小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

血の繋がりのない義姉弟と義兄妹

INDEX|2ページ/28ページ|

次のページ前のページ
 

 ある意味、付き合うために理由が何か必要だというのも、どこかナンセンスな気もするし、そんなことを考えていると、
――やはり理由なんか必要ないんだ――
 という結論に達したのだ。
 だから、彼が
「お付き合いしてください」
 と告白してきた時も、ちょっと考えてみたが、考えれば考えるほど袋小路に入り込んでしまうような気がして、その時の最初に考えた思い、
――付き合ってみたい――
 と感じたことを、素直に言葉に出すと、彼は小躍りして喜んだ。
 由紀子は、無意識にその様子を見て笑顔になっていた。それを自分で感じることができたことで、
――これが私の欲しかった理由なのかも知れない――
 と感じた。
 この人が自分にとって一番一緒にいたいと思う人だと感じることができたのが、由紀子には嬉しかった。理由なんて最初から考えた自分をバカみたいだと思い、それがどこか引っ込み思案に見せる自分の特徴であるかのように見えた。
 ひょっとすると、彼が自分のことを好きになってくれたのは、そこなのかと思ったが、お互いに好き同士であれば、その気持ちを奥に封印してしまうのではないかと思った。だから後になって。
「彼のどこを好きになったのだろう?」
 ということを思い出そうとしても、すぐに思い出せない気がした。
 もっとも、すぐに思い出せないことはこれに限らず結構ある。思い出す必要がないからなのか、思い出すことで前に気持ちが戻ってしまうからなのか、どちらなのか、ハッキリと分かるわけではなかった。
 そのうちに、彼のどこが好きになったのかというよりも先に、気掛かりな部分に気が付くようになった。
 それは、
「幼く感じるところ」
 であった。
 年齢的に同じというのも、以前から抵抗があったような気がする。
「成長期には男性よりも女性の方が、精神的には成長する」
 と人から聞いたことがあって、そのことをずっと意識していた。
 男性というのは、肉体的な成長が早いように、女性から見れば見えるが、逆に男性は女性の方が早いと思い込んでいるようだ。その意識からか、それとも焦りからなのか、男性の方が性に対して露骨に思えている。
 彼にもそういう露骨な目を感じた。ただ、彼を弁護する形になって、話が矛盾しているようだが、その目は彼だけに限ったことではない。むしろ彼はまだ我慢ができている方に感じられた。
 しかし、同じ男性だと思うと、どうしても意識しないわけにはいかない。そう思っているうちに、彼の態度に何かしらのわざとらしさが現れているように思えたのだ。
 それはわざとらしさではなく、彼が気を遣ってくれているからであるということは、冷静に考えれば分かったはずなのに、わざとらしいと思えば思うほど、今度は、彼が幼く見えて仕方がなかった。
 同じ幼いという感覚でも、
「可愛い」
 というのとは、少し違っている。
 同じ年齢なのに、まるで相手が小学生のような感覚だ。わざとらしく思わせる感覚が、子供っぽいと思わせるのと、やはり、
「女性の方が成長が早い」
 という思いが強いからではないだろうか。
 彼との会話も、最初はそのぎこちなさに謙虚さとあどけなさが感じられたが、そのうちに幼さとわざとらしさに替わってくることで、自分だけが彼をおいて、成長してしまったかのような錯覚に陥った。
 彼のわざとらしさは、そんな由紀子に対しての抗議の意味があるのか、それとも、彼自身も感じている違和感をどうすればいいのか戸惑っているということからなのか、とにかくこんな関係は長くは続かないと思うようになった。
 そのくせ、自分からは何も言えない由紀子は、そんな自分に嫌悪を感じていた。それまでに何度も感じた自己嫌悪とは違っているのだった。
 結局彼から別れを切り出させてしまったことを後になって後悔したが、円満に別れるには、彼から言い出すことが一番だという思いに変わりはなかった。
 自分から言い出せば、話が修羅場になってしまいそうな気がしたからだ、
 きっと相手から、
「どうして別れなければならないのだ?」
 と言われるに違いない。
 そうなると、れっきとした別れの理由のない由紀子は、今度は自分がわざとらしい言い訳をしなければいけない立場に追い込まれ、そうなると、苛立ちが大きくなってしまうことを意識してしまうことだろう。
 相手も苛立っている。こちらも苛立っている。最初に苛立ちを与えたのはこっちなのだから、収束に導くにはこちらかでないといけないだろう。先に苛立ってしまった方は、自分から収めることは難しい。鉾の収めどころのカギを握っているのは相手になるのだ。
 だが、矛を収めさせるべき自分も苛立ってしまっては、説得力も何もない。お互いに売り言葉に買い言葉、矛を収めるどころか、収束の落としどころが見えなくなってしまうに違いない。
 そうなると、泥仕合である。相手をいかに鎮めるかなどできるはずもなく、いかに苛立たせないようにしなければいけないかということを考えた時、生まれてくる結論は、
「男性の方から、別れを切り出させるしかない」
 ということではないだろうか。
 そう感じると、すでに終わっている彼との関係を実質的に終わらせなければいけないことに矛盾を感じていたのだ。
 彼からの呼び出しに、ドキッとしないことはなかった。
 それまでは、いつも煮え切らない彼に痺れを切らす形で、最後には主導権を握るのは由紀子の方だった。
「女性が主導権を握っている方が、うまくいくことだってあるのよ」
 と言っている人がいて、その人は、そのおかげで彼とはうまく行っていた。
 だが、彼女が彼を従わせているわけではない。
「私だって彼のことを慕っているし、相手を頼もしいと思うことだってあるのよ。要するに持ちつ持たれつなのよね」
 と言っていた。
 しかし、由紀子には、その、
「持ちつ持たれつ」
 という言葉の意味がよく分かっていないのだった。
 由紀子は別れ話を彼にさせることで、初めて彼が自分のことを真剣に愛してくれていたことを知った。本当であれば、嫌われてもいいから、前言を撤回してほしいくらいだったが、今度は彼のプライドが許さないだろうと思うのだった。
 彼はそれでも思っていたよりも、理路整然と話をしてくれた。もっと、思いつめたような話し方になり、泣き落としなどを使ってくるのではないかと思ったが、そうでもなかった。
 どうやら、由紀子に話そうと決めた時には、腹が決まっていたのだろう。
 女性と男性の一番の違いについて、由紀子は、
「男性は何かを考えた時に、人に相談したりするが、女性の場合は、自分の気持ちがハッキリするまでは、まわりに、特に相手に悟られるようなことはしない」
 というものであった。
 つまり女性の場合、
「相手に別れ話などを始める時は、すでに決意が決まっているのであり、男性にとっては青天の霹靂であっても、その牙城を崩すことはすでに不可能なのである」
 ということであった。
 そのことを由紀子が理解したのは、彼と別れたその時であり、実は彼も同じようにこの理屈を理解していた。
 別れる段になって、初めて合うというのも、実に皮肉なものだと言えるのではないだろうか。
 由紀子がその時に感じたのは、