害者は、癌を患っていたようで、一応今のところ、命に別状はないということでした。本当に初期だったので、そのための投薬は行っていました。末期などの痛みを伴っているわけではないので、モルヒネ系の痛み止めを摂取しているわけでもありませんでした」
 という話である。
「それで、保険金などは?」
 と桜井は訊いたが、
作品名:ポイントとタイミング 作家名:森本晃次