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誹謗中傷の真意

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「ということは、少なくとも他にも相談に乗られた方がいるということですね。なるほどよく分かりました。ですがね、もしわれわれの探している倉敷という男とその新見さんが同一人物だとすれば、どうもイメージが違っているんですよ。会社の人に訊くと、小学生の頃は友達を苛めていて。中学に入ると、今度はお金の力で別の人を奴隷扱いにしたりして、さらに高校時代は、女性を略奪、暴行などと、ろくでもない話がく超えてきたりしたんですよ」
 と清水刑事がいうと、それを聞いた桜井は、まるで吐き捨てるように嘲笑って話を始めた。
「それは、今辰巳さんから伺いました。それなら余計に間違いなく、それは新見さんです」
「どうしてそう言い切れるんですか?」
 と清水刑事は、一瞬、ムッとしたが、桜井の話を冷静になって聴いてみることにした。
「刑事さんたちが、その話をまともに信じておられるようだったので、思わず失笑してしまう申し訳ありません。でもですね。そんなひどい人間が、もしいたとして、そんな話をどうして一同僚の人が知っているというんですか? その人にとっては隠しておきたいはずの話ですよね。それを誰かが知っているとすれば、他の人が密告したか、本人が話をしたかのどっちかでしょう? そんな話を密告したとすれば、その密告者は昔から彼のことを知っていたということになり、ずっとそのことで悩まされていたことになる。でも、ここではそんな素振りもなく、むしろ人の相談に乗っているくらいなんですよ。もし、彼が会社の本当に信頼がおけると思う人に話したとしても、そんな信頼のおける人が簡単に他の人に秘密をばらすわけもない。どうせなら、言いふらす前に、脅迫なりをするなら分かりますけどね、そんなこともない。となると、彼が何かの理由を持って、そういう話を誰かにして、自分をそう人物だと思い込ませたかったと考える方が辻褄が合うような気がします。その理由が何であるかまでは分かりませんが、ここでも、一時期、そこまでひどくはないですが、そんなウワサが流れたことがあったんですよ。でも、教団のみんなはそんな話を信用する人はいませんでした。彼のことをよく知っているという自負もあるし、やはり腹を割って話ができる相手ってなかなかいないので、ここでの彼の存在は大きかったと思います」
 と桜井は言った。
「なるほど、では、このうちのほとんどは誹謗中傷か何かが変に伝わったものだという考えでしょうか?」
「そうかも知れません。どこかに誰かの意志が働いているのは確かだと思うんですが、会社の方でも同じようなウワサがあるというのは初めて知りました。もっともここれは彼にそういうウワサがあるからといって、彼を見る目が変わったというわけではありません。逆に彼を尊敬する人も出てきたりで、彼の男としての株は上がっています」
 と桜井は言った。
 それにしても、誹謗中傷を浴びたり、身に覚えのないようなひどい話をウワサされて、その人の株が上がるというはどういうことだろう。普通なら、
「あの人は人望がないのか、それとも誰かに恨まれているから、誹謗中傷されるんだ。だから、そんな人間は信用できない」
 という考えが当たり前ではないだろうか。
「そういえば、校長が面白いことを言っていましたね」
 と清水がいうと、
「どういうことでしょうか?」
「誹謗中傷を受けるというのは、限りなくゼロには近いが、決してゼロではない事実があるからだって言っていましたね」
「ああ、校長らしい発言ですね。校長先生は普段は優しくて、皆を包んでくれるような存在なんですが、皆を前に導こうとする時、急に厳しくなったり、することが多いんですよ。つまり引っ張るために力が必要なんですね。でも、その力というのは自分だけが込めてもダメなんです。一緒に行動する人も一緒に力を籠めないと、必ずどこか無理が生じる。それが今の社会の仕組みのようなものだと校長は考えているようなんです。だから、それができないのは、今の常識で考えられていることが実は違っているからではないかってね。それを探るには、まず自分が素直になって考えることが必要だと言われるんです。この誹謗中傷のお話も、校長らしいお話だなって思いました」
 と桜井が言った。
「なるほど、そうやって伺えば、何かが分かったような気がします。常識にとらわれない考えという言葉がありますが、その通りなのかも知れませんね」
「ところで新見さんですが、校長先生とよく話されていたといううことはありませんか?」
 という清水の問いに、
「ええ、校長先生の方が新見君と話すのが好きなような雰囲気でしたよ。新見君は最初、この教団に来た時は人と話すなどという雰囲気を感じない人でした。人と話さないことで自分の居場所を作っているのではないかと思えるほどで、だから、誰も無理に新見君に話しかける人もいませんでした。ですが、校長が話にいくようになって、結構話をしていたと思います」
 と桜井がいうと、清水刑事は思い出したように、
「新見さんがこの教団を訪れたきっかけというのは何だったんでしょうね? ここは宣伝のようなことはしていないと思ったんですが、そうなるとここを知るには、誰かに聞くか、自分で調べるかだと思うのですが、彼には何かこのような施設を求める何かがあったんでしょうかね?」
 と訊ねた。
 確かさっき校長は、、偽名を使っている可能性があるから被害者を知らないと言ったが、話の途中で気付いたであろう。それなのに敢えて最後まで知っていることを言わなかったのは、何かそこにも秘密があるのかも知れないと清水は感じた……。
「詳しくは知りませんが、調べたんだと思います緒。私も調べて自分から来ましたkらね。もっとも私は宗教団体だと思って最初は来たんですよ。いわゆる誰にでもある神頼みの類です。世の中の理不尽さを知ってしまうと、そういうものに頼りたくなるじゃないですか。実際に入信するしないは、その時に決めればいいだけなので、話だけをというつもりで聴きに来たんです。でも、ここがあまりにも想像していた宗教団体とはかけ離れていたので、却って興味を持ちました。こんな理不尽な世の中に、こんなへんてこな団体があるんだなと思うと、少し滑稽な気がして、そのまま帰る気にはならなかったんですお」
 と桜井は言った。
「新見さんも、その類だったのかも知れませんね」
 というと、
「ただ、新見君には、他に何かあったような気もするんです。やはり私には分かりませんけどね」
 と、桜井は言った。
「そういえば、これは気のせいかも知れないんですが」
 と辰巳刑事が口を開いた。
「どうしたんだい? 辰巳君」
 と清水刑事が聞くと、桜井も興味を示して、二人を交互に見ていた。
「この間、ちょうど、倉敷さんの殺害されたその日だったんですが、警察署の方で、子供一日見学会のようなものがあったでしょう?」
「ああ、確か地元の中学校だったかな? 辰巳君は講義に参加していたはずだよね?」
「ええ、あの時なんですが、質疑応答があって、一人の男子中学生が変な質問をしてきたんですよ」
「どんな質問だい?」
作品名:誹謗中傷の真意 作家名:森本晃次