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誹謗中傷の真意

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「それは結構拮抗しているんじゃないかな? 俺もこの一連の記事に対しては興味を持って見ているからね」
 と岡崎は言った。
「それはどういう意味で?」
 と清水が聞くと、
「「教団のことを悪く言うのは一人だけなんだ。その人の誹謗中傷に対して、数人の人が諫めるような言い方をしている。普通なら誹謗中傷を行う人がひどい内容で攻撃すれば、それに対して賛同意見が続くか、反対意見があっても、一人が一対一でお互いにタイマンをはるのが、宗教関係におけるネットでの論争のパターンが多いんだけど、今回は違うんだ。教団擁護派は決して誹謗中傷者を攻撃するようなことはしない。ただ、擁護者の方は一人ではなく、数人いるというのが特徴だね」
 と岡崎は言った。
「そうなんだ」
「ああ、誹謗中傷者の意見を見ていると、結構リアルなところが多く、信憑性もあるように見える。そう考えると、この人は教団内部の人ではないかと思えるんだ。そして教団擁護派の連中も、そんな彼をなだめるような書き方をしていることから、内部の人間だと分かっていて、擁護を書いているのではないかって思うんだ」
「ということは、教団内部での論争を、、ネットを使ってしているということかな?」
 と清水が聞くと、
「どうもそうじゃないかって思うんだ。宗教団体というのは、本来なら不特定多数の人にアピールするものではなく、どちらかというと来る者はこばまずとして門を開いているのが普通なんだけど、ここは、制度は同じなんだけど、人を勧誘するようなことはあまりしていないのに、入信する人が多い。やはりどうしても嫌われる宗教団体としての部分が見えてこないのと、勉強会という言葉に魅力を感じている人が多いということなのかな? 本当であれば宗教団体などに入って、助けを乞いたいと思っている人なんだろうけど、、本当の宗教団体は怖いけど、ここだったら、安心してこれるという意味で、気楽に入ってきている人が多いんだよね。でも、抜ける人はそれほどいない。団体の中に、信者を引きこんでしまうと、それを逃がさないという秘訣のようなものを秘めているのかも知れないな」
 と岡崎は言った。
「教団には何か秘訣とは違う意味での秘密があると思うかい?」
 と清水刑事に訊かれて。
「ああいう団体というのは多かれ少なかれ、秘密はつきものだと思うんだ。ただ、あの団体からは秘密めいたものが表い出てくる気はしないんだよ。だから入信者が増える割に、退会していく人はさほどいないということになるんだろうね」
 という岡崎に対し、
「じゃあ、いい悪いは別にして、明らかに他の団体とは一線を画しているところがあると言っても過言ではないのかな?」
 と清水刑事が聞くと、
「うん、そういうことになるんだろうね。少なくとも俺はあの教団で何か犯罪めいたことが起こるとは思っていなかったので、ビックリしているんだ。だけど、捜査は今始まったばかりなんだろう? 教団がこの殺人に関わっているという証拠があるわけではないし。ということになると、俺の意見としては、捜査の際に、教団を贔屓目で見ないでほしいと思う。普通の宗教団体とは違うと感じる分にはいいが、捜査の中で、教団ありきで考えることはやめてほしい気がする」
 と岡崎は言った。
「ああ、もちろんそうさ。しかも、これは殺人事件だ。あらゆる可能性を考えなければいけないと思う。ただ、第一発見者の男から、この教団の話が出たので、見逃せないと思ったんだ。いずれは事情聴取をしなければいけない相手だと思ったので、お前に事前にどんな団体か聞いておくことで、予備知識になると思ったんだ。確かにお前の意見は意見として聞いておくが、捜査の際には、教団に対しての意識は白紙のつもりで望もうと思っているんだ」
 と、清水刑事は言った。
「それを聞いて安心したよ。これだって俺個人の勝手な思いこみだからな。まずは、お前の刑事課の刑事によるその目で見ることをお勧めするよ」
 と岡崎はいうのだった。
「いや、ありがとう。君の公安としての目を信じるとして、俺も俺の目であらためて見させてもらおう」
 と言って、その話はお開きとなり、あとは食事をしながらの、他愛もない昔話に花を咲かせていたものだった。
 次の日、目が覚めてからの清水刑事は、昨夜緒岡崎の話を頭の奥にしまい込んで、いよいよ教団にいってみることにした。確かに岡崎の言うと落ち、この事件における教団は無関係なのかも知れないが、被害者である倉敷という男を知るという意味で、教団を知っておくことは必要であった。
 教団の方から何か倉敷に対しての意識を与えてくれるかも知れないという意識もあったが、なるべく最初から教団と倉敷の関係を必要以上に詮索しないようにした方がいいと思うようになっていた。
 教団の所在地は、思ったよりも都会にあり、雑居ビルの一室を借りているという、まるでどこかの事務所のようなところだった。
 まるで宗教団体らしからぬその雰囲気は、そのビルの一室に入っても同じだった。三階と四階を借りている形になっていて、三階に待合室、いわゆる休憩所のようなところがあり、他の部屋は校長室と、理事長室。そして、学校でいえば教員室とも言えるような少し広めの執務室があった。
 ビル自体は、いかにも昭和に建てられたビルであり、若干のくたびれも感じられることもあったが、宗教団体としては、あまり近代的なビルよりも、情緒を感じさせ、いのではないかと勝手に清水刑事は感じていた。
 四階は、すべての部屋が実際の勉強室、学校でいえば、教室に当たるところであった。普通宗教団体というと、そこで行われる集会のようなものは、どこかの体育館のような広いところで、正面に教祖がいるというのが一般的に感じられたが、やはりここは、宗教団体としての一般的という言葉が分からなくなるほどの不思議な佇まいを感じさせる場所であった。
 大小四つの部屋があり、三階に上がった時とまったく同じ風景に、まるでデジャブを思い起こさせるようであった。
「ひょっとすると、これも教団ならではの演出なのではないか?」
 という、考えすぎにも思えるシチュエーションを頭の中に思い浮かべていた。
 宗教団体というと、そのパフォーマンスと演出によって、まず信者になろうとする人の意識を、自分たちの世界に向けさせ、信者の話によって、洗脳することでその土台を固めるための信者を獲得していったのではないかと思っている。そのパフォーマンスと演出は、大げさであればあるほど、その効果はあるのだろうが、ここのように、静かに相手を威圧するような佇まいも、実際に見てみれば、感じさせられた気がして、却ってこちらの方が不気味さという意味では、インパクトが強い気がした。
 だが、昨日の岡崎の話を聞いていれば、そんな気にもなってくる。
「いやいや、岡崎も言っていたように、人の話に惑わされることなく、、自分の目で確かめることが大切だった」
 と感じた。
 四階に上がってきたのは、まず最初に三階で校長の話を伺ったあとで、事務員の案内で四階に赴いた時に感じたことだったが、三階から四階に上がるのに、わざわざエレベーターを使ったのだが、その理由が、
「最初にデジャブを感じさせるこt」
作品名:誹謗中傷の真意 作家名:森本晃次