小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ポイントとタイミング

INDEX|12ページ/28ページ|

次のページ前のページ
 

 部屋が隣ということもあるが、別に情報があるわけでもないのに、警察が来て聞きこみをしたりしていると、警察や聞かれている人の迷惑を感じることなく、割り込んでくるのだ。
 警察としても、
「すみません。今はこちらにお伺いしているので、あなたはもう少し待ってください。また後で伺いますから」
 と、いうのだが、結局聞き込みが終わると、赤石は立ち去っていた。
 迷惑行為としてしか警察は捉えていなかったが、それ以上の含みがあるのを警察は分かっていなかった。
 ここまで割り込んでくるのは、明らかに捜査妨害だ。最初は警察もそこまで考えていなかった。
 今回の事件で、誰も被害者を知っているわけでもなく、住民からはまともな聞き取りもできなかった。
「なぜあの男がここで殺されなければいえなかったのか? しかも、争った跡も争う音も聞こえなかったというくらいなので、顔見知りと思われる」
 そこがこの事件の一番分からないところであったが、さすがに、ここまで住民が皆口を揃えて被害者を知らないというとは思わなかった。
 もっとも聞き込みの最中、あれだけ赤石という女性が割り込んでくれば、何かいおうと思っていても、何を言おうとしたのかを忘れてしまうくらいになってしまうだろう。
 それを思うと、赤石の行動には何か含みがあるとは考えられるが、どこまで計算してのことなのか分からなかった。
 しかも被害者との関係を組みが最初否定していたので、組の方からの情報は得られない。それに被害者と赤石の関係もまったく出てこなかったこともあって、暗中模索だった。
 赤石と被害者のチンピラの関係は結構早くに調べられた。隣ということもあり、捜査妨害も見られたので、早めに調べたのだ。
 だが、実際には赤石と被害者には関係があったのだが、早めに調べてもらう方が赤石にはよかった。少しでもまわりが見えてしまうと、関係が分かってしまうこともあるだろうが、警察というもの、一度調べてシロだと思ってことは、よほどの何かが出てこないと、赤石と被害者は関係ないということが確定してしまう。
 赤石は被害者とどのような関係にあったのかというのは、そう簡単には分からないだろう。それが分かってしまうと、この事件の半分は解明されたと言ってもいいだろう。そういう意味では最初に自分のことを調べさせるということで、偽装工作を目論んだのだから、この女が事件の犯人側に限りなく近いところにいるのは確かである。
 その役割がどこにあるのか。なぜ、殺されたのがこの男だったのかということが、ある意味この事件の肝であると言ってもいいだろう。
 チンピラというのは、年齢的にはまだ三十歳にもなっていないくらいの、本当に、
「街のチンピラ;
 という雰囲気の、普段からアロハシャツでも着ていると似合う感じであった。
 ただ彼は一人で行動するというわけではなく、その店の用心棒としての役目があるので、ほとんどの場合は他のチンピラ連中と同じ行動だった。
 夜は店の用心棒、昼は兄貴と呼ばれる人が借金の取り立てなどに言う時に、まわりを囲んでいる、
「怖いお兄さんたち」
 という役目があるが、昼は比較的行動が自由だった。
 そんなに毎回借金取りもないということなのか、借金取りについていく人の人数が足りているということなのか、それはありがたいことだった。
 この男は、数か月前までは、女がいたようだ、どこの何という女なのかは、兄貴と呼ばれる男は知っていた。桜井が強くいうと、アッサリと兄貴は白状したが、
「二人は半年前まで付き合っていたんだが、急に女が姿を晦ましたんだ。女がどこに行ったのか、我々にも分からないし、本人も知らなかったんじゃないかな?」
 と言っていた。
「今でも行方不明のままということか?」
「ええ、そうですね」
「じゃあ、その後、竜二に他に女ができたというウワサはないんだな?」
 いい忘れていたが、被害者の名前は、高倉竜二という。
「ええ、そんな話は聞いたことがありません。たぶんいないと思いますが、ただ、我々の知らないところで最近、人と合っているようなんです。どうも、それが女は女なのですが、付き合っているというようなわけではないということのようなんです」
 と言った。
「お前たちはどこまで知っているんだ?」
 と桜井刑事に訊かれた兄貴分は、
「詳しいことは知りませんが、どうも、その女は一筋縄ではいかない女だというのを、やつが殺されたと聞いた時、やつと一緒につるんでいるチンピラが行っていたんですよ」
「何が一筋縄ではいかないというんだ?」
「ハッキリとは分かりませんが、われわれにもその女の正体が結局分からなかったんですよ。会ったことがあったり話をしたことがあったのかも知れないけど、その正体はまったく分からない。もっというと、竜二自身が言いたくなかったんでしょうね。それは知られたくないというよりも、あんな女と知り合いだということを知られたくないというそんな思いがあっただと思います。それを感じたので、我々もそんな女に関わらないように、少し竜二を見張っていた時期がありました」
「それでも、分からなかったと?」
「ええ、そうです」
「じゃあ、君は竜二を殺した犯人に心当たりはあるかい?」
 と訊かれて、
「いいえ、私にはありません。チンピラ連中身も分からないと思います。ひょっとすると竜二自身で、分からないような細工をしていたのかも知れないような気がするんです」
「じゃあ、竜二は殺されるということを予期していたとでも?」
「そこまではないと覆いますが、少なくとも組にその女の存在を知られるのを恐れていたようなんです。女に迷惑が掛かるからというようなそういうわけでもないようなんです。逆に組に迷惑が掛かるとでも思っていたような気がしますね」
 と兄貴分が言った。
 何が言いたいのか、それ以上はハッキリと分からないが、別れた女の行方と、竜二がひた隠しにしていた女が誰なのか、それを探る必要はあるようだった。
 最初は必死になって彼の行動パターンを探ってみたが、どこに竜二がいつも出没しているのかということは分かっても、時系列で並べてみると、意外と一日に数時間、誰も分からない時間帯がある、午前十時から一時頃までは、結構分からない時間が多かったりする。その時間帯というのは、彼らチンピラが一番時間を自由に使える時間であり、お互いを拘束しないのがルールだった。
 極端な話、十時にどこかに行っても、一時頃にちゃんと集合できれば、それでいいのだった。
 それ以外の時間は、どうしても組織の中ということで高速されているので、組織に訊かないとこの辺の情報は得られない。つまり、一般の人には彼らの行動を探るということは不可能に近いと言ってもいいだろう。
 そんな時、赤石からおかしな情報がもたらされた。
「あの時に殺されたチンピラ風の人、前に一度見かけたんですよ。あの人が殺されてすぐの時は思い出せなかったけど、今なら思い出せる気がする」
 と、今になって赤石が言い出したことで、遅いのは遅かったが、警察としては何ら情報が得られていないので、情報が得られるだけまだマシだった。
「どこで、どのように見かけたんですか?」
 と聞かれた赤石は、
作品名:ポイントとタイミング 作家名:森本晃次