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未解決のわけ

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 写真に写っていた人は奥さんと並んでいたこともあったが、結構体格のいい、身長も高そうに見えた男性だった。顔の輪郭もしっかりしていて、スポーツマンタイプであり、なるほど、スポーツ大会運営の仕事に携わっているのも分かるというイメージの男性であるが、昨夜発見された死体は、男性としては小柄で、顔も小さく痩せていて、全体的に小さい感じの人間だった。そのイメージだけでも、二人がまったくの別人であることはハッキリとしていりのだった……。

              出入り口の疑惑

 鑑識から報告が入ったのは、その日の午後になってからのことだった。
 まずは司法解剖の結果であるが、やはり死因は薬物によるショック死、呼吸困難や痺れを伴うようなものだったろうということ、さらに時間は、死後十二時間くらいだろうということなので、午後九時から十時くらいの間ということになるのだろう。第一発見者の鮫島が通りかかった時間が十二時前だということもあって、大体の時間的な理屈は合っている感じだ。
 二時間以上も死後経過していれば、顔色の土色に変わっているだろうから、そのあたりもよく分かるはずであろう。
 そう考えると、あの時電気が明るくついていた理由も分からなくもない。一つは、あの時間、鮫島が通りかかるのが分かっていて、早めに死体を発見させるためにわざと目立つ湯オニしたのと、明るくしたうえで、さらに顔色が悪いとすれば、それは死後かなりの時間が経っているということも裏付けでもあるようだ。
 ただ、毒殺についてはどんな毒を使ったのかはまだハッキリとはしないが、呼吸困難に陥って、身体が痙攣していたことは分かっているので、そのあたりの症状が出る薬物を模索しているところであった。
 他に外傷はこれと言ってなかったが、以前に怪我をしたのか、足の骨にヒビが入っている部分があるようだった。
「これでは歩きにくいはず」
 という初見もあり、目撃者捜しに。足を引きづっていた男性を見たかどうかというだけでも手掛かりになりそうだ。
 そういう意味では、この報告は役になっていると言ってもいいだろう。
 司法解剖に関してもう一つは、胃の内容物の消化状態に対してでは、
「食事をしたのは、死ぬ前の、五時間くらい経っているはず」
 ということなので、遅い昼休みだったのか、早すぎる夕食だったのか。
 逆算すれば、四時から五時くらいということになる。それではまるで病院の食事のようではないか。
 だが、この発想が意外と早く被害者と特定できた。さっきの足の怪我というのと、食後五時間くらいのものだということから、病院というのも無視できなくなった。
 その前に報告の続きであるが、一つ興味深いことがあったのだが、死体がうつぶせになっていたところから少し離れた壁近くに、光るものが落ちていたという。それを見ると、少し小さめのブローチだったという。明らかにオンナ物で、そこに女性がいたという可能性も否定できなくなってしまった。
 それを見た清水刑事は、
「う―ん」
 と唸った。
「これはどういうことなんだろうか?」
 とさらに言った清水刑事はいった。
「確かにそうですね。そのブローチがいくらくらいのものだったのかは分かりませんが、ブローチのようなものを落としたら分かりそうなものだし、少なくとも探していようとは考えるはずですよね。そもそもどうしてブローチをつけるような人があの場所にいたのもおかしなことだし、落ちたのに気付かなかったわけではないのであれば、少しは探してみようと考えるはずです。それなのに、その場にブローチを置いたまま立ち去るということは、一つには被害者には、すぐにその場を立ち去らなければならない状況に追い込まれた場合ですね。例えば誰かに追われていて、その場所に逃げ込んだという考え方。もう一つは死体を見て、ビックリして我を忘れて立ち去ったという考えたか。さらに、その場で何者かに襲われて、争っているうちにブローチがちぎれるかなにかして、飛び散ってしまったので、とにかく逃げることが先決だったという考え方。そして最後には苦しんでいる被害者に遭遇してしまい、苦し紛れの被害者に捕まってしまい、必死に逃げたという場合、それぞれに可能性が考えられるんじゃないでしょうか?」
 と言った。
 辰巳刑事の考えはそれぞれに信憑性が感じられた。共通して言えることは、その場で何かに遭遇し、逃げるというシチュエーションである。ただ、追われて逃げてあの場所に入ったという以外は、あの場所でブローチが落ちているという事実には、かなり薄いものがある。
 だが、追われてあの場所に入ってしまったのであれば、誰かに襲われているわけだから、彼女自身、最後には交番に飛び込むか、どこかの家に助けを求めるかするはずであり、最終的には被害届を書くことになるだろう。
 そう思って、一人の刑事を、あの場所に関係した被害届が最近出ていたかどうか、確認してもらうことにした。してもらうことにした。してもらうことにした。
 どちらにしても、ブローチが落ちていたということは、この事件に関係あるなしに関わらず、重要な手がかりであることに違いはなかった。
二人はさっそく、昨夜の現場に再度行ってみることにした。そろそろ工事現場の人が来ているだろうから、何かが訊けるだろう。
 昨日は深夜遅かったので、ビルの管理会社に連絡を入れる時間がなかったこともあって、さぞや現場の連中はビックリしていることだろう。自分たちが掛けている立入禁止の札とは違った立入禁止のシールが貼ってあり、しかもそこには県警の名前が入っているのだから、さぞや現場の人はビックリして管理会社に連絡を取っていることだろう。
 そう思って現場に行くと、現場作業員は、いつもと変わらない様子で、奥で屯してタバコを吸っていた。
「失礼しますよ」
 と言って、辰巳刑事が入っていくと、
「何ですか。ここは立入禁止ですよ」
 と、高圧的な態度で入ってきた辰巳を刑事と知ってか知らずか、脅しかけているかのようだった。
「それはこっちのセリフなんだけどな」
 と言って、相手を下から睨みを聞かせると、
「あっ、これは警察の旦那で?」
 と、急にね猫撫で声になっていやがる。
「そうだが、お前たちこそ、県警のしるしが見えなかったのか?」
 と現場の作業員も、
「何かあったんですか? あれじゃあ、まるで殺人現場の立入禁止みたいじゃないですか」
 と一人がいうと。
「そうだそうだ。こっちは仕事できないじゃないか」
 ともう一人が急き立てた。
「まだ分かっていないようだな。今お前がちゃんと言ったじゃないか」
 というと。
「へえ? まさか本当にここで殺人事件があったんですか?」
「ああ、そうだ」
 という問答の間に、詰め所になっているプレハブから一人の男性が降りてきて、
「ああ、刑事さんですか、ご苦労様です。今管理会社に連絡を取ったら、昨夜ここで殺人事件があったとかで、ここを立入禁止にしたとか伺いましたが、本当にそうなんですか?」
 と聞いてきた。
作品名:未解決のわけ 作家名:森本晃次