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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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「珍獣姉妹」なのか

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「珍獣姉妹」なのか




 母が施設に入所して一か月たった。
「呼吸停止事件」を2回起こしたが、その後は無事でいる。

先日、東京に住む母の妹(ミッチャン)から連絡があって、昨夜、母を夢に見たとのことだった。施設に面会できるか確かめるとOKの返事だったので、昼過ぎ、電車から降りたところをピックアップして、〇〇園に行った。

 ミッチャンは92歳だが、ブルーの春らしいジャケットで背筋がピンとしてとてもその歳には見えない。

 母は3時のおやつが終わったところで、皆が集まる共有スペースで車いすに乗っていた。

 「ミッチャンだよ!」と声をかけた。しばらく怪訝そうな表情だったが、ミッチャンが大きな声であれこれ話しかけているうちに思い出したらしい。笑顔がこぼれた。

 ミッチャンは母に向かって、「ワーッ」とか「ウォー」と叫び声をあげた。
それに合わせて母も「ワーッ」「ウォー」と声をそろえた。

 二人は森の奥の樹の上に住む珍獣のようだった。オランウータンとかオナガザルとか、そんな感じだった。
二人の間には叫び声だけで意思疎通ができているらしい。
ヤブ田にはよくわからない言葉以外のコミュニケーションである。

 幼いころから一緒に過ごした最愛の姉妹でなければできない意志疎通法であろう。
作品名:「珍獣姉妹」なのか 作家名:ヤブ田玄白