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主犯と共演者の一致

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 この街でm密かに違法薬物が出回っているのは、大曾根の会社が、流しているというウワサがあった。しかし、それは実際にはありえないことだった。数十年前ならいざ知らず、今のようなちょとやそっとでは傾くことなどありえない大曾根製薬で、いまさら何を違法薬物などを使用しなければいけないというのか、誰が考えてもありえないことだった。
 しかし、ウワサというのは恐ろしいもので、あたかも当然のことのように独り歩きを始めた。デマであることに気付かない、いわゆる「バカ」と言われるような人もいるのかも知れない。
 あれはいつのことだったか、大曾根製薬とは何のかかわりもない反社会的な集団同士が、まるで大曾根製薬が製造している違法薬物を巡って、抗争を続けたことがあった。
 もちろん、大曾根製薬には何ら関係のないことなので、大曾根製薬が自分から動くなどということはしなかったが、構想が激しくなってしまい、その煽りを気って、構成員が殺されるという事件が起こった。
 お互いに報復も欧州が行われていた時期のことで、最初はちょっとしたことだったものが、命の奪い合いにまで発展したことで、さすがに大曾根製薬も黙っていられなくなった。
 元々大曾根製薬は、警察に協力的で、違法薬物んなどは扱っていないということは、誰よりも警察のメンツの方がよく分かっていた。その話は門倉たちの殺人課の上にまで知れ渡っていたので、大曾根製薬が警察には協力してくれることは分かっていた。
 上野刑事が操作を続けるうちに、やはりというか、当然というか、岡崎静香と大曾根恭三との仲が分かってきたのだった。
 とにかく麻薬も絡んでいる事件なので、大曾根恭三という人物の話は、薬物捜査員に前もって聞いておいた、おおむね大曾根製薬に怪しいところはなく、大曾根恭三本人も、殺人までは分からないが、麻薬関係では無関係だと言っていた。そもそも、彼はどうやら最近まで自分の会社が違法薬物を取り扱っていることを知らなかったようだ。
「本当は社長に就任された時に、すべてを話すべきだったんだが、話をしようという顧問の意見を押し切って、わしが、もう少しまってほしいとお願いしたんだ。彼らを恨まないでやってくれ」
 と父親からそう言われれば、どうしようもなかった。
 父親はさすがに年を取ったということだろう。麻薬のような一番大切なことをしばらくの間、社長である自分に話さないようにお願いしたということは、父親として、少しでも長く尊敬される父親でいたいと思っていたのかも知れない。それを思うと大曾根恭三は、自分も年を取ればあんな風に不安に感じるようになるんだろうことを感じていた。
 社長である大曾根会長の息子にしては、真面目で悪を許せないところがある恭三が、何も揉めずに社長に就任したと聞いた時、警察の麻薬捜査員たちも不思議だった。なるほど、知らないのであれば、それも無理はない。そのあたりの事情も警察では把握はしていた。
 麻薬捜査員たちも、大曾根恭三が何も知らないはずだということを吹き込んだが、どこまで門倉や上野が信じるのか、疑問であった、
 しかし、二人の性格も分かっているだけに、大曾根恭三と直接会えば、二人は彼の人間性を理解してくれるに違いないと思ったのだ。
 麻薬捜査員たちも、もう大曾根製薬がほぼ麻薬から手を引いているのを分かっている。そういう意味で、いまさら息子に話をすることがおろかなことに思えたのも無理もないことだろう。
 問題はデマやウワサを信じ、今でも大曾根製薬が薬物を取り扱っているということを、真剣に信じて売るという団体があるということである、
 きっと今頃大曾根恭三は、
「うちの会社では、もう違法な薬物は取り扱っていないんだ。何も恐れることはない」
 と考えていた、
 せっかくクリーンなイメージの製薬会社ができあがっていて、危険を冒してまで麻薬に手を出さなければいけないような貧困している会社でもない。
 しかし、岡崎静香の交際用の住所録が、彼女お部屋にあったが、その中に書かれていた、
大曾根恭三という名前を発見した時、最初に見つけた上野刑事は、すぐに麻薬を線として、大曾根恭三と岡崎静香が結び付いていると、すぐには理解できないでいた。
 大曾根恭三という大金持ちがいるというのは分かっていたが、あくまでもある企業の二代目社長という意識があっただけで、その業種にまでは頭が回らなかった。
 大曾根恭三という男と、以前どこかで会ったことがあるような気がしていた門倉刑事だったが、どうにも思い出せない。
 しばらく考えてから、
「そうだ、父親の大曾根氏から、まだ大曾根氏が社長だった時、息子だと紹介されたことがあったっけ」
 そう思うと、大曾根氏自慢の息子は、二代目社長にありがちな、目立たないタイプの人ではあったが、
「自分は初代社長とは違うんだ」
 という意識が強い。
 自分が社長に就任すると、まわりに臆してしまうということが分かっているからなのか、絶えず去勢を張っているように思えてならなかった。その目には、
「警察にだけは臆してはいけない」
 という思いがあるようで、まわりの人間で一番近づけない相手が警察関係の人だということを感じていたのだ。
 今回の事件で、本当は大曾根恵三が表に出てはいけない。そうなってしまうと、犯人の思うつぼだからだ。だが、この事件関係者のほとんどはそんなことは知らない、第二の殺人で、岡崎静香が死んでしまったことで明るみに出てしまった。そういう意味でも、この事件の犯人は、岡崎静香が死んでしまったことは計算外だったのだろう。

              死ななくてもよかった人

 岡崎静香が死んでしまったことでクローズアップされてしまった大曾根恵三であるが、大曾根は静香が殺されたことで、いずれ自分のところに捜査員がやってくることは想像していた。
 しかし、彼女とは肉体関係もなければ、彼女を殺す理由もない。確かに彼女にお金を与えてはいるが、それは自分の精神的な癒しと彼女の精神的な癒しが結びついただけのことで、それ以上に知られたくなかったのは、自分の不倫相手の存在だった。
 もっとも、静香が殺されたことと自分がまったく関係ないのだから、自分の不倫相手と静香が関係あるわけもなく、いくら警察で、
「これは殺人事件の捜査だから」
 と祝えても、彼女のことを口にすることはできないと思っていた。
 そのそも口にできるだけのことは知らない。自分から彼女の連絡先も知らないのだし、彼女には迷惑を掛けないという約束だったこともあって、決して彼女を警察に話すわけにはいかなかった。
 門倉刑事も、少々のことは課長から話は聞いていた。大曾根という男は、社長ではあるが、横柄な態度を取るような男ではなく、常識をわきまえた応対をする人であるということ、だから、こちらが誠意を示して応対すれば、こちらの得たい情報は普通に得られるだろうということだった。
 一番怖いのは、彼のような常識人に対して、警察権力をひけらかして、あからさまに抑えつけようなどということをしてしまうと、却って反発されるということだった。バネガ反発する理屈と同じことである。
作品名:主犯と共演者の一致 作家名:森本晃次