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静岡のとみちゃん
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軽便鉄道「駿遠線」復活物語

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 夏の日差しはまだ厳しいが、空はスッキリと晴れ上がった9月6日、「駿遠線復活式典」の日を迎えた。この日は、かつての駿遠線が全線開通した日だ。
 袋井駅の南口の駅前に準備された式典の演壇には、懐かしい駿遠線の写真が並んでいる。
 式典は来賓の挨拶から始まった。その中で、特に印象に残ったのは、やはり経産省の役人の挨拶で、自信に満ちた口ぶりで、軽便鉄道と地方の活性化について、まるで論文の一節のように語られた。ステアリングコミッティに彼が初めて参加した時の最初の挨拶との違いを知っている人は、国の関わりが次第に本気になっていったことを思い出していた。
 やがて市長や推進部門の各リーダーからの挨拶では、これまでの前例にない「市民ひとり2メートル運動」の想い出が語られ、それを聞いていた市民も、その時のことを思い出すように頷く姿が見られた。
 式典の司会者から、一番列車の出発時間が迫っていることが伝えられると、それ以降の挨拶は“ひとりひと言”の挨拶になってしまったが、心に響く“ひと言”が続いた。
 参列者の中には、旧駿遠線の全線開通の式典を知っている高齢者の姿もあり、「このような式典に再び参列できるのは夢のようで、これからの発展に、自ら貢献したい」との彼らの言葉が微笑ましく、新聞に載っていた。
 改めて、式典に参加している方々を見渡すと、袋井市民はもちろん、今日まで協力して頂いた多くの方々、更にはマスコミや映画関係者、かつて全国で軽便鉄道が走っていた地方の方々までも列席していた。
 この式典は、袋井市のこれまでで最大規模のイベントになった。

 時折吹く風に混じった石炭の匂いが鼻腔をくすぐる。
 駿遠線復活記念の「一番列車」は特別な車両構成で、5台の客車を牽引する3重連蒸気機関車は既に、軽便2番ホームに入線していた。
 式典に参加した全員が、多少込み合いながらも、南口の改札口を通って、軽便1番ホームに出た。
 テープカットは、3重連の機関車の前の線路上で行われる段取りだ。
 軽便1番ホームからは、記念列車の全体を見渡すことが出来るため、多くの人々が、そこに立ち並んだ。
 軽便1番ホームから階段を下りて線路を渡り、軽便2番ホームに上がる渡線路(構内踏切)を渡った人たちは、混雑しながらも、テープカットを間近に見る人と記念列車に乗り込む人に分かれ、人の移動がほぼなくなった頃、抽選で選ばれた市民の方々によるテープカットが行われた。
 3台の蒸気機関車の汽笛が順番に鳴り響くと同時に、地元の高校のブラスバンドの演奏が始まり、拍手の中、ゆっくりと、ゆっくりと、復活の一歩を刻んだ。半世紀ぶりの軽便だ。

 この式典やテープカット、ゆっくりと煙を吐きながら田園地帯を走る復活した軽便汽車の姿が、その日の全国版のTVのニュースで放映され、新聞にも掲載された。「蒸気機関車の軽便鉄道が公共交通機関になった日本では唯一の鉄道路線『駿遠線』」とのテロップが嬉しかった。
 実は、この報道の前、多くの人々がSNSで動画を配信し、それが拡散されていったが、駿遠線の歴史や復活に至る経緯までも紹介するTVや新聞の情報が、多くの人々に興味深く伝わり、軽便鉄道の復活を印象付けた。それと同時に、軽便鉄道に乗りたい衝動を植え付ける結果になった。