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殺意の真相

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「その如月祥子という女性はどうして、被害者に対して何か恨みを感じていたのかな?」
 と聞かれて、
「これは彼女が夜勤めているクラブでの聞き込みだったのですが、彼女には被害者以外にもどうやらパトロンがいたようで、最初はうまく両方が被らないようにうまくやっていたようなんですが、どうやら被害者にうまくやっていたところを見抜かれたようで、少し厄介な立場になっていたということのようでした。そんな中で、被害者から昼間の事務を依頼されて、しかもそれを引き受けるというのは、どうも矛盾しているかのように見えるという話だったんです」
 と聞くと、
「うん、それは何か妙だね。女性のそのあたりの心境はよく分からないけど、恨みを持っていないともいえない。でも、まだそれだけではかなり薄い気がするんだけどね」
 というと、
「確かにそうかも知れません。でも、これはまた別の筋からの話ではあるんですが、この如月祥子という女、昨夜の事件の第一発見者である参謀と自認している各務原という男と何らかの関係があるということでした」
「それは男女の関係ということかな?」
「そうかも知れません、でも、そこまでハッキリとは分かっていないようでしたが。よく二人で密談のようなことをしているような話でした」
「それはクラブでかい?」
「クラブでは大っぴらにはできないでしょうが、やつが幽霊会社の事務所に行った時などではなかったんでしょうかね。ただ、この話には信憑性が薄いので、何とも言えませんが、どうもあの各務原という男を見ていると、それくらい何かがあっても不思議がないような気がするんです。何かを企んでいるようなですね。参謀という立場で甘んじてはいるけど、何か大きな野心を持っているのではないかとも思えますよね」
「確かにそれは言えるかも知れないけど、どうもまだ分からないことが多いというのが事実でしょうか?」
 と言って、彼は着席した。
「ところで被害者の部屋の創作はどうだったんだい?」
 と聞かれて。今度は鑑識が立ち上がって説明をした。
「事件現場は荒らされていたという感じもないですので、やはり薬を摂取後苦しんでの中毒死ということでしょうか? ただ、彼はあの部屋にあまり人を連れてくることはなかったんでしょうね。指紋はほとんど被害者と、参謀と言っていた各務原氏の指紋くらいしかありませんでした。それに一つの部屋はまったく使用していないんでしょうね。通路側の部屋にはほとんど生活反応のようなものは残っていないような感じでした」
「その部屋には何があったのかね?」
「本棚があって、本がたくさんおいてありましたので、書庫のような感じですかね。机がせっかくあるのに、書斎としても使っていなかったようです。もったいないような気がするくらいですよ」
「社長をしていると、そういうところがあるのかも知れないね。僕にはよく分かりませんが」
 と、坂口刑事が茶化すように呟いた。
「じゃあ、各務原が泊まる時は、リビングだったということか?」
「そうかも知れません」
「どうも被害者はおかしな性格だったようだな」
「そうですね。ただ、被害者だけではなく、各務原という男もよく分からない男のようですよ。どっちもどっちということでしょうか?」
「とにかく、やつの部屋には、女を連れ込んでいるという気配はないということだな?」
「ええ、そうです」
「話を聞いている限るでは、何か朴念仁のようなやつにしか聞こえないが、女が嫌いだったのかな?」
「そういうわけではないと思います。実際に女性を他のマンションに囲っているという話も聞くので、どうやら自分の部屋に連れ込まないだけのようですね」
「奥さんはいないのか?」
「嫁さんは、ほとんど家にいて、あまり出歩かないと言っています。どこかに出かけるとしても、使用人として気が知れた人としか出かけないようで、世間一般の人とはあまり関わりになりたくないようですね」
「奥さんも変わり者なのかな?」
「そういえば奥さんに旦那が殺されたことを話すと、最初はすごく取り乱していました。それほど旦那を愛しているのかと思ったんですが、どうもそうではないようなんです」
「どういうことだ?」
「最初は、旦那を殺した相手を殺してやるというくらいまで逆上していたんですが、途中から急にしおらしくなって、今度はまるで自分が殺されるのではないかとばかりに急に怯えだしたんです。旦那が死んで取り乱すのは分かりますが、ここまで急変するのもおかしいと思うんですよ。しかも、途中から旦那が殺されたことよりも、次は自分が殺されるんじゃないかと言い出す始末、挙句の果てには、今度は自分が殺されるから、警察に守ってもらいたいなどと言い出すくらいなんですよ」
「それは厄介だな。だけど、最初の旦那のころを気にしている様子はウソだったということかな? 旦那のことよりも自分のことの方が気になってしまって、すでに旦那のことは、もうどうでもよくなったんだろうな」
「ええ、だから、そんな状態の奥さんから事情もなかなか聴くこともできずに帰ってきたんですよ。また日を改めて行ってみようと思ったんですが。この様子だと、次回も怪しいものかも知れませんね」
「はぐらかされるかも知れないな」
「ええ、正直、あの奥さんにはまいってしまいましたよ。確かにお金持ちのマダムなんてやりにくいだけですけどね」
「あの奥さんが何かを隠しているということはないかね?」
 と門倉刑事は聞いた。
「いやあ、分かりませんが、あの状態で隠していることがあるとすれば、あの奥さんもかなりの女優ですよ。迫真の演技というところでしょうね」
 この時の門倉刑事の考えは、実はまんざらでもなかった。奥さんが今後この事件の表舞台に出てくることもあるのだが、その時になって門倉刑事が今感じたことを思い出せるかどうかが操作のカギになるだろう。
「奥さんには、他に男がいるということもなさそうだね」
「そうですね、何しろ家に閉じこもりきりですからね。一緒に誰かと出かけるのも、気心の知れた使用人ばかり。しかも初老の爺さんと、女性だけですから、男性の影はありませんね」
 ということであった。
「ただ、奥さんの様子が少し変だということは頭に入れておこう。金持ちの奥さんなんて何を考えているか分からないと考えるか、それともよほど、世間にトラウマがあるか、生まれてこの方ずっとお嬢様で育ってきて。表が怖いとでも思っているのかのどちらかではないのかな?」
 と門倉がいうと、
「どちらもあるかも知れませんね」
 と、捜査員が答えた。
「じゃあ、奥さんは旦那に何か疑問を感じていたりしないのかな? 少なくとも怪しい商売も手掛けているのだからね」
「見る限りでは、旦那に疑問を感じている様子はないですね」
「じゃあ、各務原とはどういう感じなんだ?」
「別に普通に社長の奥さんと、参謀というだけの関係のようです。奥さんはむしろ、各務原のことを嫌っている様子もありましたよ」
「ほう、各務原を嫌っている?」
「ええ、各務原の方にも奥さんへの気持ちはないようで、お互いに好き合っているなどということは、まずないと思えます」
作品名:殺意の真相 作家名:森本晃次