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予知夢の正体

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「でも、ゲーム感覚でやっていいものなのかしら? 生殺与奪の権利という言葉があるけど、誰が誰に対してそんな権利を持っているというのかしらね? 親だって自分が生んだという理由だけで、子供を殺すことは許されない。逆に許すことができるとすれば、親だけなんじゃないかって思えてくる」
 そんな友達の話に対して、
「やっぱり、そんなことが現実にあるなんて、ありえないですよ。あれは私の聞き違いだったのかも知れませんね」
 とマスターがいまさらのようにいうと、
「じゃあ、教授がけがをしたというのは?」
「ただの偶然でしょう。この場合の偶然というのは、かなり薄いところではあると思うんだけど、殺人未遂請負業の信憑性の方が限りなくゼロに近いと思えば、思い出してしまったことを安易にここで口に出してしまったことを、私は今後悔しているんだ」
 とマスターがいうと、
「それって、本当のことだったのかしら? 夢だったとかではなくて?」
 と聞くと、マスターが少し驚いて、
「実は、僕もそのことはずっと考えていたんだ。でも、どこかリアルさが残っていて、その証拠に目が覚めてからも、そう簡単に忘れられそうにもない。もし夢だったとしても、普通の夢とはわけが違う。そう思うとその夢がまるで予知夢のようなものだったのではないかと思うんだ」
 と言った。
「ひょっとすると、予知夢と考えられる夢は、複数の人が見ているのかも知れないわね。そうだとすると、実際に起こったことを、誰も夢に見たって怖くて言えないと思うのよ。それを暗示させるのが、夢をなかなか忘れないということ。それは肝心な部分、つまり一緒に共有してその夢を見ていた人が、夢の中で消えているのを、辻褄を合わせるように記憶しているという証拠なのかも知れない」
 と、玲子は普段から見ている予知夢をそのように解説した。
「そうなると、皆が見ている夢だということになるわよね。もちろん、究極だけど。だとすると、夢って普通は他の人と共有なんかできるはずがないって思うじゃない。だから、同じ夢を見ていると感じた時、無意識になのか意識的になのかは分からないけど、辻褄を合わせようとするんだと思うのね」
 と友達は言った。
「どういうこと?」
 と玲子が効きなおすと、
「つまりね。予知夢というものを普通は言葉としては聞いたことがあるけど、ほとんどの人が半信半疑、どちらかというと信じていない人の方が多いんじゃないかって思うのよね。それが、辻褄合わせによって生じることであり、皆が見ているものは夢ではなく、実際に起こっても不思議のないことを考えているだけなんだと思い込んでいるのかも知れないと思うのよ。確かに、それだっておかしいことだって思うわよ。夢でもないのに、しかも、根拠もないことを誰もが夢で見たかのように感じていることをね、でもそれを夢として片づけると、夢を共有していることになり、その矛盾とを比較して考えると、現実世界での矛盾の方が、納得できるというものでしょう? いや、納得したいと思っているのかも知れないわね」
 それに対して、玲子は、
「一概に、皆そうだとは言えないかも知れないわね。私の場合は、現実にないようなことを夢として架空の世界の出来事として考えようとする方なので、そういう意味では、この場合は二つの両極端な考え方があって、きっとそれはその人の性格によって左右されるものなんじゃないかしら?」
 二人の話をじっと聞いていたマスターだったが。
「確かに玲子さんの考え方には一理ある気がするな。どっちも信憑性が半々くらいにあるんだったら、どっちも正しくて、どっちも間違いなんじゃないかって思えてくるんだけど、僕はどっちなのかな?」
 と、マスタはまた考えてしまった。
「じゃあ、玲子さんの考え方でいけば、その人は必ずどちらかの考え方になってしまうということになるのかしら? その時々で変わるという考え方はないおかしら?」
 と友達がいうので、
「私にはないと思っているわ。やはりその人が臆病な人だったら、夢で片づけようとするだろうし、臆病ではないけど、非科学的なことをあまり信じない人は、夢自体は信じているんでしょうけど、夢という者をあまり多岐にわたって活用するような考え方にはならないと思うの」
 と玲子がいうと、
「じゃあ、あなたは、予知夢というものの存在は信じているの?」
「私は予知夢というものはあると思っているわ。ただ、それが普通の夢のように眠っている時に見る夢かどうかというのは分からないと思うの」
「どういうこと?」
「例えば、人は急にボーっとしていることがあるじゃない。特にいつも何かを考えているような人なんだけどね。その時には自分の世界に入り込んで、自分の世界を作っていると思うんだけど、それも、ある意味、夢に似ていると思うのね。つまり、起きていて見る夢とでもいえばいいのかしら?」
「ほう、その話には僕も興味があるね。起きている時に夢に似たものを僕も見ることがあるんだ。急に誰かに声を掛けられて、ふいに我に返るんだけどね。その時結構長い間考えていたつもりでも、時間はまったく経っていなかったりするの。自分の意識だけ、急に別の次元に飛んでいって、何かを持って戻ってきた時には、まったく同じ場所に戻ってくるとでもいえばいいのかな? それを考えた時、相対性理論の発想を思い浮かべるんだ。あれは高速で移動した場合、拘束であればあるほど時間が遅くなってしまって、戻ってきた時には数百年経っていたとかいう、いわゆる浦島太郎の玉手箱のような話だね」
 とマスターがいうと、
「あら? でも、今のお話では、時間が経っていなかったというんでしょう? 浦島太郎とは逆よね?」
「うん、そうなんだ。だから現実世界とは違うという意味で、それが夢の世界だったと考えることもできると思うんだ。そういう意味で、予知夢というのを二人とも信じてはいるが、それを夢として解釈するか、現実として受け入れようとするのかで割れているというのは、今の僕の発想ともリンクしていて、話し合ってみるには十分なお話ではないかと思ってね」
 という話にマスターが言及し始めたので、
「ちょっと待って、少し話が飛躍しすぎてやしないかい? 元々は教授が聴いたという、そのおかしな連中のことから始まったお話だったのよね」
 と友達が言った。
「そうだね、話を本当はここで終わらせたくはないけど、これでは話が脱線して、枝葉ばかりになってしまって、結論がまったく見えてこないような気がしてくる」
 とマスターがいうと、
「となると、ここでいろいろ話をしていても、結局は想像の域を出ることはないので、教授がどうして怪我をしたのか、確認してみるのが一番ね」
 と、友達が言った。
 玲子は一度自分の耳で聞いているという手前、その話の信憑性が分かっているような気がした。
 とにかく、その日は、
「予知夢というものにはいろいろな考え方ができて、科学的に証明ができるはずはないとしても、結局その正体を考える場合、科学とは切っても切り離すことのできるものではないのだ」
 という意味の会話を三人でしたという意識を持つのだった。

               転落の真相
作品名:予知夢の正体 作家名:森本晃次