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主犯と共演者の一致

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「まあ、普通の死亡であれば、いわゆる死亡推定時刻をごまかすような細工が施されていなければ、死後二日や三日で、そんなに死亡推定時刻の幅が広がるということはないような気がしますね」
 と、鑑識主任は言った。
「ところで、凶器はあの短刀に違いないんだろうか?」
「それは間違いないように思います。
「死亡推定時刻だけど、二日前のいつ頃のことなんだい?」
「そうですね、二日経っていますので、ハッキリとは解剖の結果を待たないといけないと思いますが、昼から夕方にかけてくらいではないでしょうか? それともう一つきになるのを発見したんですが」
 と言って、門倉刑事と上野刑事を被害者の下に連れていった。
「ここをご覧ください。
 と言って、鑑識主任は被害者の長袖のシャツをまくって、腕の内側を見せた。
「ここをご覧ください」
 と言って、静脈のあたりが紫色に変色しているのを示した。
「麻薬中毒者か?」
「そういうことでしょうね。でも、こんな目立つところに注射の痕があるということは、この人は立場的になのか、簡単に麻薬をやっているなどと、まわりから疑われることのない人なのかも知れませんね。それなりの一定の地位のある人だったり、普段から犯罪とはまったくの無関係に見える人だったりと思うんです。それを思うと、我々もやるせない気持ちになるんですけどね」
 と、ため息交じりに鑑識主任は答えた。
「まったくですね。我々も、肝に銘じておかなければいけないことだと思っています。もっとも捜査一課とは若干畑違いですがね」
 と、自分たちが殺人課であることを強調した。
 しかし、どうもおかしなものだ。この間のラブホテルの被害者も、媚薬と称して麻薬をやっていたのが判明したばかりではないか。このままこの二つの事件に関連性がないということになれば、ただの偶然ということになり、そんな偶然が続くはずもなく、偶然が続くほどに、麻薬という者がこの街に蔓延しているということになる。殺人事件の捜査も大切だが、麻薬捜査の方もしっかりしてほしいと願う門倉刑事だった。
 被害者の指から採取された指紋は早々に署に運ばれて、科捜研の方で、指紋の照合がなされ、やはり門倉刑事の睨んだ通り、ここで発見された被害者の指紋が、ラブホテルの数か所に残されていた指紋と一致したようだった。その報告を受けた門倉刑事は上野刑事に向かって、
「どうやら、ラブホテルの殺人と、こちらの殺人事件がつながったようだね」
 というと、
「ええ、そうですね。でも、そうなると、ラブホテルで女を殺した犯人が、それからすぐにナイフで刺されて殺されたことになりますね。しかも、殺害現場は特定されていないわけですよね」
「そういうこだ」
 と二人は、課長に報告し、ラブホテルでの殺人事件がいわゆる
「連続殺人事件」
 であったということが判明すると。
「じゃあ、最初に殺されてマンションで発見されたあの死体もその一環ではないですか?」
 と上野刑事がいうと、
「その可能性は強いカモ知れないな。ラブホテルの殺人とはあまり共通性はなかったが、今回の建設中のマンションの場合とは、犯行の共通性があるような気がするんだ」
「というと?」
「まず、死体の発見のさせ方だね。最初の事件はお湯を流し出すことで、発見を促したが、今回は通報というやり方が違うだけで、犯人にとっては、予定の時間に発見させたかったと考えるとそこに共通性が見られる。そして、さらに死亡推定時刻をごまかそうという意図の有無は別にして、それぞれに少しでもごまそうとする意志が感じられないかい? 今回の事件で二日も経って、やっと発見させるような通報をしているんだからね」
「そうですね。まるで三段論法のようだ」
「三段論法?」
「ええ、AとBは関係がある。BとCも関係がある。だから、AとCにも関係があるのではないかという考えですね」
「なるほど、上野君のいう通りかかも知れないな」
 と、門倉刑事も納得していた。
 最初はまったくの別々な事件に思われていたものも、実際に重なってくると、そこには隠そうとしても隠し切れない事実が存在する。そんな場合は、敢えて隠そうとするのではなく、事実を真実として思い込ませるのが一番なのかも知れない。
 一筋縄ではいかないと思われた今回の犯罪だが、ある程度まではスムーズに事件解決に向かうように見えるだろう。だが、ある程度まで行けば犯罪の絡み合った糸があと少しのところで窮屈な洞窟を出ることも入ることもできず、ちょうど上がるためのダイスの数字を引くことができず、ずっと抜け出すことのできない状況を作り出すに違いない。

               連続殺人

「今回の三つの殺人のうち、第二に起こったラブホテルの殺人事件と、第三に起こった建設中のマンションに放置されていた殺人事件の関連が見えてきたことから、連続殺人と思われるので、この二つの捜査をまず統合させることにして、並行して、第一の殺人との関連を探っていきたいと考えます。第一と団参の殺人も関連性があるとみている人も多いと思います。どこか類似したところが散見されるからです。特に死体発見において、最初はお湯を流しっぱなしにしたこと、そして第三件のも殺人では、今度は大胆にも交番や捜査本部に電話を掛けて、死体を見つけるように仕向けています。どちらも、発見時間を特定させたいという意図があったのではないかと考えられる」
 と、門倉刑事は捜査本部で、そういった。
「少し補足しますが、第二のラブホテルと、第三の建設中のマンションで死体が発見された二つは、正式に連続殺人として、戒名を、「ラブホテル、建設中マンションでの連続殺人事件」 とすることで、一本化が決まった。理由は皆ご存じの通り、第三の被害者となって男性の指紋が、第二の被害者と同じ部屋にいた男性のものと一致した。ホテルでは、前の客が出れば、コップなどの消耗品以外のものは新しく用意されるので、そこに残っていた指紋から摂られたもの、そして実際にゴミ箱にあった歯ブラシなどからも摂取できた指紋にも同じものがあったので、間違いないだろう」
 と課長がそういった。
「でも、指紋を残していくなんて、少し間抜けな犯人なんでしょうか?」
 と捜査員の一人がいうと、
「だけど、ドアノブやベッド周辺の指紋はふき取っているんだ。ひょっとすると、歯磨きをしたことなどは忘れていたんじゃないかな?」
 と上野刑事がいうと、
「それに関しては、第二の被害者の女性も、その犯人と思われる第三の被害者である男性も、極度の麻薬常習犯であったことが分かっている。ひょっとすると、第二の殺人が、突発的なもので、頭の中がパニックになっていたとすれば、指紋を少々拭き忘れるくらいは仕方がないかも知れない。確かにあの部屋で羞恥プレイに耽っていたのは間違いないようで、そのために、女は媚薬と称する麻薬を使用していた。この場合は注射ではなく、経口薬として、口から投与していたかの脳性がある、注射器などはその時の彼女の持ち物から発見されていませんからね」
 と、門倉刑事が言った。
「じゃあ、犯人も麻薬を使用していたんでしょうか?」
 という質問に、
作品名:主犯と共演者の一致 作家名:森本晃次