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未解決のわけ

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「なるほど、このあたりにはそういう曰くがあるわけですね」
 という辰巳に対し、
「ええ、でもそんなところはここだけではないでしょう。全国にはいたるところにありそうですけどね」
 と鮫島がため息交じりにいうと、辰巳も溜息を吐いて、鮫島を見た。辰巳は何かを感じているのかも知れない。
「今日はこれくらいで結構です。すみませんね、夜遅くまでお付き合いいただいて、今日はゆっくりお休みください」
 と労をねぎらうように辰巳は言ったが、それはもう皮肉でしかなかった。
 何しろ時間としては、すでに夜中の一時を回っている。どうかすれば、すぐに、
「草木も眠る丑三つ時」
 なのであった。
 鮫島の連絡先だけは聞いておいて、彼を見送った辰巳刑事は、清水刑事が行っている現場に向かった。
「お疲れ様です。真夜中からご苦労さまです」
 と声をかけた。
「何、本当にそうだよ。出物腫れ物ところかまわずと言われるが、犯罪者も節操がないということなのかな?」
 と言って清水刑事は苦笑いをしている。
 すると、一人の刑事が清水刑事に声をかけた。
「清水刑事」
 それを聞いた清水刑事は振り返って、
「なんだ」
 と聞くと、
「ここに乱れた足跡があります。どうやら争った跡のようなんですが。不思議なことに、被害者の靴跡とは一致しないんですよ。一つは結構大きな靴跡で、二十七くらいじゃないかと思うんですが、もう一つは結構小さい足跡ですね。まるで女性の足跡を思わせるもので、二十三くらいではないかと思います」
 と刑事が報告した。

            足跡から見えるもの

「いったいどういうことなんだ?」
「よく分かりませんが、被害者と関係のないことなのかも知れませんが、ここには、そういう痕が所々に残っているんです。向こうには目立ちませんが、まわりは誇りが、積雪のように積もっているのに、ある一つの大きな円のあたりは、ジグザグに見える感じがするんです。きっと、真上から見れば、形にならない図形を形成しているのではないかと思えるようなですね」
 その場所はまだほとんど工事が進んでいない中で、珍しくコンクリートで固められた床が出来上がっていたのだ。
「ますます分からない」
「つまり、いつかは分からないけど、ここで揉みあいのようなことがあったのは間違いないでしょうね。しかも、それが同じ時期ではないと思えるところが、この場所の不気味なところなんです」
 と一人の刑事はいった。
「じゃあ、明日は、この工事現場の昼間の様子と、夜の管理について聞いてみようじゃないか」
 と言って、その日は、遅いのでそのまま現場保存を鑑識と警官に任せてから、一旦署に戻った。
 その途中で、辰巳刑事は清水刑事と話をしていた。
「さっきの第一発見者の鮫島という男なんですがね」
 と辰巳刑事が言った。
「あの男、本当にここを通ったのは、偶然だったんでしょうかね?」
「どういうことだ?」
「いくら残業が続いているからと言って、こんな不気味なところを一人で歩けるような度胸のあるやつには見えなかったんですけどね。何かここを歩く理由が彼にはあったのではないかと思うんです」
「何だというんだ?」
「よく分からないんですが、ただ、気になるのは、あの場所が何かのたまり場になっているのではないかと思えるところです。ただ、昼間工事の連中合きて、いろいろ運び込んだり歩いたりすれば足跡も残るんだろうけどね。その足跡がないんですよ。揉みあっているような足跡は残っているのに、どういうことなんでしょうね?」
「意外と工事が進んでいないんじゃないか? 更地にするまでは結構早かったけど、それから先が進まないなんて、マンションの建築現場にはよくあることではないのかな?」
 と清水刑事がいうと、
「そうなのかな?」
 とまだ、納得がいかない辰巳刑事であった。
「清水刑事、これを見てください」
 と言って、一人の鑑識管が連れて行ってくれたのは、一つの仕切られた場所の奥にあるまたコンクリートで固められていない足場がドロドロのところだった。
 そこには、数十本の吸い殻が、放置してあった。きっとここで、屯していた連中が吸って、そのまま放置していたのだろう。
「こんなの普通、いくら作業員がだらしない連中が揃っていたとしてもありえませんよね?」
 と鑑識管が訊いてきた。
「そうだな。いくらだらしがないと言っても、吸い殻入れくらいは用意してタバコを吸うよな。これだと最初から放置するつもりで吸い始めて、そのまま放置しているだけじゃないか。こんなのを監督などに見つかったら、作業員はクビ問題になるだろうかなら」
 と、清水刑事は言った。
「ところで辰巳君、君は何かこの事件で気になることがあるかね?」
 と訊かれて、
「そうですね。先ほど第一発見者の男の話を訊きましたは、情報として新たなことは出てきませんでした。被害者とは面識もないようです。彼がここに立ち入ったのは、会社の残業で毎日のように遅くなるので、最近はこの近道をよく使っていると言っていました。何でも、帰り着くまでに十分以上違ってくるらしいからですね」
 と、他S罪刑事は話した。
「そうか」
 と清水刑事が一言いったが、今度は辰巳刑事のような質問した。
「ところで、今回の死因は毒に夜中毒死のようなものですか?」
「ああ、そのようだな。それがどういたんだい?」
 と聞いてくるので、清水刑事は気にならないのかと辰巳刑事は感じていた。
「毒殺だったとしても、自殺だったとしても、どうしてこんなに寂しい場所で一人で息絶えたんでしょうかね? 遺書などないようなので、自殺というのもおかしな気がするんですが、毒殺だったりすれば、普通なら食べ物か飲み物に毒を仕込んでおくことが普通でしょうから、ここで何かを飲食したとは思えないんですよ。その証拠にまわりに食べたり飲んだりした跡が残っていない。誰かが一緒にいて食べさせたものを片づけたのでしょうか? それも何かおかしな気がするんです」
 と辰巳刑事はいった。
「なるほど、確かに遺書のようなものもないし、彼の所持品から、薬のようなものも発見されなかったな」
 と清水刑事は言った。
「それともう一つ気になるのが、この場所の電気が赤々とついていたということです。第一発見者の鮫島という男の証言では、普段はこの場所は暗いのに、今日は明るかったので近寄ってみると、死体を発見したということでした。どうして今日だけ明るかったんでしょう? 被害者が自分で明かりをつけたということでしょうか? もし、そうであれば、被害者はここにしばらくいたことになる。誰かとここに一緒にいて、ここで毒を盛られたのでしょうか?」
 と辰巳刑事がいうと、
「そうだね。そう考えるのが自然だね」
「でも、実際には被害者が別の場所で毒を前もって服用していたとすればどうですか?」
 という辰巳刑事に、
「というのはどういうだい?」
 と清水刑事が聞き返した。
「実は、別の場所で毒を飲まされたのだが、その読破カプセル化何かに入っていて、すぐには効かない。飲んでから一時間以上してカプセルが解けて、毒が全身に回るとすれば、どうでしょう?」
 という辰巳刑事の話に対して。
作品名:未解決のわけ 作家名:森本晃次