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泡の世界の謎解き

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 それ以外の女の子であれば、今の世の中、SNSがあるおかげで、ネットにおいて、かなり叩かれることになるだろう。ファンからすえば、
「裏切られた」
 という思いが強く、グループのメンバーであれば、
「他の真面目に掟を守っている人たちに失礼ではないか? 脱退するか芸能界を引退するしかないのではないか?」
 というのが、大方の意見だったりする。
 こういうのは、時間が経っても、ファンは憶えているものであり、次に何かあった時は、まず誰も擁護してはくれない。
「前の反省もしていない」
 ということで、干されてしまうことになるだろう。

                 引き抜き

 ただ、アイドル業界にて、
「恋愛禁止」
 ということの理由は、
「ファンのため」
 というよりも、実際にはその女の子のためであった。
 ファンというのは、独占したいという感情から、ストーカー行為に走ることがある。恋愛しているなどと分かると、失望するファンがほとんどであろうが、彼らはファンを辞めるかも知れないが、それだけのことである。
 もちろん、ファンが減ることはアイドルとしては、死活問題であるが、ファンの中には、
まだ恋愛感情のようなものがあるとすれば、そこに妬みとのジレンマが生まれると、ストーカー行為に走ってしまう人もいるだろう。
「俺の、〇〇ちゃんが、他の男と……。そんなことになるくらいだったら、この俺が」
 という気持ちになって、逆恨みに発展することで、彼女に危険が降りかかってきてしまうことだろう。
 そんなことになれば、誰一人幸福になれず、皆不幸に陥る羽目になる。本人だけでなく、彼女もそうだ。
 付き合っているとされる男、さらには、事務所や関係者。誰一人として、救われることはないだろう。
 それを分かっていても、抑えることができないのが、ファン心理ではないだろうか。
「元々それを押し付けたのは、彼女であり、芸能事務所だ」
 と考える人がいれば、それはストーカー予備軍といえるだろう。
 だが、ファンというものはそういうもので、だからこそ、芸能界は危険と背中合わせなのかも知れない。
「私のファンは、私を神のように崇めてくれるので、そんなファンが私の不利になるようなことは決してしない」
 というのは、完全な思い上がりである。
 ファンというものは、人によって違うという前置きをしたうえで、そのほとんどは、
「自分中心主義」
 である。
「アイドルが活躍できるのは、自分がいるからだ」
 と、普通は思っている。
 だから、自分の中で作り上げた偶像を崇拝しているに過ぎない。あくまでも、アイドルが偶像でしかないことを理解している。だから、誰のものでもなく、自分のものだといえるのだ。
 アイドルがアイドルである間はそれでいい。しかし、そうではなくなった時、ファンは、ひょっとすると裏切られたと思うかも知れない。
 勝手に好きになって、勝手にフラれたと思うのであれば、それはしょうがない。しかし、そうではないだろう。
 あくまでも、
「自分のものだ」
 と思っている間だけ、自分のアイドルなのだ。
 そう思えなくなると、最初に浮かんでくるのは、裏切られた気持ちなのかも知れない。本当はアイドルとファンは、お互いにメリットを感じあえるという意味での疑似恋愛の対象なのだろう。だから。ファンは本当の恋愛はできないと分かっているからこそ、疑似恋愛を求める。それすらできないとなると、ファンは裏切られたとしか思えない。そう思わないと、自分がファンである意義がなくなるからであった。
「最後は彼女の人生を応援する。これまで癒してくれてありがとう」
 という気持ちで、自分が現実世界に戻っていくのが一番いいのだ。
 引き際がよければ、それが一番スッキリくるというもので。少しでも歯車が狂うと、余計な考えが頭に浮かんでくるものであろう。
 そんな時に、逆恨みであったり、ストーカー行為を起こすのだ。それが無意識であるから、感情というのは厄介だ。無意識でも、感情は反応するもので、こんな時にしか、
「意識が、感情を凌駕する」
 ということにはならないだろう。
 実に恐ろしいことである。
 何かの法律や規則、さらに縛りができる時というのは、本当に自分を縛ったりするということも、目的の一つとしてあるのだが、その逆に、
「自分を守る」
 ということが、副次的に、諮らずとも叶ってしまうことがある。
 それは、実際の目的は一つでも、目指すところとしての目標は表裏で二つある。そうつまりは、
「目指すものは、目的も目標も同じなのだが、表に見えない副次部分は、目標という形で達成されることになるのではないだろうか?」
 という考え方もありだと言えるだろう。
「じゃあ、殺されている丸山さんと、その付き合っていたことをウワサされた女の子は同じ頃に辞めていったのかな?」
 と、刑事が聞くので、
「いいえ、女の子の方が先でした。実はウワサが立ったのは、その女の子が辞めた後からなんです。だから、私は余計に信ぴょう性があるような気がしたんですよ」
 と、りえは言った。
「どういうことですか?」
「もし、二人が付き合っているのがウソで、その女の子か、丸山さんを陥れるのが目的だったとしましょうか? もし彼女をターゲットにしたのであれば、辞めてからウワサを流してもまったく意味がないわけですよね? じゃあ、丸山さんを陥れるためだと考えた時、理由として、丸山さんと付き合っている女の子を別れさせるのが目的だとすると、結局辞めた後では意味がない。そうなると、丸山さん個人への嫌がらせだとしても、辞めた人をターゲットにするのは、なるほど、火のないところに煙を立てるという意味でいいかも知れないですが、逆に、付き合っていたということが本当はなかったんだということを証明しているようなもの。そう考えると、このウワサは何のためだったのか、まったく分からなくなる。他に目的でもあったのではないかと思ってですね」
 とりえは言った。
 それを聞いた森脇は、
「ほう、このりえという女の子はなかなかの洞察力を持っているんだな」
 と感心してしまった。
 刑事もメモを取るのを一瞬やめて、りえの姿に見入っていたようだ。
 相変わらずの、不愛想な感じだが、なるほど、これだけ洞察力があるのだから、ツンデレ系であっても、不思議はない。この不愛想な雰囲気は、作られたものではなく、そもそもの癖のようなものではないかと、刑事は思っていた。
「その丸山さんとウワサのあった女の子というのは、どういう子だったんですか?」
「私も実際には知らないんですが」
 と、前置きをしたのは、前述の理由からだが、簡単にこの業界を知らない人間に言っても理解できるかどうか分からないので、
「変に時間を無駄にするよりは」
 と思ったのか、話を割愛していた。
「彼女はウワサによると、自信過剰なところがある人だったようです。それが自分の容姿に自信があったのか、それとも、客から人気があることで自信を持ったのかわかりませんが、雰囲気からもそんな自信過剰なところがにじみ出ている気がしましたね」
 と、りえは言った。
「じゃあ、あなたは、その女の子と話をして、どう感じましたか?」
作品名:泡の世界の謎解き 作家名:森本晃次