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泡の世界の謎解き

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「ええ、そういうことなの。そして、それは、一番犯人だと疑われやすい人にアリバイを作るためだとすれば、どうかしら? 警察が状況証拠や、動機、あるいは、まわりの人間関係から考えて、いよいよターゲットを絞って、その人を捜査し始めて、その人には完ぺきなアリバイがあるとすると、きっと捜査は混乱するわよね。それが、犯人たちによっての計画の一つだったのかも知れない」
 というりえの言葉に、一瞬、森脇は、違和感を感じた、
「えっ? 今犯人たちっていいました? じゃあ。これは共犯がいるということですか?」
「ええ、一人ではないと私は思っている。ある意味、動機もある意味バラバラなんじゃないかしら? それぞれに、利害関係が立場的に一致した人たちが、それでも、一つのものを守るため、ただそれが、犯人の中の一人にとっては、その守るものはどうでもいいことで、その人にとっては、利害というよりも、得はしないけど、このままでは地獄に落ちてしまうという自分の立場から逃れたいという一心のようなものがあったとすれば、共犯関係になったとしても、不思議はないでしょう?」
「それは、男女ということでしょうか?」
「ええ、おそらくはね。だから、最初に死体を発見させて、その女性のアリバイを立証させてあげたかったんだって思うわ。でも、ここに誘い出したのは彼女だと思うの。でも、誘い出した時間は、殺されるよりもずっと前、殺される数時間前ね。きっと、警察の鑑識の捜査で、被害者が殺される前に、睡眠薬を服用されていたこと。そして、縄で結ばれ、猿ぐつわをさせられ、どこかで拘束されていることを見つけると思うのよ」
「昨日の最後には、八部屋すべてを使っていたわけではなかった。確か、あの部屋は昨日の夜は開いていることになっていたんじゃないかな?」
「ええ、その通り。犯人たちはそれを利用したということなんでしょうね」
「でも、どうやって、あのお部屋に入れたのかな? 防犯カメラにも映らず、しかも、営業時間中に」
「それは、森脇さんだって知ってるでしょう?」
「ああ、そうか、女の子たちの入ってくる別のルートだね」
 と森脇がいうと、りえは頷いていた。
 ソープのようなお店の中には、すべての店に言えることなのかどうか分からないが、この店では、女の子が、お客さんと通路や入り口でバッティングしないように、別の通路が用意されている。
 そこは、普段は非常口と言われるところであり、防犯カメラは、基本ついていない。女の子たちは、非常口のカギを持っていて、自分たちがそこを使って入ると、そこを自分で閉めるようにしている。さらに、もう一つは、客に対しての禁止事項の一つに掲げられている。
「出待ち」
 というものの警戒にである。
 出待ちというのは、女の子が店を出る時、お気に入りの男性が、その子を待ち伏せしていて、声を掛けたりすることなのだろうが、さらにそれがエスカレートして、女の子を尾行することで住所を特定し、自宅に張り込んで、日常生活などのプライバシーを侵害するということである。
 当然法律で禁止はされているが、プライバシーを握った方は、
「会社や学校に、ソープで働いていることをバラすぞ」
 と言われれば、相手のいうことに従わなければいけなくなる。
 そういう意味で、客への身バレというのが一番怖いのだ。
 森脇が大体理解したところで、
「そうなの。私たちの一番怖いのは、客に身バレすることでしょう? あの丸山という男は、それを使って、女の子たちを脅迫しようと考えていたの。そして、最初につかささんに目をつけて、自分のものにした。もちろん、プライバシーを餌にね。それで嫌々ながら、丸山の計画に乗せられて、引き抜き計画をしたということなの。丸山という男、ギャンブルで首が回らなくなって、それで脅されていたようなんだけど、そういう意味では彼も一種の被害者といえるんだけど、でも、彼の場合は自業自得ね」
「じゃあ、彼を殺したのは?」
「きっと、組織の人間が、丸山が、ヤバいと思ったんでしょうね。まさかとは思うけど、利用されながら、組織の上前を奪うくらいの気持ちでね。それで、組織から消されたということなんじゃないかしら?」
「ということは、このお店にその内通者がいるということ?」
「ええ、でも、つかささんではないわ。彼女は、最初、密かに丸山を好きだったのかも知れない。でも、これだけの悪党だって最初から知っていたわけではないので、ちょっと危ない人というくらいの意識はあったんでしょうね。それが、彼を好きになった理由なのかも知れないけど。でも、そのうちに、丸山の悪事に気づいたので、向坂さんに相談した。そこで向坂は、店長に相談したんだと思う。そこで店長が、組織に話をしたんじゃないかしら? 一番うまくいくようにということでね。それで、組織にも、店側にも疑いが向かないように、事情関係のもつれで殺されたかのようにね。だから、逆に犯行現場はこのお店だったのよ。店で殺されていれば、まさか店の首脳が絡んでいるとは思わないでしょう? でも、スタッフや女の子も犯人にしたくはなかった。だから、アリバイを作らせて、少しでも、警察の捜索をごまかせたらと思ったのかも知れないわね」
「なるほど、企画立案した人と、実行犯とは別々だということなのかな?」
「ええ、そういうことだと思う。組織は、もうとっくに、この店から女の子を引き抜くことをやめていたんだと思う。それは、丸山があまりにもボヤボヤしていて、なかなか計画が進んでいなかったからなんでしょうね。丸山としては、計画通りに進んでいたのに、組織側は丸山をすでに見限っていた。ここまで協力したのに、報われないと知った丸山は、頭にきて、組織に対して握っている秘密を暴露するとでもいったのかも知れないわね。自分が殺されるかも知れないというのに、丸山としても、かなりの覚悟だったのかも知れない。でも、実は組織もしたたかなもので、警察に仲間がいるということなのかも知れないわね。だって。いくら組織といえども、人を一人殺すんだから、自分たちが絶対に安全だということでない限り、犯行には及ばないでしょう。ひょっとすると、まったく違うところから犯人が出てくるかも知れない。私はそんな風に思うのよね」
 と、りえは言った。
「今回の犯罪が、表に出てきた事実とは別に、一度錯乱させたと見せかけて、時間稼ぎの間に。他へとミスリードさせるということが目的だったということかな?」
「ええ、それも大きな目的。でもね、そのせいもあって、このお店は、その組織の傘下という形になるんだと思うの。その組織だって。表向きにはまっとうな企業なので、うちが、どこかの企業グループの傘下に入ったとしても、不思議はないでしょう? 今の世の中、生き残るためにはどこもやっていることだしね。これで、企業と、お店には何も傷つくことはない。警察もある意味、助かっているかも知れない」
「どういうこと?」
作品名:泡の世界の謎解き 作家名:森本晃次