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悪魔のオンナ

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「ということは、この事件の本当の犯人は。松岡結子で、その共犯として、罪を着せようとした相手が保身のため、本意ではないまでも、彼女の思惑通りに動くことで、成立した犯罪なのかも知れないな」
 と、清水警部補がいうと、
「それを最初から彼女が計算していたことだとすれば、本当に悪魔のような女だと言えるんじゃないでしょうか? 本当ならそんな人であってほしくないとは思いますが、状況はすべて、そのことを暗示しているようで、私はそれの方が普通の頭で理解できることに思えるんです」
 と辰巳刑事がいうと、
「あの女を今、検挙しておかないと、今の辰巳刑事のような女であれば、これから、第二第三の事件が起こらないとも限らないね」
「普通なら、ゆっくり証拠を固めて堕としていくものなんだろうけど、あの女に限っては、変に小尾を固めてからなどという悠長なことをしているよりも、一気に片を付ける方がいいかも知れませんね。そういう意味で、例の裏風俗の団体を袁虚子、やつらの方から攻めていくというのも手ですよね」
「ただ、そうなると、裏風俗の奥を解明することはできないよ。もう少し泳がすのが本来なら作戦なのではないかな?」
 と清水警部補が言うと、
「確かにそうなんだけど、結局はトカゲ尻尾きり」になってしまうのであれば、死体遺棄も余罪として追いつめて。少し組織に警察の権威を示すというのも、一つの手かも知れない。やつらにとっても、あの女は、『悪魔の女』と言えるのではないだろうか?」
 と、さっきまでじっと黙って聞いていた門倉本部長が答えた。
「とにかく、まずは犯行現場の特定が先決ですよね。そしてそこからどれだけの証拠が出てくるかそれが問題なんじゃないでしょうか?」
 と辰巳刑事がいうと、
「でも、あの女はある程度自分の計画に自信を持っているような気がするんですよ。そうなると、証拠は意外と簡単に残しているんじゃないだろうか?」
 と清水警部補が言った。
「お美紀ちゃんはお店でお給仕をしているんだから、被害者の三橋のことはよく知っているんだよね?」
「ええ、知っています。女将さんもよく知っていると思いますよ。女将さんからは、あの席に座る人には気を付けるように言われていたので、あの席に座る人では、長谷川さん以外の人皆。怪しいとしか思えなくなったくらいです。あの人は、どこまで悪い人なのかと思って見ていたんですが、いつも目が座っていて、何かに焦っているかのように見えました。今から思えば、何か脅されていたんじゃないかと思いました。他の男性も似たり寄ったりで、ひょっとすると、人に脅迫されてあそこにいたんじゃないかと思うんです。だから、本当のワルなのかどうか、今ではよく分からなくなりました」
 とお美紀ちゃんは言った。
「お美紀ちゃんは優しいね」
 と、長谷川巡査が声をかけると、長谷川巡査にしがみつくようにしているお美紀ちゃんを見ると、本当に新鮮に感じられる。
 男を騙して裏風俗を営んでいる連中もいるかと思えば、長谷川巡査とお美紀ちゃんのような純愛もある。さらに、あの悪魔の女のように、同時に何人もの男性と不倫を繰り返し、さらにその目的が分からないような状態が、悪魔の悪魔たるゆえんなのではないdろうか?
「そういえば、あの悪魔の女が不倫を繰り返す理由は何かあるんだろうか?」
 辰巳刑事は呟いた。
「それに関しては、これと言った情報はなかったな。いろいろな説がたくさんありすぎて。分からなくなっているようなんだ。極端にいえば、知っている一人一人が全部違った解釈を持っている。曖昧ではあるが、ベールに包まれているという感じかな?」
 という話を山崎刑事から聞いた清水警部補は、露骨に嫌な顔をして。
「それがあの女の正体なんだ。故意なのか無意識なのか分からないが、まわりに本質を掴ませないそのテクニックは、あの女の本性なんだろうな。そういう意味で、あの女の本性はどれだけあるというんだろう? 無限にありそうな気がするな。もうこうなると、『卑怯なコウモリ』という程度の問題ではなくなっていると思うんだ」
 と、話していた。
 門倉本部長は、目をつぶって聞いていたが、びくともしないようだった。少しの間、存在を消しているかのようであったが、それを見ていたのは、清水警部補だった。
 こういう話になってきた時、まず清水警部補は、門倉本部長を気にしていた。
 何かを思いつめているように見えてしまうのは、それだけ彼の責任感から来るものに思えたのだ。
 どうしても奥に控えている見えない勢力。自分たちには何もできないというやるせない思いが、ジレンマとなり、門倉本部長を責めさいなんでいるようだ。
 その思いは清水警部補にも分かっている、今回の捜査が片付いても、事件の根本が解決するわけではない。
「まさか、裏風俗にあの女が絡んでいるということはないんだろうな?」
 と、辰巳刑事がボソッと呟いた。
 それを聞いてさすがに門倉本部長はビクッとしたが、すぐに動かなくなった。清水警部補としては、
――それは言ってはいけないことではないか――
 と思ったが、口に出すことはしなかった。
「でも、どうして長谷川巡査は、ここでの裏風俗の秘密を知ったんだい?」
 と訊かれて、
「お美紀ちゃんが暴行未遂を受けた時、最初僕は、女将さんから疑われていたようなんです、女将さんからすれば、お美紀ちゃんの将来を考えて、この事件を明るみにはしたくなかったんですね。だから、私が警察関係者ということで、どうしても、すぐに信じてくれなかった、でも、お美紀ちゃんに対して真剣に接しているうちに分かってくれるようになったんです。そうなってくると、早かったですね。僕に対しての信頼が高まってくると、清水さんには言えないようなことも僕に相談してくれるようになりました。それがありがたいところで、次第に、他の人に話せないことでも話してくれるようになり、あの秘密を知ったんです。でも、きっと僕だったら、警察の上層部に話してもいいと思ってくれたんでしょうね。でも、僕は話さなかった。店の常連だとそれが警察にバレたことで店がバラしたと分かると思ったからです。だから何も言いませんでした。そのうえで、密かに見張っていたというわけなんですよ」
 と、長谷川巡査は素直に答えた。
 予想通りの回答に、質問者である清水警部補は、物足りなさはありながら、想像通りというわけで、安心もしていた。
「ところで、殺された三橋が、鬱病でそのために健忘症のようだったというのは?」
 と清水警部補が、今度は山崎刑事に聞いた。
作品名:悪魔のオンナ 作家名:森本晃次