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ミソジニー

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「そんなこんなで何もかも嫌になって高校は地元じゃなくて遠く離れた女子高を受験したの。自分のことを誰も知らない上に、男子がいない方が安心して学校に通えると思って。入ったきは本当にほっとした。これでやっと平和な学校生活が送れるって。でもね・・・そんな気持ちは一瞬で消え去った。そこでもまた試練が待ち受けてたの。入学早々そのことに気が付いた。女子高ってね、みんな女の子たちが彼氏を作るのに本当に熱心なのよ。普段女子しかまわりにいないもんだから、高校生なのにこっそり合コンに行ったり他の男子校の学園祭に顔を出したりね。とにかく積極的な女の子が多かった。ませた子なんかは大学生とか会社員とかと付き合ったりなんかしていた。それである日ね、いつも仲良くしていたグループの友達の子たちと昼ごはんを食べながら彼氏の話とかで盛り上がっててね。いつもは私は聞く側で話をほとんど聞いてるだけで、そういう話題があってもそしらぬ顔をしてうまく切り抜けてたの。とにかく小学校の頃みたいに孤立するのだけは嫌だったから。でも、その日はその子たちが週末に彼氏たちとデートしたとか、ドライブに連れてってもらったとかそんな話をしててね。それで急に私に『片瀬さんも年頃なんだから彼氏つくりなよ?』って話を振られてね。いつもは何となくで話をそらすんだけど、ある一人の女の子が『いやね、片瀬さんに彼氏がいないわけないじゃない?いつも話をはぐらかしてるだけだってば。こんな美人に彼氏がいないわけないじゃない。』って。そういってみんな『何だそうかー』って笑うの。まるで軽い冗談話みたいに。でも、それで私は男性不信だなんて話を全く切り出せなくなっちゃって。それに、そんな話をしたらちょっと変な子だって思われちゃうかなって。それで私もつい『そうなの』って笑いながら返しちゃったの。そしたら『えーやっぱり片瀬さん彼氏いたんだ。』って話になって。『じゃあ今度紹介してよ。みんなで一緒にカラオケとかにでも行こうよ。』って話になっちゃって。それで私もつい『いいよ』って言っちゃって。それでついに話をごまかせなくなって。今思えば本当バカだった。そんな話になってしまって、カラオケの約束の日が迫ってきて、ついに私は我慢できなくなって・・・。そして嘘をつくことにした。実は、彼氏は遠い場所にいてすぐには会えないんだって。そんな見え透いた嘘すぐに見破られるかなって思ったけど、みんな案外すぐ信じちゃって。『それなら仕方ないわね。』ってことになって。でもせっかくみんなうきうき気分で楽しみにしてたのに、急に雰囲気的に冷めちゃって。それで、その子たちとは次の年になったら違うクラスになっちゃったせいもあってあまり話さなくなって・・・次第に仲良くなくなっちゃった。今思えばみんなは下の名前で呼び合っていたのに、私だけ『片瀬さん』って呼ばれてて、私だけ浮いてたのかな。多分向こうも変な子だなって思ってて無理に付き合ってたんだと思う。そういうことがあって・・・その後の高校生活も友達なんか作るの面倒だって思って・・・それからはずっと一人でいた」
先生はそこまで一通り話し終えるとまた一息ついた。
先生は普段は比較的無口だったが、今はマシンガンのごとく会話が止まらないといった感じだった。たて続けて自分の話をしている。まるで自分の嫌な思い出をすべて吐き出して今すぐにでも過去の記憶と決別したいかのようだった。
「何かお腹すかない?軽くケーキでも頼もっか?」
先生は俺に勧めるようにそう言った。
俺はお腹はすいてなかったから「いいえ、大丈夫です」と言って断った。
そんな目先のケーキのことなどより先生の過去の話の続きの方が何倍も気になってしまっていた。

「異性を信じられない」
俺と・・・同じなんだ。

「ごめんね・・・こんな話。退屈でしょ。べらべら私ばっかりしゃべっちゃって。」
と先生は気恥ずかしそうでもあり申し訳なさそうでもある、そんな曖昧な表情を浮かべていた。
「いいえ、そんな・・・」
とっさにそう曖昧に言ったが、その時は本当にもっと先生のことが心の底から知りたくて仕方がなくなっていた。そして、それが本音だった。
「そう・・・それならいいけど」
先生はまた話の続きを始めた。
「えっと・・・どこまで話したっけ・・・あ、そうだ。高校の話ね。それで、高校はそのまま何事もなかったかのように一人で過ごして、そして大学受験の季節になってね。私はそこまで頭もよくなかったし、そこそこの大学に行かれればよかったし。やりたいことも特になかったし、でも英語だけはなぜか好きだったから英文科に行こうと思ってね。その頃は英語教師になろうなんてことまでは考えていなかったのだけれど。それでね、大学も最初は男性のいない女子大に行くつもりだったんだけど、女子高での出来事もあって、もう気にせず共学を受験することにしたの。多分どこにいっても同じなんだってことに気づいたから。それに何よりもこのままじゃまずいって思って・・・男性不信を克服しなきゃって思って。このままじゃ一生恋愛もできないし、結婚なんて到底無理だって。それで都心にある英文科のある大学を受けて晴れて受かって通うことになったの。
3年も女子高に通っていて久しぶりに男性をキャンパスで初めて見かけたときはちょっとだけ緊張した。でもこれからは頑張って男性不信を克服して楽しい大学生活を送るんだってはりきってたの。最初はね・・・。それで、大学入学の後、しばらくはサークルの勧誘とかってそこら中でやってるんだ。でも、男性が勧誘してくると何だか緊張してしまって、ついつい断ったりしちゃって。でもね、1週間くらいしたある日ね、大学のキャンパスで櫻井さんっていうある男性がテニスサークルに勧誘してきたの。最初は怖かったのだけど、その人と話してると何だかとっても不思議な気持ちになってね。気持ちが軽くなるっていうのかな。とても穏やかで優しい人で、何となくだけど話してるだけでそういうのが分かった。
それで、この人なら大丈夫だって思って。思い切ってそのサークルに入ることに決めたの。テニスなんてやったことなかったけど、その人は親切に教えてくれたしとっても楽しかった。入学すると春にみんなキャンプに行ったりして。とても楽しかったは。それでね・・・私は何だか分からない感情に襲われて。男性を好きになったことなんてなかったから初めての感情で動揺してしまったの。まるで思春期にやり過ごしてきてしまったことを大学生になって初めて経験してしまったかのようで。恥ずかしいけど、それが事実だった。まるで生まれて始めて少女になった気分だった。それでね、自分はやっと男性不信を克服することができたんだって途端に嬉しくなったの。自分の初恋の感情が嬉しくて。何より恋をすることができたことが嬉しくって。それでね、自分の気持ちを彼に伝えようと思ったんだ。振られてもいいからダメもとでって。今思えば先走りし過ぎてたんだけどね。でも嬉しくて自分の気持ちを伝えないわけにはいかなかった。それでね、ある日大学のキャンパスで彼を見かけてね。それで、私は彼の方に向かっていって声をかけようとした。そして自分の気持ちを伝えるんだって決心して」
作品名:ミソジニー 作家名:片田真太