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二人一役復讐奇譚

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 ちょうどその頃と言うと、レンタルレコードが出始めた頃で、茶策兼の問題などから、大きな訴訟問題に発展していたが、こちらも打開策により、お互いに譲歩し、著作権を地保証する形で、レンタルレコードの店が市民権を得たのである。
 その延長戦が、今のレンタルビデオ屋であり、今ではすでに古いものとなったが、それ以降平成を通して一つの業種として十分社会に君臨してきたのは間違いないだろう。
 ソープランドの歴史もそんな平成という時代を通して時代の流れに沿ってきた。
 元々、単独の店が多かったのだが、こちらも世相を表しているかのように、次第にグループ会社が多くなってきて、それに合わせて大衆店なるお店がどんどん流行ってきた。
 サラリーマンの一月のお小遣いなどでは、賄えるはずもない一回の入浴料、昔はそんな店しかなかったので、いけるとすれば、半年に一度の賞与が出てからというのが、昔は一般的だっただろう。しかし、大衆店が出てくるようになってから、サラリーマンでも、一月に一度くらいは行けるような手軽な金額になってきた。
 店としては、昔のような、
「嬢のテクニック」
 というよりも、アットホームな雰囲気を作り出すことで、誰でも気軽に来れるようなったのが一つの売りである。
 昔からのイメージを頭に描いているから、大衆店であっても。店で受付をする時はドキドキしたものがあり、それを楽しみに行く人もいるだろう。
 そして、女の子も明るくて、まるでスナックの常連と店の女の子と言った雰囲気がまかり通っているかのようである。
「久しぶりだね」
「また来てくれたの。嬉しいわ」
 という会話がニコニコしながら繰り広げられる。
 久しぶりと言っても一か月前にあっているのだから、それほど久しぶりというわけでもない。それなのに、久しぶりという言葉がまかり通っているのは、それだけ常連感がお互いに頭の中にあるからではないだろうか。
 サトシは、いつもいくお店は決めている。ソープ「アマンド」であった。
 贔屓の女の子はあやめ、一度写真指名をしたことで、実際の彼女と写真とにギャップが感じられ、そこが好きになる理由となったのだ。
 あやめとは結構気が合っていた。
 サトシは最初の頃、ソープの女の子というと、どうしても、借金を抱えている人が多く、その心根にあるものは、暗いイメージなのではないかと思い込んでいた。
 しかし、実際に相手をしてもらうと、彼女たちにそんな素振りは見受けられない。あやめを贔屓にする前には何人かの女の子に入ったことがあったが、共通したイメージは、自分がソープに来ているという感覚を与えられない違和感のなさが素敵だというものであった。
 中には、マニュアル通りのサービスしかしない女の子もいて、明らかに事務的な女の子もいるにはいると聞いているが、サトシの場合はそんな女の子に当たったことはない。
 やはり店の受付で写真を見て、そんな雰囲気を感じさせない女の子ばかりを選んでいるからであろうか、
「自分の見る目も、まんざらでもないな」
 と感じさせるものがあった。
 まだ、その頃のあやめは、入店してすぐくらいの頃だったので、
「最初から知っている女の子」
 というシチュエーションは、サトシを大いに喜ばせた。
 お気に入りになったのは、おそらく自分が最初だったに違いないと思ったのは、彼女の雰囲気が、どちらかというと明るいというよりも、人懐こさを感じさせるからだった。こういう店で求めている女の子は他の人であれば、どちらかというと、明るい女の子の方ではないかと勝手に思い込んでいたからであった。
 何と言ってもお金を払っているんだから、奉仕やサービスが一番だと思っている人が多いだろう、そういう意味ではあゆみはまだまだだった。
 ただ、人気は徐々に上がっていき、サービスやテクニックもしっかりできるようになると、他の女の子と比較してもそん色はなく、逆に、人懐っこさが、癒しに感じる人も増えてきて、人気は出てきたのだろう。彼女の場合のような人気の上がり方を、
「右肩上がり」
 というのだろう。
 たぶん、みゆきとあやめ、両方に入ったことのある人はまずいないだろう。
 これはあくまでもサトシの勝手な見解であるが、
「大衆店を中心に行っている人は、たまに高級店に行くことはあっても、高級店ばかり言っている人は、まず大衆店に行くことはないだろう」
 という発想であった。
 大衆店を中心に言っていて、たまに高級店に行くという感覚は、サトシと同じである。基本は大衆店を定期的にいくのだが、たまに高級店という変化球がほしくなる。その感覚を自分では、
「ソープが好きだから」
 と感じていた。
 大衆店では、女の子と一緒にいる時間が楽しみに行くもので、高級店には、昔からの雰囲気と、高級店なりのサービスを楽しみに行っているのだ。もう昔のいわゆる老舗と呼ばれているような店をあじわうことができるのは高級店しかないのである。
 高級店にソープの喜びを得ると、半年に一度などという本当にお金を貯めたり、ボーナスが入ってからという臨時収入があった時にのみ行く高級店が日頃の自分へのご褒美のような気持ちになり、たまに大衆店にでもなどという軽い浮ついたような気持ちになることはないのである。
 大衆店での女性への好みが、そのまま高級店での女性への好みに繋がるわけではない。
 どちらかというと大衆店にいるような女の子には、自分の好きなタイプをイメージして指名するだろう。なぜなら大衆店に求める女の子は、
「一緒にいて、楽しい女の子」
 である。
 しかし、高級店で求める相手は、
「普段であれば、高嶺の花と感じるような、自分に似合う似合わないは関係なく、グレードの高い女性」
 を求めるのであろう。
 この場合のグレードとは、見た目でテクニックがありそうな、その店で誰が見ても最高級の女性を求めるのだ。
 ただ、それがその店のナンバーワンかどうかというとその限りではなく、あくまでも自分にとっての最高級なのである。
 大衆店ばかりにいる人が求める最高級は、実際のナンバーワンとは違っていることが多い。だから、大衆店であゆみを選んでいる人が高級店に行くと、みゆきを選ぶことはなかった。二人には、写真で見ただけで、似たところをいくつも発見できるからであった。
 だから、サトシは、二人を共通で知っているのは、自分だけだと思っている。
 ある日、サトシはあゆみに、言ったことがあった。
「俺さ、たまにエレガンスにも行くんだよね」
 と言ってみた。
 もし、他の店のことを話題にして嫌であれば、何度も指名して気心知れた自分にであれば、きっと最初に嫌だというに違いないと思った。
 しかし、あやめは嫌だとはいわずに、
「エレガンスってあの高級店の? サトシさんは高級店なんか言って、浮気してるんだ。嫌な人」
 と言って、ニッコリ笑っているのか、それともはにかんでいるのか、少なくとも嫌がっている様子はなかった。
「いや、ごめんごめん。そこでね。一人の女性を指名したんだけど、それが何と、あやめちゃんに生き写しだと言ってもいいくらいの女性だったんだ」
 というと、
作品名:二人一役復讐奇譚 作家名:森本晃次