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ミソジニー

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そして手を握ったまま先生は俺の方へ肩を寄せてきた。
「私も・・・」



その夜、俺は先生の家に泊まった。
二人で意向を確認しあったわけでもなんでもなく無意識のうちにそうしていた。
ベッドの上で俺と先生は一心不乱に裸のまま激しく抱き合った。それは何とも切なく哀しく、そして嬉しい瞬間だった。
俺は先生の体中を何度も何度も繰り返し愛撫した。少しの隙間も許さないくらいひとつひとつ丁寧に愛撫した。先生は思わず小さな声であえぎ声を漏らした。
「竹井・・・くん」
先生は小さな声で俺の名前を呼んだ。
「先生・・・」
俺も先生と呼ばずにはいられなくなった。
そして、俺と先生はそのまま体ごと結ばれた。

「俺は・・・生まれて初めて女性を好きになった。そして愛した」



しばらく俺と先生は裸のままベッドの上で仰向けになった。
「竹井君・・・?」
「何、先生?」
「竹井君のこと・・・下の名前で読んでいい?」
俺はしばらくボーっと考えた後に
「うん・・・いいよ」
と答えた。
「よかった・・・」
「俺も・・・先生のことそう呼んでいい?」
先生はにっこり微笑んで
「うん・・・いいよ」
と言った。
始めて愛した人は年上で、しかも大人の女性だった。
でも、そんなことはどうでもよかった。
愛している人がいればそれ以外のことなんてどうでもよかった。
ただその人が愛おしい。
この世にそんな感情があったなんて俺は知らなかった。


夏休みの間中、俺と先生は積極的に色々なところへ二人きりで出かけた。
公園を散歩したり、映画を見たり、動物園に行ったり・・・
全ての時間が愛おしかった。
「蒼太君って・・・いい名前よね」
「何で?」
「何か蒼くて透き通っていて、汚れがないみたいな」
「何だよ、それ。」
「褒めてるのよ。純粋だってこと。私なんて真由美だもん。何の変哲もないし面白くもなんともない。名前を考えた両親を恨むは」
「別にいいじゃん。俺は先生の名前好きだよ」
「何で?」
「別に・・・何でも・・・」
「何よそれ。答えになってない」
「いいじゃん別に。好きなんだから」



この夏はすべてが愛おしかった。こんなにも生きていて素晴らしいと思える日々はなかった。
そして、そんな愛に溢れた夏休みも終わり二学期が始まった。

学校へ行くと明らかに前とは様子が変わっていた。
変な噂が流れていた。
何やら俺と先生が愛人関係にあたるということで、校内で問題になっていた。真由美先生は職員室に呼ばれていた。
教頭を含め職員会議が開かれ、そこで先生は厳しく問いただされていた。
「一体どういうことですかこれは?」
先生は教頭に厳しく追及されていた。
「別に・・・そんな・・・」
先生はとっさに何のことだか分からず動揺しているようだった。
「私はただ彼のいじめの問題について相談に乗っていただけです」
先生は問題を大きくしないようにとっさに嘘をついているようだった。
「じゃあこれは何ですか?写真が校内中にばら撒かれてるんですよ?一体何なんですかこれは?」
そう言って教頭は何枚ものたくさんの写真をテーブルにまき散らすかのように置いた。
その場にいた他の教員たちもまるで汚いものを見るかのようにその写真の方に視線を向けた後に、お互いに薄ら笑いを浮かべて目を見合わせた。
そこには俺と先生が学校内の色々な場所で会っているものから、はたまた夏休みに水族館や動物園などあらゆる場所で二人きりでデートしている様子が撮られていた。
「これでも言い逃れするのですか?」
「それは・・・」
教頭は続けて話した。
「いじめの問題を相談に乗るだけでなぜ、水族館やら動物園やらに生徒と行く必要があるのですかね?」
「それは・・・」
教頭に立て続けに責めたてられて先生は何も言えなくなってしまった。
「とにかく・・・これがもし事実ならあなたの退職処分を考えないといけなくなりますよ。もちろん竹井君も停学処分になりますが」
「ちょっと待ってください。これは本当に相談に乗っていただけです。ちょっとだけ深入りしてしまったといいますか・・・彼とあまりにも仲がよくなり過ぎてしまったもので、相談に乗りつつ色々なところに二人で行っていただけです。本当に何にもないんです」
処分という言葉に納得がいかなかったのか真由美先生は途端に激しく抗議し出した。俺は先生のことが気になって職員室の外からその話を聞いていた。俺は内心ではもういてもたってもいられない気分だった。
「それはいくらでもそう言い訳なんかできるでしょう」
「言い訳なんかじゃありません。本当にそうなんです。信じてください」
先生が必死にそうお願いすると
「まあ・・・聞くところによれば、今回の彼のいじめ問題について言いだしたのもあなたらしいじゃないですか?これはあれですかね?・・・彼のいじめの相談に乗ると偽って、初めから生徒と肉体関係になりやすくするための口実だったのですか?」
教頭が突然とんでもないことを言いだし始めた。
俺は拳を握りしめてしまうほど怒りが込み上げてきて今にも職員室に入って教頭に殴りかかりたかった。
「ちょっと待ってください。そんなことあるわけないじゃないですか?何で私がそんなことしなきゃいけないんですか?」
先生は根も葉もないようなことを教頭に言われてショックを受けたみたいでそう反論した。
「じゃあ、他の生徒の言い分はどうなるんですか?彼らはいじめなどやってないとはっきりと言っています。あなたは、その愛人関係にあたる竹井くんの言うことだけ信じるって明らかにおかしくないですか?何で他の生徒のいうことは信用してあげないんですか?その時点でおかしいでしょう。やはりいじめの問題はでっち上げなのでしょ?」
教頭は先生の意見など一切聞かずにまるで初めからそう決めてかかっているみたいだった。
「でも、実際にいじめはあるんです。本当なんです」
「じゃあ証拠は?あるんですか?」
「あります」
「どんな?」
「どんなって・・・いたずらされた紙の落書きとか・・・」
「そんなものは証拠にならないでしょう。自分で書けばすむことですから」
「何で・・・そんなこと言うんですか?れっきとした証拠じゃないですか・・・」
真由美先生は何を言っても意見を曲げない教頭にショックを隠しきれない様子だった。
「まあ・・・とにかく・・・はっきりとした証拠がなければ生徒たちには罪は問えないし、教育委員会にも言えないんですよ。世間的に問題として取り上げるからには、証拠がないと」
これが学校側の本音だった。証拠がなければ、と言うが、実際は大っぴらに問題にしたくないのだ。世間にいじめ問題が発覚すれば学校側の責任問題になりかねないし、そうなると学校の評判が落ちることは到底避けられない。下手したらマスコミで発表されてしまう可能性だってあるし、そうなれば最悪、経営問題に関わる。だから、教頭はうやむやにしたいのだ。そして、写真を根拠にすればいくらでも言い逃れができる。生徒と肉体関係にあるような教師の言うことなど世間では誰も信用しないからだ。
「とにかく・・・このデートの写真はあなたが生徒とそういう関係にあったことの明らかな証拠なので、職員会議の議題で取り上げさせてもらいますよ。」
作品名:ミソジニー 作家名:片田真太