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誹謗中傷の真意

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「確か、お金で繋がる相手がいたとして、お金をくれる相手から奴隷扱いされるような関係をどう思うかって聞いてきた子がいたんです。中学生にもなるとそんな質問をしてくるものなのかって思ったんですよ。結構中学生でゲームのようなことをしていれば、現実とファンタジー-の世界を混同して考える人もいるのではないかと思ったからなんですが、それにしてもおかしいですよね」
「うん、確かにおかしいね。でもそれって何か殺された倉敷さんが誹謗中傷を受けていた内容と被っていないかい?」
「ええ、だから、気のせいかも知れないと思ったんですが、今から思えば、ただの偶然には思えないところがあってですね。その少年が気になっていたんですよ」
 と辰巳がいうと、
「それって、ここの信者の子供じゃないかな? 僕も一度似たような質問をここで受けたことがありますね」
 と桜井は言った。
「その時、何て答えました?」
「詳しくは覚えていませんけぢ、即答はむつかしかったですね、でも、奴隷関係というのはお互いが了承しているのであればいいんですが、そうでなければ、昔のように奴隷制度として確立されていないわけだから、下手に分からない人が主従関係などを結ぶと、ロクなことにはならないと思ったんですよ。素人がプロの真似事をしたって、でくるわけがないじゃないですか。しかも主従関係ともなると、命に関わる場合もある。だから、素人のやる奴隷関係には、私は疑問しかないんですよ。しかも相手は中学生じゃないですか。どう考えても素人ですよ。だったら、止めるのが当然ではないかと思いました」
 と、桜井が答えると、
「じゃあ、反対されたわけですか?」
「ええ、やんわりとそれはいけないと言いました」
「すると少年はどうしました?」
「すぐに新見君の元にいって、話をしていました。新見さんは二言三言何かを話していたようなんですが、少年はそれを聞きながら、ずっと頷いていたようです。どうやら、新見君の話に対しては素直に聞いているようなんです」
 と桜井は言った。
「少年は素直にうなずいたというわけですね?」
「ええ、そうです」
 というと、清水刑事は、唸っているようだったが、それを見た辰巳刑事が、
「何か納得のいかないところがありましたか?」
 というので、
「いや、今の話を聞いて、少年がすぐに新見さんのところに行って、すぐに話を聞いたということ、そして、そのすべてを新見さんが言ったということ、そして、逆らいもせずに新見さんの話を少年が素直に聞いていたということが気になってね。桜井さんには質問をしたわけだろう? 今の話を聞いているうえでは、新見さんが桜井さんに聞いてくるように少年を促したように思えてならないですよね。ということは、あの質問は新居さんが言わせたということになる。もっとも、これは、今までの状況で、新見さんというのが殺された倉敷さんと同一人物ではないかという想像の元だからですね。つまりは、前提があって話を聞いたところ、話を組み合わせれば辻褄が合う話に行き着いたということになるのかも知れませんね」
 と清水刑事は言った、
「そうですね、その少年がどうしてそこで桜井さんにその質問をしたのかは分かりませんが、少年はただ新見さんに言われてただ質問しただけだったんでしょうか? それを考えると、想像がつかないんですよね」
 と今度は辰巳刑事が言った。
「一度その少年に、話を聞いてみたい気がしますね。その少年はどうしていますか?」
 と清水刑事が桜井に聞くと、
「ハッキリとは分かりません。ただ、最近来ていないというのは確かですね」
 と桜井は言った。
「ところでですね。この教団の名前なんですが、やはりノアの箱舟から来ているんですか?」
 と辰巳刑事が聞いた。
「そうだと思います。ただ、それは聖書のお話が根拠になっているわけではないような気がするんですよ。聖書の話を考えると、種族を滅ぼして、浄化するかのような発想ではないですか。さすがにそんな大それたことは考えていないはずなんですよ」
「じゃあ、何なんでしょうね?」
「たぶんですが、種族がそれぞれ種族ごとに自由に生きるためのことではないかと思うんです。あの話は神が世の中を浄化したというお話ですが、逆に神という戦地全能の存在に人類という小さな存在が滅ぼされたということですよね。まるでアリのような存在が人類というわけです。人間には、アリの言葉も分かりませんし、何を考えているか分からないでしょう? それは神が人間に対して考えているのも同じではないかということです。神が人間を作ったというのに、いつの間にか人間が分からなくなった。だから堕落もあったので、それを憂いて滅ぼしたんですよね。人間の都合も考えずにです。それを校長は憂いていました。神とはいえ、作るだけ作っておいて放っておいたという考えですね。それを棚に上げて人間を滅ぼすのは横暴ではないかという考えです。私もそれはそうだと思いました。だから、この教団に入ってよかったと思っています」
「なるほど、それが桜井さんの考えなんですね。でも、教団の中の勉強会で、そんな話って出てくるんですか?」
「いいえ、似たような話になることはありましたが、私の知っている限りでは、教団名に関しての質問があったこともないし、それで話をしたことおなかったですね」
「何か、タブーだという発想があったんですか?」
 と辰巳が聞くと、
「そんなことはなかったと思います。でも、教団というのは、普通なら教団名をどうして決めたかなどを公開すると思うんですが。ここはありません。そういう意味でも自由な発想があるのではないかと思います」
 清水刑事は、今の話を聞いて、少しビックリした。桜井という男がここまで教団名について考えていたなどと思いもしなかったからである。
「ところで新見さんと、さっきの教団名のお話をされたことありましたか?」
 と言われて桜井は思い出すようにして、
「一度だけあったような気がします。私が教団名について先ほどのような発想は出てきたのも、その時の新見君との話があったからではないかと、今になって思えば感じるんですよね。この教団で話をしている時、その時には意識していなくても、後になって覆い出した時、その時に閃かなかったことをいまさらながらに閃くということが結構あるんですよ」
 という桜井に対し、
「それは教団というところにいなくてもあることかも知れませんが、そんなに頻繁にあるものではないですよね」
 と辰巳刑事は言った。
「ねえ、辰巳さんは宗教団体というものをどう思っていますか? 先ほど清水刑事が来られるまでお話をした感じでは、別に偏見を持っているというわけではないような気がしたんですが」
 と桜井に言われて、
「宗教団体というと、何かがあった時、その申し開きがすぐにできるような気がしていました。それは最初から質問されることも分かっていて、そのシミュレーション通りに事が運んでいるのではないかと思わせるようにですね。そのためにマスコミを利用したり、警察おそのために利用されているんじゃないかって思うんです。それを感じた時は、本当に腹が立ちますけどね」
 と辰巳刑事がいうと、
「そういうのを確信犯というんでしょうね」
作品名:誹謗中傷の真意 作家名:森本晃次