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未解決のわけ

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「それは少し考えすぎではないかと思うね」
 と静かに清水刑事は答えた。
「その理由は?」
「それはこうだ。確かに君の言うとおりに被害者が他でカプセルのようなものを飲まされてしばらくして死んだのだとすれば、犯人の目的はなんだろ思う?」
 と訊かれて、
「アリバイ工作ですか? 被害者が死んだところに犯人がその時間いることができないという一種のアリバイ工作ですよね。それだと考えれば、被害者が絶命する場所はどこでもよかった。死んでしまう時間に、自分は誰かと一緒にいたなどというアリバイが成立すれば、それでいいわけだからですね」
 と答えた。
「うん、その考えは私も賛成なんだが、そうなってくると、じゃあ、この部屋の電気をつけたのは誰かということになる。犯人がアリバイ工作をするために他の場所で毒を盛ったのだとすれば、この場所にはいないことになる。とすれば、被害者は何らかの目的があってここに来たのではないかと思われるんだ。誰かと待ち合わせがあったか、それとも誰かを待とうと潜んでいたか。相手が来る前に電気は消すつもりだったが、電気を消す前に毒牙回り始めたと考えるのもありではないかな? とにかく被害者が何者なのかが分かってみないと、何とも言えないだろうね」
 と清水刑事は言った。
「被害者を特定できるものを持っていないんですか?」
 と辰巳刑事がいうと、
「そうなんだ。財布はあったけど、他に所持品はないんだ。定期券も健康保険所も所持していない。財布の中に名刺は幾種類もあったが、自分の名刺はなさそうなんだ」
「そうなんですね。じゃあ、彼は一体誰なんでしょうね? サラリーマン風の姿には見えないが」
「分かっているのは、三十代くらいの男性で、体格とすてはそんなに大きくはない。一応警察の霊威暗室に運んでいるので、明日司法解剖に回されることになる。その時に何かがハッキリとしてくるだろうね」
 と言った清水刑事に対し、時計を見た辰巳刑事は、
「もう、今日で宇sけどね」
 と言い返した。
 なるほど、もう二時近くになっていた。自分たちだって寝ているところを起こされた口ではないかっただろうか、清水刑事は少し脱力感を感じていた。
「とりあえず、今日はどうする?」
「さすがにこのまま帰ってまた出勤してくるのはきついので、警察の当直室でひと眠りしますよ」
 と辰巳刑事がいうと、
「よし、じゃあ、俺もそうしよう」
 と二人で当直室で休むことにした。
 当直室は二人にとって久しぶりだった。前はよく泊まり込んでの捜査もあったは、最近は犯罪も落ち着いてきたのと、何よりも二人が少し年を取ってきたことの証拠ではないだろうか。
 辰巳刑事は三十号半、清水刑事もそろそろ四十歳後半になるところだ。後少しで清水刑事も警部補になるだろうと思っている辰巳刑事だったが、さすがに最近の清水刑事は老け方が顕著に感じられるようになっていた。
 今朝の捜査は何から始めます?」
 と辰巳刑事にいうと、
「そうだな、まずは工事現場の連中に話を訊くこと。そして現場の聞き込みだな」
 という清水刑事に対して、
「なるほどそうですね。タバコの吸い殻にしても、殺害現場の明かりについては最低聞かないといけませんよね。まずは、どうして彼があの場所に行っていたのかというのが分かるためにも、被害者が誰なのかを特定する必要があります。そうでなければ、想像する男系でもないということになりますからね」
 と辰巳刑事は言った。
 二人が警察署に着いてから、当直の刑事に、挨拶をして当直室に入り込んだのが、二時半になっていた。
 二人は一度寝込みを叩き起こされた感覚があるので、現場についてから今までがあっという間だったような錯覚があったが、実際には、かなりの時間が経過していた。
 頭の回転は警察署についた時点で、すでにストップしていて、今からさらに考えると今度は眠れなくなりそうなので、生理現象に任せ、睡魔という欲求を満たすことに専念したのだ。
 二人はすぐに就寝に、気が付いたら、すでに八時になっていた。警察署内ではすでに慌ただしく動いていて、扉の外を早歩きでいったりきたりしているのが分かった。
 普段の事件がない時の警察とは明らかに違う、早い段階で捜査本部もできるだろう。辰巳も清水も、他殺に違いないと思っているが、自殺の可能性もまったくないわけではない。これおw、
「殺人事件」
 として戒名に記すだろうか?
 それが疑問だった。
 刑事課に戻ってみると、
「おはようございます。昨夜は大変でしたね」
 と他の刑事からねぎらいの声を掛けられたが、まだ半分ボーっとしている二人を見ると、明らかに寝起きの状態が分かったことで、当直室に泊ったことは、昨夜の当直者から聞いていなかったとしても、一目瞭然だっただろう。
「捜査本部が、もうすぐできるみたいです」
 と言われて。
「戒名っはどうするんだい? 殺人事件で行くのかな?」
 と聞くと、
「そのようですね、どうやら、毒殺事件ということで出来上がりそうですよ」
 という話を訊いて、
「自殺の可能性はほぼないということでいいのかな?」
「そうだと思います。今朝から始まる司法解剖を見ないと何とも言えないでしょうが、今のところは殺人としての可能性は濃厚だということですね」
 それを聞いて、二人は一応納得した。
 捜査本部はまもなく立ち上がり、解剖も始まったが、被害者が誰なのか、そのあたりの方がまず最初に分かりそうな気配があった。警察署に朝一番で訪ねてきた人がいて、被害者というのが、自分たちの知っている人ではないかという訴えで、警察署を訪れたというのだ。
 どこから情報が見れたのか、真夜中のことだったので、新聞に載っているわけでもないし、当然警察も発表していないのだから、誰も分かるはずもないはずなのに、一体どういうことなのだろうか?
 ただ、警察を訪れた人の話というのが、どうやら、少し事情が違っているようだった。
「自分の知り合いに行方が分からない人がいて、ひょっとして殺されるかも知れないので、早急に探してほしいと願い出てきたようです」
 という話だった。
「殺されるかも知れないというのは、穏やかではないね。実際にこうやって昨夜身元不明の死体が発見されたのだから、放っておくわけにはいかない。話の辻褄がどれほどあっているかというのは、少なくとも確かめなければいけないだろうね」
 という清水刑事の話だった。
 訴え出てきた人は刑事課に通された。一人ではなく二人だったが、一人は奥さんらしき人と、一人はその父親であろうか、義父であろうか、還暦を迎えたくらいの人が神妙に控えていた。
 名前は、加倉井静子というらしい、旦那の名前は加倉井保というそうだ。
「何か、早急に人を探してほしいということですが、その人が殺されるかも知れないとお話されたそうですね?」
「ええ、そうなんです。私どもは探してほしい人の妻と、彼の父親なのですが、彼が変な書置きを残して、家を出たんです。それがこれになります」
 と言って、まだ、三十歳前半くらいの女性がメモのようなものを取り出して、提示したのだ。
 そこには、
作品名:未解決のわけ 作家名:森本晃次