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殺意の真相

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 というイメージを一掃したかったというのは誰もが感じていたことだろう。
 政財界において、世襲というものがいかに蔓延っているか。そして世間で疎まれているか、それを感じたことから、あくどいことにも平気で手を出すようになったということなのかも知れない。
「今までのお話を伺っているうちで考えると、各務原さんは、社長が個人的に恨みを抱かれるようなことをご存じではないと解釈をしてよろしいのでしょうか?」
 と刑事がいうと、各務原は少し怪訝な表情をしたが、
「ええ、構いません」
 と答えた。
 これは刑事の方としても、きっと各務原は知っていても、知っているとは言わないだろうから、それとなくこちらから先手を打つような聞き方をすることで、彼が何らかのこちらで予期していないような態度に出てくれればいいという思惑を持っての質問であったが、どうやらその思惑は功を奏したかのようであった。
――この男、何か知っている――
 と感じさせた。
 実はここに、
「キツネとタヌキの化かしあい」
 が存在するのだが、それは今後の話の展開で現れてくるのだった。

              二人の女

 第一発見者が、被害者と深い関係にあったということは、彼の立場を微妙にしたのは言うまでもない。
 昔から、
「第一発見者を疑え」
 というのが、捜査の鉄則だというではないか。
 刑事が事情聴取した時も、どこかしっくりこないところがあり、初めて死体を見たにしてはあの落ち着きようは、どこか違和感を持たせるに十分な気がした。
 捜査本部では、まず第一に第一発見者の素性を洗うということから始め李、手始めに会社での社長のウワサや、社長を恨んでいるものがいなかったか、そして、怨恨でなければ、社長を死ぬことによって、誰が一番得をするのかということを重点的に捜査がされた。
 その捜査方針を固める前に、まずは捜査本部が開設された時点での分かったことが発表されたのだが。
「まず、死因は毒殺でした。致死量を十分に満たしている毒薬ではあったんですが、どうも被害者はその薬を服用して結構苦しんだのではないかと思われるのです。即死とまではいかないまでも、毒殺するには十分な量を摂取しているにも関わらずに苦しんだというのは、どうも変だということを監察医の先生はおっしゃっていました」
「それは少し妙だね」
 と各務原氏に事情聴取した刑事である、坂口刑事がそう言ったが、彼もその理由がすぐに分かるはずもなく、ただ、そのことをこれからしばらく気にするようになっていた。
 捜査報告は続けられた。
「死亡推定時刻は、死体が発見されてから、死後八時間から十時間が経っているということでしたので、たぶん、昨夜の十一時から午前一時くらいの間ではなかったかということです」
 という報告だった。
 そして、現場を捜索した刑事が手を挙げてその話の補足を行った。
「夕べ被害者は、別に誰かの来訪を受けたような形跡はありません。台所の上は愚か、流しの上にも何も残っておりませんでしたから、片づけは夕食が終わってからだと見るのが妥当ではないかと思います」
「その心は?」
「社長は誰かが来たりした時は、必ずその人を接待するという意味で、片付けなどはその人が帰ってからしているようでした。しかもアルコールが好きなようなので、夜の来訪客と結構呑むことも多く、今までもほとんど朝までまともに片づけていることはなかったので。各務原さんが朝寄った時に、後片付けをすることも結構あったそうです。しかし昨日はそんな後もまったくなかった。だから、社長に来客があったというのも考えにくいということです。実際にマンションのロック履歴を見ると、昨日社長が帰宅してから、あの部屋に誰も出入りをした人はいないということでした」
 という報告に、
「じゃあ、社長は自分で毒を飲んだということなのかな?」
「そう考えると辻褄が合います。社長は常用している薬もあったということですから、そこに毒薬を混入していたということも考えられるのではないでしょうか。社長のボディガードの人も、来客はなかったと言っていますので、ほぼ間違いないと思っていいのではないでしょうか」
 そこで、捜査主任の門倉刑事が発言を求めた。門倉刑事は、筆者の小説を愛読の方にはお馴染みであろうが、冷静沈着な目を持って捜査を行うベテラン刑事であった。
「今の話を聞いていると、あまり個人のアリバイは関係がないかのようにも感じてきたね」
「どういうことですか?」
 と坂口刑事が訪ねた。
「もし、彼の常用している薬の中に毒を混入したのだとすれば、被害者がいつそれを口にするか分からないわけだよね。ということは、犯人は被害者がいつ死んでもいいということになり、犯人自身もアリバイなど最初から考えてはいなかったはずだと思うんだ。そもそも彼が服用していた他のクスリから、毒物反応はあったのかね?」
 という質問を受けて、監察医が答えた。
「いいえ、ありませんでした。ただ一つ気になることがあったんです」
「というと?」
「彼の足首にポツンと注射針の痕がありました。解剖所見からも、彼は麻薬の常習犯だったことが判明しています」
「なるほど、それでは、被害者が毒を摂取したのは、必ずしも口からだとは限らないということかな?」
「ええ、そうですね。吐血していたわけではなかったので、最初は分かりませんでしたが、注射による接種での中毒ということも十分にありえます。先ほど坂口刑事が報告していた件とも重複しますが、十分な致死量なのに、苦しみの痕が結構あったというのは、ゆっくりと摂取したことが原因という可能性もあるかと思います」
「分かりました」
 と門倉刑事は、その話を聞いて納得したようだ。
「被害者は結構危ない橋を渡るような商売をしていたということでしたが、麻薬にまで手を染めていたということですね。第一発見者の各務原という男は、そんなことは一言も言っていなかったですけどね」
 と坂口刑事は言った。
「意外とその各務原という男は、できるやつなのかも知れないな。まあ解剖すればすぐに分かることではあろうが、他のことはあっさりと認めたのに、麻薬のことは口にしなかった。そこには何か思惑があるのだろうが、それをこちらに悟らせないようにするために、わざと麻薬のことを口にしなかったのかも知れないな。やつは『木を隠すには森の中』ということわざを利用したのかも知れない」
 と、門倉刑事が言った。
 そこで今度は坂口刑事から、
「それでは、被害者の人間関係についてはどうなんですか・」
 という質問に、そちらの捜査を受け持っていた刑事二人のうちの一人が手帳を見ながら挙手をして立ち上がった、
「ご報告いたします。我々で調べてみたところでは二人気になる女の存在がありました。一人は川崎晶子という女性で、彼女は被害者の男に脅迫状めいたものを送り付けています」
 というと、
「脅迫状とは穏やかではないね」
 と言われ、
作品名:殺意の真相 作家名:森本晃次