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永遠のスパイラル

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 なるほど、そういうことであれば、喧嘩が激しくなって、警察に通報するほどになるのも分からなくもない。喧嘩の原因が何であったかは、この際、関係はない。どうして自体が大きくなったのかが問題だったのだ。
 そのことは先輩巡査も分かっていたようで、どちらかというと、二人はチンピラ擁護で話を勧めていた。
 すると、店員の方が、不服を言い出した。いわゆる、本音が見えてきたということである。
「警察は、あんなチンピラのいうことを聞いて、俺のいうことを訊かないのか?」
 とまで言い出したからである。
「あなたは、基本的に店のスタッフなのでしょう? 少々との客とのトラブルであれば、スタッフが責任を持ってその場を収めるというのが基本ではないですかね? そもそも客が何かを言い出すには、それなりに理由があると考えはしなかったんですか?」
 と、先輩巡査は言った。
 店員はぐうの音が出ないと言った感じだったが、それでも何かを言おうとすると、
「じゃあ、いいですよ、あなたが責任者として、被害届を出されるんですね? 暴行罪として」
 というと、急に店員は黙ってしまった。
 この界隈の飲食店は、業界で作っている協会が力を持っていて、基本的に、一方的に向こうが悪くかい限り、被害届は出さないようにするというのが基本であった。店員はそのことは知っていたようで、先輩巡査もそれは分かっていることだったので、そこを強くついたのである。
「いいんですか? 店長にも言わずに勝手に被害届を出して」
 と、さらに強くいうと、店員はあっさりと引き下がった。
 その時のチンピラの少年は、今では町の治安に協力するようになっていた。例えば駐車違反の取り締まりや、路上喫煙などの見回りを担っていたのだ。彼は地域における「民間警察」のパイオニアとして、活躍していた、
 あまり知られてはいないが、全国的にはそういう人は結構いると思われる。
 その時の先輩巡査は、今も交番勤務をしている。
「俺は刑事になろうとは思わない。あくまでも市民と寄り添う警官でありたいんだ」
 と言っていた、
 その言葉が印象的で、今でも警察官としての師匠としてその人のことをずっと思っているのだ。
 そんな中学時代から巡査時代を過ごしてきた河合刑事だったが、表には出ていないトラウマを実は持っているようだった。
 それを本人も意識していないようだったが、実は、交番勤務の時の先輩巡査には、それが分かっていたようだ。

             詐欺集団

 K警察署に二人の新たな刑事が加わったことで、少し活性化されたような気がしていた松田警部補だったが、二人が活躍する事件が、それからすぐに起ころうとは思ってもみなかった。
 最近は、殺人事件などの凶悪な事件はあまり起こっていなかったので、ある程度平和な時期を過ごしていた。年に何度かはこのような時期があるようで、桜井刑事などは、趣味に精を出す時間にしていた。
 桜井刑事はギターをやっていて、警察署内で、楽器が好きな有志を募って、時間があり、参加可能な時だけ参加でもいいという警察らしいサークルに所属していたのだが、
「やっと、最近、好きなギターができるようになったよ」
 と言って、普段の難しい顔をしない優しい顔を、まわりの皆が見つめてくれることをありがたいと思うのだった。
 そんな桜井刑事に、
「実は私も楽器をするんですが、よかったら参加させてくれませんか?」
 と言ってきたのは、福島刑事だった。
「ほう、何ができるんだい?」
 と訊くと、
「アルトサックスが吹けます」
 というではないか。
 さすがに警察のサークルの中に、サックスのような吹奏楽器ができるという人はいなかった。思わずビックリしてその顔を見つめた桜井だったが、福島刑事はその顔を、喜んでくれている顔だとすぐに分かったのだった。
 部長をしてくれている交通課の刑事に話をすると、
「それはありがたい。ピアノやギターはいても、吹奏楽はなかなかできる人がいないのでね。後はドラムがいれば、バンドができるかも知れないな」
 と言っていた。
 それを聞いた桜井は、実は少し複雑な気持ちだった。
 本当であれば、基本的にアコースティックが好きな桜井は、一人で弾くか、同じ楽器の重奏という形が嬉しかったのだが、どうやら、部長はいずれはバンドが組みたいと思っているようだった。
 ただ、それも無理もないことだった。一つのバンドを形成できれば、いろいろなジャンルの演奏が可能になる。部長は作曲や編曲も手掛けているので、どうせなら、ミニコンサートのようなものが開ければいいと思っているようだ。
 年に一度、警察署では一般市民との交流を目的に、警察署を一般公開して、大学の学園祭のようなことをしていた。
「バンドができれば、市のホールを借りて、ミニコンサートができるんだけどな」
 と部長が言っていたのを訊いたことがあったので、やはり部長はその思いをずっと持ち続けているのかと思ったのだ。
 しかし、考えてみると、それも悪くない。バンドとしての演奏の合間に、アコースティックな音楽をBGMにして、休憩時間を設けるというのも一つの手だ。実際にコンサートをやるとなると、それを進言してみようと、桜井は思っていたのだ。
 将来のことは別にして、アルトサックスを弾ける人が現れたことは、部員に対して大いなる啓発となることであろう。
 今のところ、皆自分の得意な楽器だけを集中的に練習しているが、今後は、彼によるけいはつぃのおかげで、
「別の楽器にも手を出してみようかな?」
 と考える人も増えるに違いない。
 桜井自身も、ギターはある程度の自信を持っていたが、実際にはキーボードにも興味があった。アコースティックなピアノの音色は、ギターのアコースティックな感覚とは違って聞こえることがあった。
「幻想的な音楽には、ピアノやエレクトーンが不可欠だ」
 と考えていた。
 ギターであれば、カントリーをイメージするが、幻想的な音楽となると、やはりピアノだった。バラードなどもピアノのみの伴奏が心を打つが、それは低音部分であり、それが高音になると、、次第に幻想的になってくる。ギターでは味わえない感覚であった。
 そんな時、サークルに所属している交通課の婦警さんが、生活安全課の婦警さんに相談しているのを訊いた。
作品名:永遠のスパイラル 作家名:森本晃次