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予知夢の正体

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「乙巳に変」というと、六四五年に起こった、中臣鎌足と中大兄皇子とによる政治クーデターであるが、それが少し違った印象で捉えられるようになっている、あらましとしては、唐からの貢物を、飛鳥板葺きの宮と呼ばれる天皇への貢物を献上する儀式の行われる場所で、当時の権力者、蘇我入鹿が当時の天皇である、皇極女帝に対してちょうど今まさに貢物を捧げているところで、影に隠れていた刺客とともに飛び出した中大兄皇子が蘇我入鹿を討ち取るというクーデターであった、ちなみに当時の天皇である皇極女帝は中大兄皇子の実母であることから、母親である天皇の目の前で殺害というクーデターを起こす多ことになる。
 その申し開きは、
「蘇我入鹿が政府転覆を企んでいる」
 などと申し立てたからだった。
 そのクーデターは成功し、蘇我入鹿の父親である蝦夷は自分の屋敷に火を放ち、当時一番の権力を持った豪族であった蘇我氏は、見事に滅びてしまうことになる。
 これが史実としては長い間定着していたが、実際にはこのクーデターはただ単に蘇我氏の隆盛を妬んだ中臣鎌足の陰謀による説が高まっている、
 蘇我氏というのは、当時朝鮮半島に三つ存在した国家と平等に貿易をしていたが、中臣鎌足は、百済という国に肩入れし、進行してきた新羅や高句麗の軍に反抗するようになっていた。
 さらに、蘇我氏は大陸からの宗教を受け入れ、仏教を布教しようと考えていたが、蘇我氏以外では、従来の古来の日本の宗教を重んじたため、仏教を阻害することになった。
 そのため、大陸からの文化がなかなか入ってこず、今の歴史研究家の中には、
「乙巳の変の影響で、日本の歴史の進行が百年遅れた」
 と言われるほどになっていた。
 つまり、聖徳太子(今では厩戸皇子と言われるようだが)の時代から、歴史は逆行してしまったという考えである。
 それと同じことが、実は源平合戦にも言われる(ちなみに、源平合戦というのは今は治承・寿永の乱というらしいが)でも同じことが言われている、元々は平家の驕りを源氏の武士としてほ誇りが倒したといわれていたが、実際には、平家は目を海外に向けていて、源氏の土地を中心した封建制度は、これも時代を百年遅らせたと言われる。
 つまり歴史の流れというものは、史実と言われているものを簡単に変えるだけの力があるのかも知れない。今では二十年前までの常識が、ほとんどウソのような形になっているからである。
 玲子が次に興味を持った時代は、明治時代だった。西南戦争を経て、日清、日露戦争などの時代背景を見ていると、実に面白いものだった。
 日清戦争に至るまでの歴史が好きだった。朝鮮半島を開国させてからの、挑戦国内の動乱がどのようなものであったか、そこをつくように、日本と清国、あるいは露国の思惑がいろいろと交錯し、朝鮮は列国の支配の対象になっていったのだ。
 朝鮮半島内部でも、保守派と改革派の間で闘争が行われていて、そこに列国が干渉することで、いくつものクーデターが起こり、その鎮圧後に朝鮮に対しての勢力関係が変わってきたりする。
 結局、朝鮮を巡っての戦争が起こるわけだが、これも日本の歴史の中に、世界史が入り込んでいることになる。
 中国自体が、当時の帝国主義体制の真っ只中にあり、列強から食い物にされ、さらに清国では、歴史認識を持っているのかいないのあ、西太后の権力によって、国家予算までもが自分の私利私欲に使われてしまったり、何を思ったか、国内の反乱に便乗する形で、どさくさに紛れて列強各国に宣戦布告するという自殺好意的なことをしてしまうことで、結局その後、清国は滅んでしまうという末路を迎えるのだが、その原因を作ったのが、日清戦争での清国の敗北だったのかも知れない。
 もちろm、アヘン戦争、清仏戦争と列強に対しての敗北はあったが、同じアジアの国に負けたというのは、当初の評判を覆すものだったことに違いはない。
 日清戦争で清国は世界から完全に孤立した。
「眠れる獅子」
 と言われていた国でもあるし、清国海軍は、東洋一と言われていたにも関わらずのことである。
 当時の清国の戦艦は、「定遠」を始め、世界最大級だったにも関わらず、その整備はほとんど行われていなかったことが最大の理由であろうが、戦意という意味でも日本軍に大きく離されていた。
 当然、日本程度には負けないという驕りも会ったのだろうが、歴史は繰り返すというが、それを見ていた日本軍が大東亜戦争で同じ過ちを繰り返すことになろうとは、当時の連合艦隊に分かるはずもなかったであろう。
 朝鮮という国を巡っての時代は、
「韓国併合」
 を元に終わりを告げるが、日本軍が次に目指すは、日露戦争で手に入れた、
「南満州鉄道」
 を租借したことで、手に入れた、
「関東地方」
 への侵攻であった。
 満中と呼ばれるその地方は、日本にとって大切な土地であった、特に、当時の日本の情勢から考えるとどうしても必要な土地であったのだ。
 満州の権益は、ソ連からの脅威に備えるという理由と別に、もう一つ大きな意味があった。
 それは、当時の日本が昭和恐慌、それに続く世界恐慌、さらに東北地方の不作も重なって、増えつつある人口に対して、日本の食糧問題では立ち行かなくなったことで、満州を手に入れて、満州に王道楽土を築き、そちらに移民を送り込んで、食糧問題も一挙に解決しようという思惑があったことだった。
 当時の日本は、
「満州にこそ天国がある。開拓すればその分だけ自分のものになる」
 という宣伝をして、移民をたくさん送り込んだ。
 しかし実際には、昼でも氷点下となる厳しい満州の冬が尋常ではなく、王道楽土などという言葉とはまったく正反対のこの世の地獄を見ることになった。
 歴史というのは、当時の権力者の思惑でいくらでも変わるし、それを上回るのがその時の世界情勢ではないだろうか。
 正しく歴史を把握していないと、歴史に学ぶことなく突き進むと、ロクなことがないのは、歴史が証明しているのだ。
 そんな歴史を勉強することは、就職云々よりも自分の人生を左右するという意味で、実に興味深いものだった。
 そういう意味で、歴史を勉強していることに、楽しさだけではなく、誇りのようなものを感じるのは、おかしな考えであろうか。
 歴史の勉強をしていると、ふいに。
――自分がその時代にいたらどうなるだろうか?
 などという妄想を抱いてしまう気がした。
 歴史を勉強することの意義が、まだ他にもあるのではないかと思っているのだが、それもまんざらではないような気がしていた。

【歴史に興味のない方は、ここまでお進みください】

 その日、喫茶店で、いつものようにカウンターの奥でモーニングサービスを食べていると、一年生と思しき連中が数人、奥のテーブルで話をしていた。その話を聞いていると、少し不思議なことを話しているような気がしたので、聞き耳を立てるようになった。
 男性二人と女性二人の四人組だったが、そのうちに一人の男性が面白い話があると言い出したのだ。
「面白い話というのがどういう話なんだ?」
 ともう一人の男性が面白がって聞き直したので、二人の女の子もつられるように話を伺っている要津だった。
作品名:予知夢の正体 作家名:森本晃次