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ミソジニー

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不気味な色の柄のシャツとグラサンをかけた40、50代くらいの大柄の男が突然窓の向こう側から怒鳴り散らしてきた。
ドンドンと後ろ側のドアをもう一人の男が叩いてきた。
もう一人はまるで死骸をつつく烏のような薄気味悪い黒づくめのスーツを着ていた。
「おい、何黙っとんじゃこら。はやく出てきやがれ」
ドンドンと窓が震えるくらい強く叩いてくるので俺たちはとたんに怖くなってきた。
俺と先生は仕方なくドアをゆっくりと開けて外に出た。
すると突然グラサンの男の方が俺の胸ぐらをつかんできた。
「おい、お前ら何急に飛び出してきてんねん。殺す気か・・・」
俺はおっかなくなってその場で金縛りにあってしまった。
「あ・・・あの・・・」
先生もびくびくと幼い少女のように震えていた。
「車の横脇に傷が残ったで。サイドミラーもぶっ壊れてもうたは。どないしてくれんねん。」
俺は何か言おうと思ったが、胸ぐらを勢いよくつかまれたせいでうまく言葉が出なかった。
「すみませんでした」
先生は二人の男の前で頭を下げて大急ぎで謝った。
ちょっと・・・先生何で謝るんだよ。
飛び出してきたのは向こうだろ?
「壊れたサイドミラーどないしてくれんねん?」
また黒ずくめスーツの方の男がそう言ってきた。
「あの・・・どうすればいいでしょうか?」
先生は縮こまるように震えながらそう聞いた。
先生がそう言うと、グラサンの男が俺から手を離した。
「そうやな・・・弁償や・・・金出せ」
「おいくらですか?」
先生がそう聞くと
「100万や・・・」
男はそう言った。
これって・・・ゆすりじゃないのか?
高校生の俺でもそれくらいすぐにピンときた。
しかも100万なんて明らかにぼったくりだとすぐにわかった。
穏やかな先生もさすがにそれには納得いかないようだった。
「それは・・・いくらなんでも高すぎます」
すると黒ずくめの男の方が突然怒り狂ったように怒鳴り散らしてきた。
「はー?何寝言ほざいとんじゃこら。こっちはあやうく死ぬところやったんやぞ。命かかってたんや。100万くらいで何ふざけたこと抜かしとんじゃボケ」
まるでヤクザだった。
「でも・・・そちらにも非があったわけですから・・・こういう場合は警察とか保険会社にまず相談するのが・・・」
先生は怖くてびくびくしながらもそう反論した。
グラサンの男の方も先生に怒鳴り散らすように叫んだ。
「はー?警察?何抜かしとんねん。この車保険入ってないんやぞ。払うならそっちやろ。後、ここ山奥やから携帯で電話なんかできへんぞ。」
先生は目の前で怒鳴られて怖くて目をつむりそうになった。
しかしその後、先生はスマホをハンドバッグから取り出して携帯を見てみると、確かに電波の本数が全く立ってなかったことに気づいたようだった。ここはそれほどまでの遥か山奥だった。
「でも・・・じゃあ・・・後で連絡して・・・」
先生がそう言いかけると
「はー後で?何悠長なこといってねん。今すぐ金出せや・・・こっちは危うく死ぬところやったんやぞ」
「今すぐは払えません!」
「出せや!」
黒づくめの男がまた怒鳴った。
先生は怖くて縮こまっていたが、その恐怖に何とか必死に耐えているようだった。
俺はもう我慢できなくなって自分でもわけがわからないくらい急激に頭に血が上ってきてしまっていた。
「ふざけてんのはお前らだろ。百万ってなんだよ・・・ボッタくりだろ」
俺がそう強く言うとまたグラサンの男が俺をギラっと睨みつけてきて、その後またもや胸ぐらをつかんできた。
「何ほざいてんだこのガキは。何も知らん糞ガキの分際で何大人に立てついとるんや。あやうく死ぬところやったんやからそれくらい出すのが常識だろが」
また俺は苦しくなって口から一言も言葉が出せなくなった。
「はよ出さんとぶん殴るぞ。顔面傷だらけにするぞ。その顔めちゃくちゃにされたいんか?どうなっても知らんぞ」
先生は突然あわててこう言った。
「もういいです!100万ですね?お支払しますから!もう許してもらえませんか?」
グラサンの男は俺の胸から手を離した。
男たちは安心したかのように少しだけニヤっと笑ったように見えた。
「ですが、今この場では払えません。車で山を下りて銀行からお金をおろしてからでないと無理です。」
先生がきっぱりとそう言うと男たちはまた不機嫌そうになった。
「今すぐは・・・無理?」
しばらく間が空いた後にグラサンの男がまた恐喝するかのように突然怒鳴りだした。
「ふざけてんのかこら。今すぐ出せや」
完全にヤクザのゆすりだった。
警察には電話がかけられないし、周りには人がまったくいなく助けを求めても無理だった。俺はもうどうすればいいのか分からず思わず男たちに向かってその場で叫んだ。
「100万なんて現金今すぐに払えるわけないだろ。山を下りてからって言ってるだろ。ちゃんと払うって言ってんだろ」
俺がそう男たちに立てつくと
グラサンの男がまた俺の胸ぐらをぐっとつかんできた。
「またこのくそガキが。大人の社会のルールも知らんガキが何一丁前に大人に口答えしとんじゃ。なめとんのか。しばくぞこら」
よく見ると男の袖の入り口の隙間から、肩から腕にかけてうっすらと刺青のようなものが縫ってあるのが目に入ってきた。
俺は思わず背筋が凍ってしまうほど怖くなった。額や手からはじんわりと冷や汗が出てきて、足が少しだけがたがたと震えてきた。
「もうやめてください!」
先生が大きな声で叫んだ。
「あ、そうだ」
突然グラサンの男が
「金ないんなら、その美人の姉―ちゃんに払ってもらわんと」
何を思いついたのか突然頭のいかれたようなことを言いだした。
そうすると黒ずくめの男の方が急に先生に手を出してきた。
「ちょっと・・・何するんですか?」
黒づくめの男の方が先生を抱き寄せて無理やり襲おうとした。
「今すぐ金払えんのなら体で払えや」
そして先生を押し倒して無理やり服を脱がそうとした。
「キャー」
先生は思わず叫んだ。
俺はもう見てられなくなって、グラサンの男の手を振りほどいた。
「ふざけんな、何すんだよ」
俺は我を忘れて、気がついたときには黒づくめの男を後ろからぶん殴っていた。
黒づくめの男は少しだけ遠くに吹き飛んだ。鼻から少しだけ血が出ているようだった。
「何すんじゃこのくそガキが」
男は反撃するかのように俺にタックルをかましてきた。
思わず俺は吹っ飛んで仰向けのまま道端に倒れた。男は突然マウンティングするかのように俺に上に乗りかかってきた。
そして男は俺を抑え込んだ後に、俺の顔を何度も強烈に殴ってきた。
ビシバシと強打してきた。
「なめてんじゃねーぞこら」
その野蛮で容赦ない殴打は痛いなんてもんじゃなかった。
まるでボクサーか喧嘩のプロがするように高速スピードで動き、ものすごい強烈で重たいパンチだった。
喧嘩なんて普段したこともない俺にはちょっとやそっと我慢しようとしたくらいじゃとうてい耐えられないほどの激しい痛みだった。
「ちょっとやめて!」
先生は出しなれてない大きな声を精一杯上げながら後ろから男を止めようとした。
「邪魔や!」
黒づくめの男は先生を手で押し倒してまるで物を扱うかのように地面に吹き飛ばした。
「きゃ」
先生は叫んだ。
作品名:ミソジニー 作家名:片田真太