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十五年目の真実

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 いつものように先頭車両に乗り込もうと、ホームを歩いていると、途中から、トリテツと思しきトリテツを見つけた。彼は先頭車両のフロントフォルムを写真に収めようと三脚まで用意して、万全の体制を整えていた。だが、まだ電車が来るまでに少し時間がかかることが分かったのか、三脚からデジカメを外し、ホームの中央にやってきて、少し上を眺めていた。
 写真に収めるベストポジションを模索しているようだが、被写体はどうやら、駅名の表示板のようだ。
 この路線は、それぞれの駅にシンボルマークがついているという珍しい区間で、この駅の近くに、全国的にも有名で、霊験あらたかな神社があることでも知られた駅だった。
 その人は、ホームをデジカメに収めながら、駅名表示板の角度を模索している。自分が身体を低くしたり、高くしたりと工夫を凝らしている。その様子は、
「本当にただのトリテツなのか?」
 と思わせるほどだった。
※ここからは外人への悪口が書いてあります。
 その男は、よく見ると他のトリテツたちとは違うものを撮っているようだ。よく見ると初めて見る顔ではなかった。最近ではあったが、確かこの駅で見たのは間違いない。確か以前は、許可なく何かを撮ろうとして、駅の人に注意を受けていたような気がする。もっとも、そんな記憶でもなければ、トリテツのような人たちを覚えていることもないだろう。
 彼らは、そのままでいても十分に目立つので、意識して気配を消そうとしているふしがある。それだけに、意識が強すぎて、本当にいてもいなくても、まったく意識を持つことができなくなる相手もいたりする。
 そんなトリテツが、その日も駅で人と揉めていた。どんな内容で揉めていたのか分からないが、相手は一生懸命に何かを訴えていた。
 そのトリテツは、どうやら言葉が分からないようだった。よく見ると外人だったのだ。 
 あまり外人を好きになれない人には、相手が外人と思っただけで見るのも嫌であり、近くによってくると避けたくもなる。
「あいつら、風呂に入らねえから、香水がやたら臭くて、体臭と香水とで、余計に腹が立つ」
 と言っている人がいたが、まさにその通りだった。
 その外人も喋り方を聞いていると明らかに東南アジアのどこかの国で、名目は、
「留学生」
 などと言っているが、まともに言葉も喋れないくせに、日本に来るなってもので、最近はそんなやつらが目立つからやってられない。
 しかも、国はそんなやつらを雇った企業には補助金など出しやがるから、困ったものだ。
 ちょっと前までは、飲食店やコンビニなど深夜営業はそんな外人連中ばかりだったが、最近では昼間も外人ばかりの店もあったりする。そんな店には行きたくはないというものだ。
 外人どもは、変なところで怒り出す。それはもちろん、文化の違いというものなのだろうが、日本の文化になじめなかったり、知らなかったりする連中の、どこが「留学生」だというのか、ちゃんと勉強してから来やがれってものである。
 かつても日本人も、欧米人から似たような思いで見られていたのかも知れないが、かつての日本人と、今の外人どもとでは明らかに質が違う。中には日本に来てから、
「郷に入っては郷に従え」
 という言葉にあるように、日本人になり切るような人もいるだろう。
 しかし、実際には集団で来ていることでの集団意識があるのか、やつらはやりたい放題に感じられる。
 それでも、同じように東南アジアから来ていた連中も最初は謙虚だった。数十年前などはブラジルなどの南米系の外人が多かった時代は、彼らも集団であったが、ちゃんと日本語を勉強していて、自分たちの文化を大切にしながら、決して日本で我が物顔になるようなことはなかった。
 それが今ではどうだ。見ているだけでムカついてくる。
 それでも、ここ最近は、伝染病という事情から、国外との行き来が制限されたことで、変な外人が増えることはなくなった。それはそれでいいことなのではないかと思う。
 さて、話が横道に逸れたが、トリテツをやっているその外人は、
「どうしようもないやりたい放題の外人」
 のようだった。
 必死で何か文句を言っている。日本人は、そんなやつの言葉も分からないので、無視をしていた。そうやら、その日本人もトリテツのようだったが、トリテツ同士である異国人同士がどうして喧嘩。いや、外人の方が一方的に詰っているので、喧嘩とは言わないのだろうが、それw見かねたわけではないのだろうが、一人の男が吐き捨てるように、
「ガイジンのくせに」
 と一言言ったようだ。
 その言葉にその外人は反応した。どうやら、悪口を言われたその言葉は分かったようだ。
 それまで突っかかっていた相手を無視して、こっちに向かってくる。喧嘩などするつもりはないので、少し避けていたが、どうも逃げられないようだ。
 彼は駅を降りて、逃げて行った。次第に足早になるのを相手は追いつけそうで追いつかないくらいのスピードで追いかけてくる。
 彼は駅のコンコースにある多目的トイレに飛び込み、施錠したつもりであった。しかし、一瞬その外人が早く入ってきて、そのまま密室内に二人きりになってしまった。
――ますい――
 と思ったが、後の祭りだ。
 何をされるか分からない。何しろ相手は常識の通用しない外人なのだから。
 その外人が入ってくると、いきなり殴りかかってきた。慌てて逃げたその男は、トイレの中で悲鳴を挙げたがどうしようもない。仕方がなく取っ組み合いになり、頭を掴んで必死に外人の頭をトイレの配管に打ち付けた。相手は血を流しているようだったが、ここでやめると、どんな目に遭わされるか分からないと思った彼は、徹底的に頭を殴った。
 そして、そのまま昏睡させた状態で、彼はトイレから一目散で飛び出した。どこをそう走って逃げたのか覚えていないが、気が付けば、駅から数百メートル離れた公園のベンチで座っていた。
 一気に走ってきたので、呼吸が整わない。下を向いたまま息を吸ったり吐いたりしていたが、そのうちに自分がやってしまったことを後悔し始めた。だがその時はまだ何がどうなってこんなことになったのか、時系列で整理することができなかった。
 その時からどれほどの時間が経ったのかもはっきりとしない。時計を見ると、乗る予定だった時間の電車から、十分ちょっとしか経っていない。呼吸が整うにつれて、自分が何をしたのかがおぼろげに分かってきた。
――あいつ死んだりしていないよな――
 と思った。
 外人が一人死ぬことはどうでもいいことであったが、そんなやつを殺したということで罪に問われるなどたまったものではなかった。これほどこれほどこれほどの貧乏くじはないと思ったのだ。
 急いでさっきの多目的トイレに近づいてみると、そこは扉が閉まっていた。
「誰かが中に入っているんだ」
 ということは分かった。
 しかし、普通に使用しているのだとすれば、あの男は意識を取り戻して表に出ていったのだろうか?
 もし、そうであれば、殺人犯にならずに済んだというものだが、そうでなければ、ここが施錠されている理屈が分からない。
作品名:十五年目の真実 作家名:森本晃次