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殺意の真相

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「仕事の間は結構ベッタリですが、プライベートの時は社長が一人ということもあったりしますよ・ただ、その時は私ではなく、屈強のボディがーと専門の社員がいますので、その人が社長をまわりから見張っていることが多いです。私のような人間では役に立ちませんからね」
「それほど、社長のプライバシーでは、誰かに狙われたりすることがあったということでしょうか?」
「いいえ、そんなことはありません。あくまでも自己防衛の観点です。この点については先代の社長である現会長も了承されていることです。会長曰く『わしの時もそうだったが、社長は絶えず危険と隣り合わせなので、プライベートといえども、身辺警護には気をつけておかなければいけない』と言われています。我々はその言葉を重々に理解して行動しているつもりです」
「こうなってしまうと後の祭りなんですが、お気持ちはお察しいたします」
「本当にそうですね。社長のことを考えれば、本当に世の中というのは何が起こるか分かりませんね」
 と各務原がいうと、
「各務原さんは、社長にも十分に人から狙われるということが分かっていたということをお考えでしょうか?
「ええ、私はきっと狙われたんだと思います」
「根拠は?」
「日本の警察が優秀なので、隠しておいてもすぐに分かることなので、こちらから先手を打ってお話いたしますが、社長は会社経営の上では、結構ヤバい方法で結構強引な商売をしているようです。業界の中では、社長に対して恨みを持っている人も少なくないと思っている人も結構いるんじゃないでしょうか? 我が社は表で行っている正規の仕事以外に裏では、出来る限りの幅広い、あくどいことをやっているのです。まるでサラ金のようなこともやっていて、やくざ顔負けの強引な取り立てもしているようです。それを苦にして自殺を企てた人もいるのではないでしょうか。私の方ではその人たちの数も身元も把握していますが、社長は知らないと思います。裏のさらに裏のことは我々がやっていますからね」
 と各務原がいうのに対し、
「だったら、もっと用心していてもよかったのではないですか? あくどいことを警察としても黙認はできませんが。被害者に自覚があったのなら、軽率な行動はとらなかったはずですからね」
「それはご指摘の通りだと思います。だから我々といたしましても、社長のプライベートを拘束はできないまでも、できるだけ様子をうかがうようにしていたんです。だから朝のお出迎えもその一環ですね」
「ところでさっき、社長は知らないとおっしゃっていましたが、あれはどういう意味ですか?」
「社長には我々はあまり知らせないようにしていたんだす。社長はあくまでもクリーンでなければいけないというのが、先代の話だったので、裏の裏に関しては、社長の手を煩わさないようにしているんです。だから逆に社長には、罪の意識は低かったかも知れませんね」
 というと、
「それでは、社長が暴走したり増長したりはしませんか? 罪の意識が薄いということはそういうことですよね」
「ええ、そうです。だから我々の役目は重要なんです。そのあたりのノウハウを持っていて、それを我々にご教授してくださっているのが、先代である現会長なんです」
「じゃあ、現会長は今の社長のやっていることはある程度ご存じということになるなのかな?」
「そういうことです。しかし、さすがにすべてをご報告申し上げることは差し控えています。私たちは、つまり先代と今の社長との間でジレンマを感じなたら、立場的には難しいところに位置していると言えると思います」
「なるほど、その立場には我々も同情の余地はあると思いますが、まずはこれが殺人事件であるということで、それなりに厳しい捜査をしなければいけませんのでそのあたりはご了承ください」
「分かりました。私たちもできる限り協力させていただきます」
 と、各務原は言った。
「各務原さんは、私たちという表現を使っていますが、私たちとは具体的にはどういうことでしょう?」
 と刑事は聞いた。
「先ほども申しましたとおり、私が社長のプライバシーに立ち入れない時には、ボディガードとしての屈強な男がいると申しましたが、彼も私たちの仲に含まれます。つまり、私は社長の意を汲んで仕事をする会社における参謀のような立場があります。社長から見れば、相談役のような感じでしょうか? でもボディガードは社長のプライベートを防衛するという立場にはありますが、社長のプライバシーには決して踏み込まない。社長からすれば、ある意味自分とは関係のない人だということで、彼らの立場は、会長直属という非常に珍しいポストです。会社では、総務部付けなっていますが、内容はあくまでも会長直属なのです。一種の特命とでもいえばいいんでしょうかね」
 と、各務原は答えた。
「本当に珍しい会社ですね。でも、それだけ確固たる組織を持っているということは、社長は本当にあくどいこともしているということなのでしょうか?」
 と、刑事はズケズケと訊いてきた。
 各務原の反応は一瞬ビクッとしたようだが、すぐに冷静さを取り戻し、
「そのあたりは、何ともお答えようはありませんね」
 というと、
「こちらもじっくりとそのあたりは調べさせてもらいましょう」
 と、すでに火花バチバチであった。
 警察もその気になって調べれば。、この会社gやっていたあくどい裏の行動も、すぐに調べがつくに違いない。
 各務原たちは、別に自分たちの行動を隠蔽しようとしたり、隠し立てをしているということはなかった。別に隠そうが隠すまいが、何か問題が起これば表に出るだけのことなので、隠してもしょうがない。だから、警察に調べられても、それは一向にかまわないと思っていた。別に捜査されても、携わっている連中が告訴でもしない限り、彼らが裁かれたりあくどいことで世間の注目を浴びて、会社が不利になることはないと思っていた。
 なぜなら、警察に被害者を先導し、訴訟を起こさせたりする力もなければ、糾弾する力もない。弁護士のように、被害者から正式にお金で依頼を受けたり、彼らの悪事が和田になって、そこからマスコミが調査や取材した内容を記事にでもしなければ、彼らには委託も痒くもなかった。
 マスコミに関しても、彼らの行動を文章にできるほどの情報を表に出しているわけではない。そのあたりは計算して、巧みに記事にするには、かなりの会社のプライバシーに踏み込まなければできないように仕組んであったので、もし安易に記事にしようものなら、プライバシーの侵害になるか、個人情報保護法違反になるかのどちらかになるため、迂闊に記事にすることもできない。
 だから、警察に会社の裏事業がバレても、しょせん、
「殺人事件の捜査上の秘密」
 というだけで、その内容が表に出ることはない。
 逆に警察に知られるだけの方が、一番安全だとも言える。
 そこまで各務原は計算していた。彼はさすが会社で参謀を務めるだけの頭の回転が早いと言ってもいい。先代が見込んだだけのことはあるのだが、社長も各務原の実力は高く評価し、彼を少しでも自分の陣営に取り込むことで、いずれは先代色を一層し、
「自分の会社」
 として、まわりからの目である、
「世襲」
作品名:殺意の真相 作家名:森本晃次