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永遠のスパイラル

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「この間、私の親戚のおばあちゃんが、詐欺に遭いかけたらしいんだけど、その手口は変わっていて、自分たちは警察で、詐欺に気を付けるようにという話をしにきたようなのよ。その時は別に何も取っていくわけでもないし、ただ、チラシを置いていくらしいのね。そのチラシには、してはいけないことというのをしっかり書いているんだけど、それがまた詐欺の細かい手口に繋がるないようなのよ。で、それを防ぐために、ネットで指定したサイトに登録して、そこにログインさせる形なのね。ただ、ログインしただけでは登録にならないの。だから、電話でチラシに書いてある場所に連絡をするでしょう? そこで初めて相手が自分たちのやり口を説明するのよ。そして、まんまと騙すというわけ、ログインしたサイトには二度とアクセスできないようになっているし、電話番号も、一度繋がれば、二度と繋がらない仕掛けになっているの。実に手の込んだやり方でしょう?」
 というのだった。
「でも、引っかからなかったのよね?」
 というと、
「ええ、まさか相手も騙している相手の家族に警察がいるとは思っていないので、安心していたのかも。でも、詐欺を見破っても、そこから詐欺グループを特定することは無理だったのよ」
 と言った。
「それで私に相談というのは?」
 と生活安全課の婦警がいうと。
「何としてもその詐欺グループを壊滅させたいのよ。そうでもしないと、私は安心して生活できないっていう、おばあちゃんを見て居られなくてね」
 というのだ。
「うちの課でも、そのグループのことは把握しているのかしら?」
 と生活安全課の婦警がいうと、
「それはしてると思うわ。私のおばあちゃんが通報したもの」
 と言っていた。
 その話を訊いていたもう一人の女性が、
「私はこの間、高級ホテルのフロントの近くにある喫茶店で、気になる話を訊いたんだけど、それがね、最近の不況で、希望退社させられた女性が、何やら相談員みたいな人、そうね、興信所かそんな感じの人だったんだけど、相談しているのよ。その内容を訊いてみると、どうも言葉巧みに風俗店を紹介しているようなのね。それもスナックやキャバクラではなく、ソープのような売春に絡む商売の話だったのよ。相談員というよりもスカウトなのかも知れないと思ってね。でも女の子の方もお金に困っているということで、むやみに断れないし困っている様子だったんだけど、さらに追い打ちをかけるように、もっと稼げるというようなことを言いながら、耳打ちしていたのよね。女の子の方も一瞬驚いたけど、顔色をそれ以上変えることもなく頷いているだけ、風俗の話は普通に話せているのに、そこから先は耳打ちというのは、いかにもおかしいと思ってね。詐欺なのかどうか分からないけど、裕族営業法で何かに抵触するようなことがないかと思ってね」
 と言っていた。
「それは、詐欺の可能性はあるかの知れないわね。最初に風俗の話をして、そっちの印象を深く植え付けておいて、そこで感覚がマヒしているところに、別の話をする。少々胡散臭い話でも、風俗に比べればって思うのかも知れないわね」
 と言った。
「声を出せないとすれば、私が考えたのが、薬物か何かが絡んでいないかって思ったの。売春などの犯罪って、結構薬物が絡んだ犯罪が多いじゃない。それを思うと、ちょっと怖い気がしたんだけど、どうなのかしらね」
 というのだ。
 それにしても、最近の詐欺グループはなかなか手が込んでいるというものだ。聞こえてくる話は物騒で仕方がない。
「その二つの話のグループって、同じグループなのかしら?」
 と一人がいうと、もう一人が、
「違うような気がするわ。手口がまったく違うから。でも、何重にも張り巡らされたまるで年輪かバームクーヘンのような層を持っていることを思うと、まったく関係のないグループとは思えないわね」
 と言っていた。
 それを聞いていた桜井は思わず声を掛けた。
「何か、物騒なお話をしているようだね」
 というと、
「ええ、そうなのよ。刑事課の方では何か聞いていないかしら?」
 と言われて、
「そうだね、こっちには入ってないよ。生活安全課の方が一番詳しいんじゃないかな?」
 というと、
「確かにそうね。やっぱりああいう連中は、警察に感づかれるようなへまはしないんでしょうね」
 というので、
「あまり深入りはしない方がいいと思うよ。ああいう連中は、詐欺だけではなく、他の犯罪にも手を染めているかも知れないからね。例えば薬物に絡む部分であれば、生活安全課だけではうまくいかないよね? しかも。バックに反政府勢力のようなものがついている可能性があるだろう? そうなると、マルボーさんにも関わってくるので、下手をすると、一課にも関わってくるかも知れない。そうなると、大規模なバク滅運動になるからね。そうなると、個人の問題ではなくなるので、気を付けないといけない」
 と言って諭した。
 つまり、皆が協力して、一糸乱れぬ体制を取っておかなければ、相手も死に物狂いになってくると、どうしても、指揮が取れなくなってくるかも知れない。それを阻止するために、いかなる状況が起こっても、それに対応するだけの作戦であったり、意志の統一が図られていないと、犠牲はが出る可能性がある、そうなると、組織撲滅という主旨ではなくなってしまいかねない。下手をすると、
「弔い合戦」
 の様相を呈してくる。
 警察も組織も両方、メンツが一番大切なところがあるので、メンツを守るためには、何をするか分からない。しかも警察に被害者が出てしまうと、皆気持ちは、
「明日は我が身」
 である。
 それだけに復讐心は相当強く、
「あいつらの首を犠牲者の墓前に供える」
 というくらいの物騒な発想をする人だっているだろう。
 何しろ捜査一課や薬物対等、あるいはマルボーとなると、いつ命を落とすか分からないという恐怖が裏腹にあるので、万一の場合の覚悟はしているものだ。それだけに、実際に身内が殺されたとなれば、冷静でいられる人間がどれだけいるだろう。戦争中に普段は冷静沈着な部隊であっても、虐殺行為に及んでしまう連中がいるというのと同じ精神状態である。
 つまりは平静な状態ではいられないということである。
 それを思うと、桜井刑事は詐欺グループの卑劣なやり方。さらに緻密に計算されたやり方とを考えあわせると、歪に歪んだ芸術的な造形物に、どんなに強い風が吹いてもびくともしないような強靭で、柔和な雰囲気を感じさせる組織は、
「押しても引いても、身動きしない」
 というような相手にどのように立ち向かうかというのは、やはり集団での組織力を使うしかないような気がする。
 そこで問題になるのは、お互いの意思疎通と、団結力が必要で、指揮が歪んでしまったりすると、そこから綻びを生じることになるだろう。
 しかも、相手はそこを狙って攻撃してくる。大きな山もありの穴から崩れるというではないか。
 相手が空けようとするアリの穴を、
「それくらいの小さなものは問題ない」
 などと思っていると、とんでもないことになる。
作品名:永遠のスパイラル 作家名:森本晃次