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永遠のスパイラル

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 という信念があったからで、勉強をしていると、やっただけの成果は出るからだった。
 ただ、勉強が得意なやつで同じように勉強熱心だったやつが、急に勉強をしなくなったことがあった。最初はその理由が分からなかったのだが、自分にも一度同じような道があったことで、進む道を見失いかけたことがあったのだが、その時は逆に自分に自信を持てないことが幸いしているのであった。
 なぜなら、自分に自信がある人が見失いかけると、見えていたはずのものを探すことになる。しかし、自信のない人であれば、最初からなかったものだという意識から、探しているのには、案外と見つかるものなのかも知れないが、実際に自信がある人は、下手にどこにあるかを知っているだけに、その場所になければ、今度はどこを探していいのかが分からなくなってしまうだろう。それが逆転の発想に繋がるというものだ。
 しかも勉強が好きで、人と競争することい喜びを感じてくるようになると、必ず高みを求めるようになるんだろう。それが進学であったりすると、中学から高校に進学する時、自分の実力に似合う場所を選択して、受験をして合格すると、まるで自分の目的が達成されたかのような錯覚に陥るものではないだろうか。本当はこれがスタートラインなのに、そう思い込んでしまった時点で、すでにマイナスからのスタートなのに、入学して見ると、まわりは秀才ばかりである。中学時代は義務教育だったので、頭のいい人もいれば、そうでもない人もいる。しかし、入試を突破し、自分の実力に見合う学校に入ったのだから、自分を平均と見て当然ではないだろうか。
 中学時代は、成績はトップクラスだったのかも知れない。だが、高校に入学すると、自分の実力派変わっていないのに、今まで数えるほどしか自分よりも成績のいい人間はいなかったのに、今度は上を見ても下を見ても同じくらいのところにいるのだ。ちょっと油断していると、あっという間に奈落の底に落ちてしまう。
 河合少年は中学時代にそのことが分かっていた。今のようなレベルになる前、最初は中の上くらいだった成績が、いつの間にか奈落の底に落ちていた。自分が怠けたせいもあるが、まわりが頑張ったというのもあるだろう。そうなると、まわりの圧力を初めて嫌というほど感じることになる。
 河合少年にとって、屈辱だったはずである。他のことに自信がもてあい自分が、成績だけは自信を持っていたのに、落ち込んでしまったことを自分が怠けたことよりも、まわりが頑張ったことを知らなかったことの方が自分では怖かったのだ。
 自分が努力する分には、さほど気にすることはないが、見えないまわりがどのように自分に影響するかということが怖いからだった。
 その意識があったから、次回の試験では、以前の成績に戻り、順位の方も前のランクマで戻っていた。自分に自信は相変わらず持てなかったが、
「勉強は裏切らない」
 という意識は却って強くなったのだった。
 高校に入学して、まわりのレベルが同じくらいであることは中学時代の意識があったので、最初から分かっていた。しかし、入学できたことで、達成感に包まれてしまったことは間違いなかった。まわりも、
「合格おめでとう」
「よく頑張った」
 とねぎらってくれる。
 自分だけではないだろうという思いを持っていたことで、何とか落ちこぼれずに済んだと思っていたが、やはり、今まで殿レベルの違いを最初から理解していたことが大きかったというのは、後になって気付いたことであった。
 自分に自信が持てないという意識を持ちながらも、最初からの目標だった警察官になれたのは勉強が好きで、
「勉強は裏切らない」
 という意識を強く持ち続けられたことが一番だったと思うのだった。
 河合刑事はそんな思いを抱いたまま、警官になった。
 制服警官として、街の交番での警ら勤務が主ではあったが、仕事は結構楽しかった。
「刑事になりたい」
 という思いは、一度大学に入ってから、少し冷めてきたような気がしたが、警察官募集の公務員試験に合格して、研修期間に自分が思っていたよりも厳しい警察官としての倫理であったり、厳しい規律などで引き締まった気持ちになったからだ。
 河合は、自分に自信がない分、外的な力に対しては、真摯に受け入れるところがあった。
 その思いが、警察官になってから特に顕著で、学生時代のような甘い生活との違いから、自分に自信がないという意識w補ってあまりあるほどになっていた。
 中学時代から比べれば、自分でも成長したのだと思っているが、その分、まわりも成長している。その思いは高校に入学して、それまで自分がトップクラスだった成績が、中の上くらいに収まったことで、
「まるで自分の成績が落ちたようだ」
 という錯覚に陥ったことで味わっていた。
 あの時に、その思いをたぶん、他の人もそれぞれの感覚でしたのだろうが、その感覚の違いが、大人になって就職してから、顕著に表れるといものであろう。
 河合が、巡査になって最初の事件というのは、事件というには、それほどでもないのだろうが、通報で、
「街のチンピラと店の店員が喧嘩になっている」
 というものだった。
 まだ配属されてから数日だったので、先輩巡査と一緒の勤務だった。電話には河合巡査が出たのだが、通報者が混乱しているようなので、新人の河合巡査では話にならなかった。そこで先輩に変わってもらうと、どうやら、喧嘩が起こっているということで、二人はその場所に急行することになったのだ。
 さすがにナイフなどのような危険物を所持はしていないが、店の裏の狭い路地なので、空きビンなどが置かれている。怒りに任せて、相手を傷つける意志を持ってしまうと、瓶を割って、鋭利な部分を作ることで、大いに凶器になってしまうであろう。
 それを見た先輩巡査は、まず自分に耳打ちした。
「俺が説得してみるから、その間に、君は危険なものを別の場所に移してくれ」
 ということだった。
 やはり、先輩にもこの状況で何が一番危険なことなのかということが分かっているようである。
 その時の喧嘩は、大事に至らずに済んだ。両者とも説得に応じ、落ち着いてみると、それぞれ、悦の場所で、話を訊くことになった。
――なるほど、二人で来たのは、こういう場面も考えてのことだったんだ――
 と思ったが、さすがに巡査であっても、ベテランになると、状況暗団のすごさは、見習うべきものであった。
 河合刑事は、その時に話を訊いたのは、店員の方だった。
 客が印遠を吹っ掛けてきたので、自分も興奮したということだったが、
――この男、どうやら、完全に鎮火しているわけではないようだな――
 と感じた。
 なぜなら、話の中で、ところどころ後悔があったからだ、まるで、
――あのまま喧嘩を続けていれば、自分の方が勝てたのに――
 という意思が見え隠れしているからだった。
 喧嘩というものは、一度やる気をそがれれば、普通はそこで矛を収めるものなのだろうが、この店員を見ていると、どちらが原因だったのかというのが分かってきた気がした。
――この男、相手がチンピラだという意識で、最初から見下したよな態度でも取ったんじゃないか?
 という意識である。
作品名:永遠のスパイラル 作家名:森本晃次