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カップ

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さてと、ボクは、また記憶を解放して 万年筆を走らせ始めた。良い調子だ。キミが居るだけでこんなにも進む。いや 進むはずなのだが 手が止まった。もう少しなのに。やっぱりボクの万年筆もボクと同じ気持ちのようだ。キミを背中で伺っている。

香りが ボクの所まで漂ってきた。
食器棚の扉が開けられ、陶器の触れ合う音が小さく響いた。
あの音はきっとあのコーヒーカップだろう。お揃いなんて恥ずかしいと思っていたけど 案外2ピース並んでいることで落ち着くものなのかもしれない。
ミルクたっぷりな珈琲を好むキミ。やや大きめのコーヒーカップが気に入ったとキミが言うからボクは買ってしまったキミの分。その翌日、開店の時間を待ってまで買ってしまったボクの分。並んだカップを見つけたときのキミは 何か言いたげにしていたけど 可愛らしく頬が膨らんだだけだった。もちろんその膨らんだ頬は ボクの平手に挟まれて萎んだ。

突然、闘争する猫ですら出さないような声とともに キレイな陶器の割れる音がした。
「怪我はない?」
輪の付いた椅子が壁まで届く勢いでボクは立ち上がり キッチンへと向かった。
「だ、大丈夫だけど、ん。ん。ん。どうしよう…」
「どこか打った? 破片飛んでない?」
どうしてこういう時は 疑問符ばかりで話すのだろう。
「お部屋戻って続けて… ここは大丈夫… にゃ」
キミが動揺しているのが よくわかる。いつもの ニャン語がほとんどでない。これは大変な事だとボクは思った。 
キミを安心させることは… ことは… ことは…?

キミが 床に屈んだ。キッチンの台に乗っているのは ボクのコーヒーカップ。ということは キミが屈んで拾っているのは キミのコーヒーカップだね。 拾う破片の傍にポタリを落ちた透明な雫にボクの目は釘付けになった。

作品名:カップ 作家名:甜茶