小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

泡の世界の謎解き

INDEX|8ページ/26ページ|

次のページ前のページ
 

 車を止めた駐車場は、川のすぐそばにあり、川の向こう側には、大型商業施設が見える。ホテルも一緒になった商業施設でもあり、朝は閑散としていると思いきや、家族連れだったり、カップルなどが多かった。
 どうやら、外人たちのようだった。
「外人どもは朝が早いからな」
 と、同僚のスタッフが言っていたが、それを聞いて、早朝勤務の時のお約束の後継なので、思わずうなずいていた。
 駐車場もほとんど車もなく、無人駐車場なので、カギを閉めてから、すぐに表に出ると、メイン国道の横の歩道を、まずはコンビニを目指した。
 少し歩くと、コンビニの明かりが見えてきて、このコンビニの色である、白と青のコントラストが、真っ暗な街を照らしているのだった。
 オレンジジュースと、アンパンとメロンパンを買い込み、いつもの買い出しを終えると、あとは店まで少しだった。
 コンビニが角にあるので、そこを左に曲がって、二つほどビルを通り過ぎると、表に、お店の宣伝の看板が光っていた。
 このビルは雑居ビルなので、数軒のお店の宣伝がされている。そのうちの一つが、彼の店であった。
 いつもように、何んら意識をすることなく、ビルの入り口を入っていくと、そこの奥には、一つ店舗があって、当然のごとく閉まっているが、その右手には、二基のエレベーターがあった。
 節電のためか、動いていないものは、明かりが薄暗いが、上の矢印ボタンを押すと、ちょうど一階に待機していたエレベーターが開いたのだ。
 これもいつものことだが、そのエレベーターに乗り込んで三階のボタンを押した。彼の店は三階にあるのだった。
 三階に降り立つと、目の前に、緑色の大きなバックが、三つくらい置かれている。バッグにはタグが嵌められていて、その様子はクリーニングのようだった。
 三階には、もう一軒お店があり、その店のクリーニングであることは分かった。この辺りは、こういう店が多い関係かクリーニング店も、サービスから、朝に、回収に来てくれるところがあるようだ。隣の店の分は後から取りにくるのだろう。自分たちの店の分は、昨夜出しておいたので、店が閉店後に来たのか、それとも、ついさっき来たのか分からないが。すでに持って行ったのである。
 ただ、たまに、店から要望した時は、6時前という時間を指定して、配達してくれることがある。そんな時は、一人でも結構忙しい。女の子が出したクリーニングが、一気に届いたわけなので、それぞれの仕分けにも結構時間がかかる。他にももろもろある時は、結構大変な作業になったりする。それを思うと、彼は今日の予定がどうだったのか思い出したが、
「確か今日は、洗濯物が来るんじゃなかったかな?」
 と思い、少し憂鬱な気分になっていたのだ。
 車を置いた時、結構風が冷たく、寒いというのを直感していた。だが、朝目が覚めてから、洗面を使い、目が覚めるまで、少し時間がかかった。
 彼は、その時、起きてから今までのことを、おぼろげだった意識を起こすようにして、お意味出していた。ここまで寒いのであれば、もう少し、目が覚めるまで、早かったと思ったのだが、その感覚を感じることもなく、部屋を出るまで、なかなか目が覚めきれなかったのは、それほど、部屋の中が寒いとは思わなかったからなのかも知れない。
 水もそこまで冷たいと思わなかったのだろう。本当に冷たければ、あの瞬間に完全に目が覚めていたはずだからである。
 顔を洗って少しボーっとする時間が必要なほどだったのは、そこまで部屋全体が冷え切っていなかったからだろう。
 そんな日は部屋を出るまでの感覚があいまいだったこともあって、自分で感じている以上に、時間の感覚などなかったのだ。
 それでも、車に乗り込むと、それまで覚めなかった目が一気に覚める。もっとも、これは冬に限ったことであり、部屋よりも、表よりも、何よりも車の中が冷え切ってしまっていることがあるからだ。
 冬というものは、晴れている日の方が、相当に冷え込んでいるようで、それを放射冷却というのだという。
 イラストで勉強したことがあり、その時は理解したのだが、すぐに忘れてしまったのは、
「そんなことを覚えていても、何になるというわけではない」
 という思いがあったからだろう。
 彼は、車の中でエンジンをかけた瞬間、寒さを感じる。車の窓ガラスには霜が降りていて、前が見えないので、デフを使って、窓の曇りを溶かしていた。
「しまった。こんなに寒くなるなら、ワイパーを立てておけばよかった」
 と感じた。
 ワイパーのゴムのところが、凍り付いた窓ガラスにへばり付いてしまい、デフで暖めても、なかなか氷が解けることもなかった。しょうがないから、少し強引にワイパーを動かしてみる。
「ズズー」
 というかすれたような音がして、凍り付いたザラザラの表面をこすっているだけだった。
「ひどいなこれは」
 と思ったが、いまさら部屋からお湯を持ってくる時間もない。
 何とか前が見えるようになるのを待つしかなかった。
「少し早めに車に乗り込んでいて正解だったな」
 と呟いた。
 いつも、遅れるのは一番嫌いな彼は、いつも、定時と思う時間よりも、十分は早く行動するようにしている。店につくのが、予定としては。5時20分を想定していれば、5時前には、川の前の駐車場に停車させなければいけないという計画を立てていた。
 ここまで車で15分あまり、つまり、4時40分くらいまでに、発射させれば、いいという計算だった。
 さすがに寒いことも分かっていて、霜が降りているということは最初から想定内のことだったので、まだある程度の時間に余裕はあった。
 エンジンがあったまってくると、デフの温かさも増してくる。そうなると、氷つぃいていた霜も一気に解けてきてワイパーが普通に動くようになる。まるで雨が降っているかのような状況だった。
 車をスタートさせると、暖房も一気に効いてきて、その頃になると、眠気も覚めていて、あとは、車を走らせるだけだった、さすが早朝、タクシーが多いといっても、道がスイスイ、ほとんど、ごぼう抜きの状態で走ってこれた。
 想定していた時間とほぼ同じくらいの時間に到着し、エンジンを切って表に出ると、
「ふぃー、寒いな」
 と思わず、声に出してしまった。
 それだけ寒いのだが、声に出すことは想定していたが、その声に自分が反応するということまでは想定していたわけではなかった。それだけ、思った以上に車の中と表とで気温差があるようだった。
 たった十五分の距離なので、乗り込む時に比べて、こっちの方が、想像していた以上に寒いということであろうか。
「部屋があるのは、このあたりに比べて田舎だし、こっちの方が海に近いので、温かいと思っていたが、本当に寒い時は、寒暖が、逆転するのかも知れないな」
 と、感じたのだった。
 表に出て、思わず、トイレを終えた時のような震えを無意識に感じたことでも、寒さが厳しいのは分かったのだ。
作品名:泡の世界の謎解き 作家名:森本晃次