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間隔がありすぎる連鎖

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「防犯カメラを見せていただけますか?」
 と横山警部補はフロントマネージャーに訊ねた。
「はい、かしこまりました」
 と言って、スタッフルームに入り、まず二人のカードキーの履歴が調べられた。
 カードは、どちらか一人が代表で使っていると思っていたので、兄が最初に使ったのであれば、最後まで兄が代表で使うものだろうと思っていると、
「最初に、松川様のカードキーが使用されて、午後十時に帰ってきています。それから午前二時に、定岡様のかーぢが使われて、外出されていますね。履歴は今のところここまでになっています」
「じゃあ、さっそく防犯カメラをお願いします。特にこの時間を中心に見たいのですが、他は早送りをする形でお願いします」
 と言って、午後六時あたりからの防犯カメラの様子が見えていた。
 さすがに午後六時から九時くらいまでは、ホテルへの入室が盛んになっていて、怪しい人は見かけることはなかった。なるほど午後十時近くになって、二人が帰ってきていたが、カードキーを使用したのは、松川の方だった。その日の松川は帽子を目深にかぶっているのが特徴だった。大柄の松川はそれだけで特徴があり、さぞやその時間、まわりの注目を集めたのではないかと思えるくらいだった。
 新規の客は、フロントで受付をするのだが、連泊に客は、表のセンサーに翳すことで、部屋へ直通してもいいことになっている。それがこのホテルの特徴であるが、フロントは夜の十一時までであり、それ以上は表からの呼び鈴であるか、宿泊客であれば、カードキーを使うようになっている。
 午後二時に定岡が外出した時に写っているのは定岡だけだった。
 その時の定岡は、最初に帰ってきた時の松川のように、帽子をかぶり、あたりを気にするように表に出て行った。見るからに怪しそうな素振りだった。
 だが、それが定岡であることは確かであった。
 なぜなら、彼は防犯カメラの存在を知っているのか、顔を挙げて、防犯カメラと目を合わせたのだった。
 しかも、防犯カメラに向かって微笑んでいるのが分かった、ニッコリと微笑んで、二、三秒そのままだったのは、実に特徴的であった。
 そんな様子を見ていると、まるで自分の様子を後から誰かが見るのを分かって。嘲笑っているかのようにも見えた。その時、倉庫は火事になっていたのだが、支店長の話によれば、支店の幹部や社長が知っているだけで、一般社員や研修中の二人には何も知らせてはいないということだった。
 だとすれば、二人がこの時にすでに火事を知っていたとは思えない。むしろ、今でも火事があったという事実を知っているかどうかも怪しい気がする。
 知っているとすれば、この時の失踪に何か関わっていると思われても仕方がないに違いない。それを思うと、この時の防犯カメラへの視線は何を意味しているというのだろう?
 さらに、彼のその時の顔である。微笑みは余裕から来るものなのか、それによって、挑戦的な気持ちが働いているのかが分かるのだろうが、いかんせん、その時の恰好で、帽子をかぶっていることが、彼の本心を覆い隠しているようで仕方がなかった。
 その時間に、定岡が出かけていったのは確かなようだが、カードキーの履歴を調べてみると、松川の部屋は、今もロックされていないようだった。
 つまり、前の日の十時前に帰ってきて、施錠を解除して部屋の中に入ってから、そのままであった。
 防犯カメラを見る限り、松川が午後十時以降、どこかに出かけたという様子は写っていない。一体どういうことなのだろうか?
 定岡の不思議な笑顔といい、松川の行動の中途半端な状態といい、二人は何をしに昨日このホテルに帰ってきたというのだろう? 横山警部補は、そのあたりが気になるところであった。
 防犯カメラにはそれ以上何も映っていなかった。捜査陣は今までの二人のことをホテルの人に訊いてみたが、あまり特徴のある二人ではなかったということでよくは分からなかったようだが、二人の部屋の履歴を調べていた一人のボーイが、
「刑事さん、松川さんの方は、毎晩決まってルームサービスを注文されていたようですね。午後十時頃になると、夜食をご注文だったようですね。昨日は戻ってこられたのが遅かったので、ルームサービスのご所望はなかったようですが、それまでは毎日のようにサンドウィッチを注文されていたようです」
 という話であった。
「ああ、そうそう、私もそれは意識しておりました。以前、ここのレストランのシェフと話をした時、シェフが松川さんとお話したことがあったようで、サンドウィッチが好きで注文しているのは、何やら、母親以外の女性が作ってくれるサンドウィッチが好きなので、表ではいつも一度は注文されるそうなんです。私の味がよく似ているので、いつも楽しみにしていると言ってくれていたのが、印象的でした」
 と、フロントマネージャーが話してくれた。
 松川にとって、母親以外の人が作ってくれるサンドウィッチと言うと、それはきっと妾のことで、定岡の母親である弘子のことではないっだろうか。松川が、そんな風に感じていることを、定岡は知っているのだろうか。
 定岡は松川を兄貴のように慕っているが、松川も定岡を可愛がっていた。二人の関係はまわりにも周知のことであり、誰もが松川の力量と、定岡の妬みのない少年のような態度に敬意を表しているようだった。
 だが、それは何と言っても人それぞれ、人によっては、金持ちのボンボンである松川に嫉妬心を抱いている人もいたかも知れないが、下手に逆らって自分のためにならなかったり、うまく付け入って、漁夫の利を得ようと思っている人もいたのではないだろうか。
 そんなことを考えていると、松川と定岡の微妙な関係が、今回の行動に凝縮されているのではないかと思えて、何とも言えない気分になっていたのだった。
 横山警部補は、ホテルを出ると、今度は、倉庫の近所の聞き込みを行うことにした、
 元々近所の家の聞き込みは部下が行っていたので、まずは捜査本部に戻って、途中駅化を聞いてみることにした。
「いかがですか? 近所の聞き込みの方は」
 と言われた部下の捜査員たちは、一様に表情は芳しくなく、
「いけませんね。これと言った証言は出てきません。そもそもあの倉庫は昔の事務所だったようで、創業当時の本社だったということです。本社と言っても創業当時ですから、ただの修理工場という程度で、それでも、すぐに近くに二号店を作ったようです。そこは修理工場だけではなく、家電の販売も一部行っていたということだったんです。どうやら、初代の社長が、電機メーカーの人とコンタクトがあったようで、やってみたら、思ったよりも売れたということで、それが松川コーポレーションの柱となったのではないかという話でした」
「なるほど、それであそこを取り潰さない理由は?」
作品名:間隔がありすぎる連鎖 作家名:森本晃次