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間隔がありすぎる連鎖

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「完全犯罪を書く」
 ということかも知れない。
 しかし、実際の完全犯罪というのは、犯行が露呈なかったり、被害者が見つからないなどという根本的なものでなければ、結局はトリックを解明できないということであったり、法的に裁かれないということになってしまう。
 法的に裁かれないというのは、それこそ、前述の正当防衛であったり、緊急避難に値するのだろうが、これも倫理としては難しいところである。
 そういう意味で、やはり小説と現実の間にはれっきとした結界のようなものがあり、それが実際には見えないものであって、小説家は、
「それをいかにして埋めようか?」
 と考えるのではないだろうか。
 今回の犯罪を見ていると、
「まるで小説のようだな」
 と考える捜査員も多いようだった。

             誘拐事件

 黒焦げの死体が一体誰なのか? さらに、この火事がいかにして起こったのか?
 この二つを並行して捜査が行われた。
 まず、近所に聞き込みを行ったところで、一人の主婦が気になる目撃をしたようで、捜査員が気になっていた。
「その日は、いつも遅い主人が思ったよりも早く帰ってきたので、食事を済ませてから、九時すぎには、私はお風呂から上がることができたんです、うちお風呂場から、あの倉庫は結構近いんですよ。湯船から上がって何の気なしに表を見ると、空がオレンジ色に染まっていて、風でゆらゆら揺れているように見えるじゃないですか。すぐには火事だとは思わなかったんですが、明らかに火の色としか思えなかったので、私は風呂場から、主人に火事かも知れないと叫びました。すると、主人が急いで表に出ると、すでに倉庫の中は真っ赤に染まっていて、そのうちに、あの会社の課長さんが飛び出してきたんです。火事を通報しているようでした。課長さんが来たのは表の方からで、私が見える方向は裏側だったので、課長さんの様子は見えませんでしたが、男が一人、逃げ出していくのが見えました。足を引きづっているようで、けがをしたのかも知れないです。最初は放火魔かも知れないとも思ったんですが、その慌て方は、少し違うんじゃないかとも思ったんです。倉庫の中にいて、火が出たので、ビックリして逃げ出したという雰囲気でした。その男が逃げていくところを最後の方だけ主人も見たと言っています。だから私は幻を見たわけではないと思いました:
 と、その奥さんは話していた。
 その話を訊いて、捜査を行っている刑事は、
「中で発見された死体が二体、そして逃げ出した人が一人いたということは、少なくとも関わっている人が三人はいたということになりますね」
 というと、
「そういうことになるようですね。でも、奥さんが話していたのも、少しおかしな気がするんですよ」
「というと?」
「この倉庫は、中からカギがかかっていたんです。つまりは密室だったということなので、誰かが逃げ出したということであれば、それはこの中からではないということになりますね」
「カギがかかっていた? ということは、焼死した二人は、最初から中にいたということになりますね」
「そういうことになりそうだ。じゃあ、奥さんが見た逃げていく人というのは、どういう人なんだろう?」
 というと、もう一人の捜査員が先ほど、鑑識が持ってきたという検視報告書を見ながら、顔をしかめているようだ。
「どうも不思議なんですが、黒焦げになっている二人は、どちらも男性ということです。そして不思議なことは、二人の死亡推定時刻にかなりの開きがあるということのようなんです。一人の身体の大きな人は死後三日くらい経っているのではないかと思われ。もう一人の小柄な人は、火事の起こる少し前に死んでいるということなんですよ」
 というではないか。
「小柄な男が大柄な男を殺しておいて。誰かがその証拠を隠滅しようとしたのか、それともその小柄な男に罪を着せる形で、火を放ったのか、何か火を放ったのは、やはり死体の身元を分からなくするためか、死亡推定時刻をなるべく曖昧にしようという意図があったんでしょうかね?」
 という。
「もしそうだとすれば、三日前に殺されたかも知れないその男性を殺した犯人は、ここで焼死した男ではないかも知れないですね。なぜかというと、ここで火事になったことで、死亡推定時刻を曖昧にするのであれば、その人にアリバイは確固たるものがなかったということでしょうね。さっきの話のように、罪を着せられたと考えても、無理のないような気がしてきましたね」
 と、もう一人の捜査官が言った。
「そもそも、二人は他殺なんだろうね?」
 と、少し年を取った方の捜査員が聞くと、
「ええ、それは間違いないということです。身体の大きな方の人は、胸をナイフで刺されていて、そして小柄な方の人は、毒を盛られたようです」
「小柄な男は毒を飲んでいたということは、自殺かも知れないのではないのかい?」
 と訊いてみると、
「いいえ、それはありません、なぜなら焼け跡から発見された黒焦げ死体の身体には、鎖で縛られたあとがあるんです。縛られたうえで毒が効いてきて苦しんで死んだのか、それとも毒殺された後に鎖で縛られたのか、焼け落ちてしまった中では、何とも言えないというのが見解ですね」
 と若い捜査員は言った。
「じゃあ、三日前には死んでいたという男はどうなんだい? 何かに縛られていたということはないのかい?」
「いいえ、それはありませんでした」
「ということはいくつかの考え方ができそうだけど、まず考えられることとしては、二人が関係のある人間だったとすれば、まず最初に三日前に、ここに入ってすぐにナイフで殺された。そして、もう一人の小柄な男もここに一緒に入ってきて、三日間は生きていたけど、縛られていた。そのうえで、毒を盛られて、その後、プレハブに火をかけたということが考えられるね」
「じゃあ、横山警部補は二人が顔見知りだという考えなんですか?」
「普通に考えるとそういうことになるような気がする。これがもし知り合いでも何でもなければ、犯人が殺すのは誰でもよかったというような猟奇殺人ということになる。猟奇殺人を行うようなやつが、密室でしかも最後に火を掛けるような殺人を行うだろうか? 私はどうも、計画された連続殺人なんじゃないかって思うんだけど、どうなんだろう?」
「まったく逆の考えとして、これは奇抜な考えですが。二人はまったく知り合いではなかったとして、三日前に殺された人間が、偶然このプレハブの中に死体を格納しておいた。それを知らずに別の犯人が、小柄な男を殺して放置しようと思ったところに、もう一体死体があった。死体を動かそうとすると、隣の家の風呂場が赤々と電気がついている。死体を動かすところを見られたら終わりだと思ったとして、それだったら、自分が殺した相手もろとも焼失させてしまおうと考えたとすれば、ちょっと乱暴ですかね?」
「でも、身体を燃やしたとしても、骨までは燃え尽きることはないんだよ。骨が出てくれば、二人が焼死体で発見されたというのは、すぐに分かることではないのかな?」
作品名:間隔がありすぎる連鎖 作家名:森本晃次