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十五年目の真実

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 つまりは、電車の写真や駅の写真を撮りまくる人であり、ただ、ひょっとすると、そんな彼は撮ってはいけない写真を撮ってしまい、撮られてはいけない立場の人間が、その外人がトリテツだと知らなければ、ひょっとすると、自分たちを狙っている、いわゆるパパラッチのようなものではないかと思ったかも知れない。
 写真に撮られてはいけない立場というと、パッと思い浮かぶのは、不倫カップル。これが一番可能性としては高いが、そこまでして奪わなければいけないものなのかと思い、少し現実味に欠ける気もするが、逆にどうしてもまずいとすれば、何かの犯罪をカメラに収めていた場合、誰かを尾行している場面であったり、もしかすると、何かの闇取引であったりである。
 そんな場合は相手を生かしておくのは危険であるが、果たしてそんな場面が、現状で存在するのかどうか、それが問題だ。
 殺すだけの理由は十分だが。シチュエーション自体に無理がある。それを考えると、どちらの意見も、
「一長一短」
 であり、
「帯に短し、たすきに長し」
 と言ったところであろうか。
 やはり気になるのは、この外人が下北に対し、襲い掛かり、下北自身が、生命の危機を感じるほどに、狂喜乱舞を演じたことが引っかかってくる。
「何に対してそこまでヒステリックになったのか? まだ日本に来て間がないということだったので、日本人の顔を認識できずに、誰かと間違えでもしたのだろうか?」
 いろいろと、頭の中で情報が混乱していた。
 情報が混乱している中で、いくつかの真実が隠されているのだろうが、どこまでが本当でどこからが間違っているのか、中学生の西村には分からなかった。
 西村は今刑事から聞いた話を、下北に話そうかどうしようか迷っていた。だが、結局話すことはしなかったのだが、結論として、その考えに間違いはなかったのだ。
 確かに下北が襲われて、苦し紛れに外人の頭を殴って、その場を逃げ出したというのは許されることではないと言えるのだろうが、この事件の中で下北が演じた役割は、本当にその部分でしかなかったのである。
 下北は、幸か不幸か、ちょうどその時、鬱状態から躁状態への切り替わりの時を迎えていて、すっかり事件のことを意識しないようになっていた。
 それがある意味よかったのだろう、彼の口から余計な話が漏れることはなかった。だが、そのせいもあってか、事件はどうもしっくりくることもなく、進展していないようだった。
 子供でただの第一発見者である西村に、警察が何も聞いてこなくなったのも、きっと捜査に行き詰ってしまったからだろう。
 西村としても、捜査に関してはほぼ知らない状態で、まるで他人事だということで、自分なりに勝手なストーリーを考えていた。
 あの場面で母親と先生がホテルから出てきたのをいいことに、西村は母親と先生があの男を殺したという想像をしてみた。
 動機は、
「不倫現場を写真に撮られたと思って争いになったから」
 というもので、
「じゃあ、犯人を絞め殺した凶器をどうして持っていたのか?」
 という疑問に対しては。
「先生は小心者で、母親とズルズルの不倫関係を続けていたが、いつか母親が苛立ってしまって自分の立場が二進も三進もいかなくなった時、その紐で母親を殺害し、自分も自殺しようとでも思っていた」
 ということは考えられないだろうか?
 ただ、先生は小心者なので、自殺までできたかどうか分からない。何とか、母親だけを殺して自分だけ助かろうとするのではないか?
 あの先生はそれくらいのことをしかねないと、西村は思っていた。
 実際に西村だけでなく、クラスのみんなは先生のことをロクな目で見ていなかった。子供の目だと言ってバカにできるものではない。純粋な目で見ると、誰が見ても先生はロクな人間ではなかった。
 外人は、下北に襲われて、トイレで苦しんでいたが、蘇生した。そして、頭の傷を応急的に直したうえで、ラブホテルの前で、
「獲物」
 を狙っているところに被害者がノコノコ現れた。
 しかし、意識が朦朧とし、平衡感覚もまともに取れない状態でカメラを向けていても、肝心の盗撮でなければいけないものが、公然と撮影してしまったことで、相手に首を絞められて、返り討ちに遭ってしまった。
 その場に死体を放置したのは、この男の頭に傷があったからで、それを殺害の時についた傷だということにすれば、犯行現場をゴマ化せるのではないかと思ったのだろう。
 そこで、この場に死体を遺棄した。
 そして、自分たちはそそくさと帰っていく。ちょうどその帰っていく場面を見つけてしまったというのは、これが最高の偶然だったのだろう。
 しかも、その死体の第一発見者が自分というのも、何ともいえない。西村はそこまで考えてくると、この考えが、
「いかに、自分中心で、都合のいい考えであろうか?」
 と思ったが、西村の立場と、下北の証言、そして母親の不倫現場を目撃したことを考えると、このあたりの推理が一番しっくりくるもののように思えてならなかった。
 何しろ、中学生のミステリーマニアが考えた内容である。なぜ警察が自分にいろいろヒントを与えてくれたのかは分からなかったが、あの話もだいぶ推理に役に立った。
 それにしても、一つのことが分かってくると、想像という形で、事実を考えずに理論だけで組み立ててれば、ここまで考えられるのだということを再認識した西村だった。
 だが、あくまでも想像の中だけのこと、創作でしかない。証拠という意味ではあまりにも薄い。そのため、根拠も薄っぺらく、信憑性などあったものではない。
 それでもある程度の核心はついているようだ。ただ、本人は八割くらいは当たっていると思ったが、実際には半分くらいだっただろうか。それは、残りの二割が難しさを秘めていたからであろうか。それとも残りの二割が、半分くらいの事実で覆させるようなものだったのか、ハッキリと分かるものではなかった。
 次章、急展開していくことになるのだが、これが急転直下と言えるかどうか、西村には分からなかった。

              急転直下

 事件は暗礁に乗り上げたかのように見えていたが、実際には、事件は急転直下に向かっていたということを誰も気づかなかった。下手をすれば、真犯人にも分かっていなかったのかも知れないが、警察側にとっては渡りに船であったことは間違いない。
 何ら情報を得ることもなく、事件は推移していた。何しろ被害者は外国からやってきて間がない人間だっただけに、動機などありえるはずがないというのが、その理屈だった。
 警察内部でも。
「被害者が何かを撮影し、その撮影写真を奪うため、殺害してデジカメという証拠物を奪った」
 という発想は思いつくのだが、肝心のデジカメもない。さらにこのあたりに防犯カメラもあるはずがない。目撃者の話しか聴けないが、目撃者と言っても、死んでいるところを発見した、しかも中学生の少年ではないか。
 その西村少年が、自分なりにいろいろな事件の概要を模索しているなど知る由もない警察側は、西村少年に、
「第一発見者として」
作品名:十五年目の真実 作家名:森本晃次