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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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「珍獣姉妹」なのか

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 ミッチャンは92歳で母の一まわり下である。
幼いころは母に面倒見てもらって、女子大に行った母に大きな憧れを抱いていたのであろう。
母を目標にしていたようだが、自分は田舎の女学校で終わった。
それをずっとコンプレックスにしていたようだ。
今度は母が認知症で施設に入り自分はその見舞いだから、精神的にも優位にあるのだろう。若干の余裕が感じられた。

「ワーッ」「ウォー」の応酬が、2,3分も続いたろうか。二人とも疲れたのか、ようやく言葉が少し出るようになった。

「ねぇさん、わたし、ミッチャンだよ。わかる?」
母は大きく頷いて、にっこり笑った。そして、
「ああ、長く生きてよかった。また会えたね」と言った。

 その後は、三つの言葉の繰り返しだった。
一つは、「よかった、よかった」
二つは「元気でよかった。神様のお陰だね」
そしてもう一つは「また会おうね」「また来るね」

 言葉が途切れると、二人は顔を見合わせて、手拍子を打った。
母が嬉しい時にする仕草である。
「トトンガトン、トトンガトン、・・・・・」これを掛け声にして手拍子を繰り返した。私もつられて「トトンガトン」に加わった。

 30分ぐらいすると母は眠そうになった。そろそろ帰ろうということになった。二人は再会を誓って手を握り合っていた。
作品名:「珍獣姉妹」なのか 作家名:ヤブ田玄白