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謎を呼ぶエレベーター

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「やっぱり、こういうお金のある男は、アイドルやモデルという女性との付き合いをトレンドのように考えているんだろうね。でも、今度は、嫉妬に狂うこともあるかも知れないというのを分かっているのか、すべてをアイドルやモデルばかりにはしなかったんだ。この男、たちが悪いことにロリコンでもあったので、高校生にも手を出したりしていたんだ、その頃には、ネットの世界では少々有名になっていて、ユーチューバーなどと言われて、調子に乗っていたりしたんだけど、やはり独占欲の強さからか、か弱い女子高生を監禁して脅迫したりしていたらしいんだけど、もちろん、警察沙汰にまでなるほどのものではなく、警察が介入できないほどの些細なことだったのだろうが、女の子にとっては、DVを受けているようなものだったらしいんだ。でも、ネットで有名なだけあって、素性は結構皆に知られていて、影では本名はおろか、自宅や会社も知られていて、過去の女性関係も丸裸にされていたんだ。こういうしょうもない男こそ目立つというもので、知らぬは本人ばかりだったというわけなんだけど、この女の子のことがバレてからは、さすがにネットでも黙っていていいものかということになり、ウワサを流す者、告発のような文章をネットに晒す者、そして女の子に接近して、その子から内容を聞いて、ネットで洗いざらいぶちまける者、それぞれいたんだ、そうなると、あることないこと、ウワサがウワサを呼んで、ネットは大炎上、ここまでくればさすがに父親も庇いきれなくなって、勘当したようだ。当然児童虐待でまた逮捕、今度は二度目なので、刑事罰もかなりのもので、今は刑務所に入っているようだけど、戻ってきてもいくところがないということなんだ」
 と秋月は言った。
「本当にひどいやつよね。でも何となくdかえど、それが誰だか分かった気がするわ」
 と綾子は言った。
「そんなに有名なのかな?」
 と秋月がいうと、
「うん、確か、元アイドルグループの彼女と結婚寸前という話だった人でしょう? 確か、お腹には赤ちゃんがいるとかなんとか聞いたことがあるわ。しかも、監禁脅迫事件が発覚したのは、そのできちゃった婚の発表寸前のことだったって聞いたわよ」
 と綾子は言った。
 秋月の方も、その、
「できちゃった婚」
 の話までは知らなかったけど、もしそれが事実だとすれば、もう救いようがないだろう。
「それにしても、大学生でようそこまでできたもんだって思うわね。もっとも、精神年齢は相当低かったんでしょうけどね」
 と、綾子はムカムカしている様子で話した。

            主治医関係

 さすがに今回の事件の犯人は酷いやつだとは思いたくないのだが、少なくともどんな理由があるにせよ、人を殺しているのだから、比較にはならないとしても、この男のことを思い出してしまうのが秋月だった。
 しかも、殺された人は、かつて自分も好きであった。今は兄貴の嫁になっている女性である。
 この二人はそれぞれに浮気相手がいたということで、ある意味救いようのない関係だったと言えなくもないが、女性側の家が由緒正しいという意味では、浮気や不倫をする感覚が、同じように異性別紙にあるのかも知れないと思う。
 子供の頃から、ある程度のものは親の力、いや、親の金の力で得ることができたのだろう。
 それを思うと、
――相手の気持ちを考えるなどということができるのだろうか?
 と感じる。
 相手の気持ちを分からない人だからこそ、相手が自分のことを分かってくれないことが分からない。同じ立場になった場合、相手の気持ちが分かるくせに、相手の気持ちになることで、自分が考えたくもない思いにいたらされるということを感じるからであろうか。考えたくもないことに関しては敏感になってしまうと、相手から、
「この人は何が分かって、何を分からないというのか、さっぱり分からない」
 と感じさせられてしまうのだろう。
 秋月は、自分の兄と自分とが同じような感じだったのではないかと感じていたのだ。
 では綾子はどうだろう? 自分にも似たような人が身近にいるのではないだろうか。それを思った時、最初に頭に浮かんできたのが、片桐澄子のことだった。
 綾子は、片桐澄子とは、小学生の頃からの幼馴染だった。綾子が今は大学を卒業してから、定職にもつかず、デリヘル嬢をしていたのは知っていた。澄子の方ではきっと、そんな綾子のことを軽蔑していただろうと思う。しかし、綾子の方も彼女が会社で不倫をしていることは知っていたが、まさかそれが、目の前にいる秋月の、かつての思い人であり、この間殺された女性の旦那だなどと、思いもしないだろう。
 もし知ったとすれば、
「世の中というのは、何て狭いんだろう」
 と思ったに違いない。
 そして、これはさすがに偶然に過ぎないと思おうとしても、簡単に思い切ることができないような気がした。
 綾子は、澄子とは、高校を卒業してから二年前までは、ほとんど連絡を取っていなかった。お互いに途中でメールアドレスも変えてしまい、綾子の方がアドレスを変更したことを通知しようとすると、宛先なしで返ってきたのだ。
 要するに、彼女はこちらに通知なしでアドレスを変えていたことになる。
 そんな彼女と、二年前、駅前でバッタリと出会った。何と相手から話しかけてきたのだった。
「てっきり嫌われていると思ったんだけどな」
 というと、彼女は、本心から悪びれている様子もなく、口では、
「悪い悪い」
 と言っているが、これが彼女の性格だったことを思い出した。
 基本的に人に気を遣うことをしない。気を遣わないというよりも気が付かないのだ。本人に悪気があるわけではない。だが、それだけに悪質だとも言えるだろう。
 子供の頃からそんなところがあった。気に入らなければ、友達であろうと置き去りにして帰ってしまうことがあった、
「私は別に気乗りもしないのに、どうしてもって誘うから」
 という理由で、電車に乗り遅れた時、急いで出向くわけでもなく、さっさと帰ってしまったほどだ。
 本人とすれば、
「嫌だって言ってる私を誘うからよ」
 と言いたいのだろうが、誘った方としても、まさかそこまで薄情なことをするとは思ってもいなかった。
 子供だからこそ、そんな残酷なこともできるのだろう。
 大人になってからでは、理性が邪魔をするというものなのだろうが、一度その精神が身についた人にとっては、大人になったからと言って性格を変えるのが逆に怖かったりする。
「どうせ皆、私の性格を薄情な人だと思っているんだから、その通りに思わせておかないと、お互いに接しにくくなる」
 というおかしな理屈を考えるようになる。
 澄子という女性もそういう女性だった。
 いつも自分一人でいることが多い癖に、寂しがり屋で、何とかまわりに馴染めるようになると、自分で自分が物足りなくなってくる。
 そうなると、たえず、
「仮想敵」
 を作っておかないと、自分が人とどのように接すればいいのかが分からないので、反発することで、自分の存在感を示そうとしている人間は、もう自分の形を他では作ることができなくなってしまうだろう。
「人とかかわりを持たないとダメだ」
 という意識はあった。
作品名:謎を呼ぶエレベーター 作家名:森本晃次