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泡の世界の謎解き

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 それを思い出した彼は、アップのテンプレートを探し、張り付けたのだった。店長もこれでいいと判断してくれるだろう。
 ただ、このため、電話が結構多くなるかも知れない。それはしょうがないことであるが、まずは、お客さんに迷惑をかけないことが先決だった。
 そもそも、この店の一部の女の子で、当欠が多い子がいた。まあまあの人気の子だったので、そんなに店から言われることもなかったが、客の中には、嫌気が差して、他の店に流れた人も多いという。SNSなどで、風俗店などの情報交換と言って、その実、店に対しての、誹謗中傷を書いたりして、それを見るのを楽しみにしている一部の常連もいるようだが、常連の中にも、
「さすがに、そろそろこの店も終わりなんじゃないか?」
 と書き込んでいる人もいるようで、今回の事件が、そんな客に対してどのような影響を与えるのかというのが、大きな問題であった。
 彼もそのサイトをよく見ていた。最初はそんなサイトがあるなど知りもしなかったが、店の女の子から、
「悪口をここで書かれないようにしないとね」
 と言っている話を聞いて、最初はただの興味本位で見ていただけだが、そのうちに、他人事で面白がってばかりもいられないと思うようになってきたのだ。
 その内容は、下手をすると、ネットの削除対象にならないかと思うほど、リアルであったり、過激なものもあったりした。
 さらに、下手をすれば、
「個人情報が漏れたりしないか?」
 と思うほどの書きこみもあったりして、さすがに少し怖く感じたほどだった。
 だから、今回の事件において、何を書かれるか分かったものではない。たぶん、明日には、
「お店で殺人事件だってよ」
 と当店のスレで、話題になっていることは必至な気がする。
 なぜなら、少なくとも最初の客はここに来るのだからであるが、今日以降をネットや電話で予約をしている人は、
「30分前に、確認のご連絡をお願いします」
 と言ってあるので、その時点で、断りを入れればいいだけだった。
「なるほど、こんなことが起こった場合という意味でも、三十分前に客に連絡をさせるというのは、いい対応なのかも知れないな」
 と彼は思った。
 だが、実際には、その連絡があった時、なんといえばいいのか、そのあたりを、店長を交え、協議する必要があるということだろう。
 この店のスタッフは、店長を入れて、十人だった。
 マネージャーと呼ばれる人も二人いて、いわゆる管理職以上は三人ということだ。
 今回のスタッフは、まだ新人のようなものだとは言ったが、半年は経っているので、完全な新人ではない。彼の後輩になる人が入ってきておらず、彼が一番の下っ端ということで、便宜上、新人と呼んでいるだけだった。
 スタッフも一番の新人ともなると、女の子のベテランなどからは、どうしても、舐められるところもある。ただ、この業界の女の子の入れ替わりは結構激しいので、彼が入店してきてからでも、数人が辞めていき、新人として入ってくる女の子も数人いた。そういう意味では、
「辞めた分だけ、新人で補充できている」
 といえるだろう。
 だが、そんな女の子でも、入店してから、ひと月もしないうちに、すでに慣れてしまっていて、下手をすれば、彼よりも詳しくなっていて、しっかりしているように見え、
「どっちが、ベテランかわかりゃあしない」
 とばかりに、他の男性スタッフから言われることもあったりした。
 だが、それもある意味仕方がなかった。女の子は新人といっても、この業界未経験という子は少ないだろう。
「他の店からの移籍」
 というイメージの子もいれば、
「以前は、デリをしていました」
 と、デリヘル嬢だったということを明かす子もいた。
 別にスタッフに隠す必要はない、女の子も面接で履歴書を持ってきているのだから、そこには、正直に書いている人が多いだろう。隠すことのメリット、デメリットを考えれば、経験者という方がメリットはあるに違いないからだ。
 だが、そんな女の子でも、店にあるパネルや、ホームページの紹介ページ、さらには、無料案内所での広告などには、
「業界完全未経験」
 と書かれていたりする。
「君のような清楚で素直(に見える)な女の子は、業界完全未経験で売った方が、お客さんが喜ぶんだよ」
 ということで、店内のみが知っているという、
「お約束」
 となっているのだ。
 ただ、客の中には風俗でいろいろ遊んでいるツワモノもいる。そんな連中であれば、
「この子は、あそこの店にいた、〇〇ちゃんだ」
 ということがバレるだろうが、だからといって、それを知った一般客が、
「詐欺ではないか」
 ということはないだろう。
 それくらいのことは、
「公然の秘密」
 であり、業界未経験という言葉を一切信用していない輩も多いことだろう。
 だから、店側もそれを承知で敢えて書く。客としても、その子に興味を持って、予約を入れてくるかも知れない。
 その理由として、
「バレるかも知れないというリスクを負ってまで、未経験を押すのであれば、それだけ彼女の客に対しての対応が、清楚で素直さを前面に押し出しているのかも知れない」
 と感じるからだ。
 客としても、別に女の子を本当の彼女のように思っているわけではない。あくまでも疑似恋愛を楽しむという感覚で、
「楽しい時間を、お金で買うのだ」
 と割り切っているから、相手に彼氏がいてもおかしくないと思いながらも、
「お気に入りの女の子だから、自分が買った時間だけは、疑似恋愛ができればいい」
 と思っているのであろう。
 そうでないと、風俗遊びはできないのではないか。できたとしても、変にまじめに考えてしまうと、苦しい思いをしたり、傷つくのは自分だけだからである。
 客がそんな思いをしているとしても。女の子たちが同情などしてくれるはずはない。女の子たちは、どうしても、商売でしているわけで、二人だけの時間、癒しになってあげられればいいという考えは持っているので、それ以外の時間、過度に期待を持たせるようなことをしてしまうと、女の子側としても、
「罪作りなこと」
 をしてしまうという考えから、接客の難しさと、プライベイトでは、いかに客を本気にさせないかというのも、彼女たちにとって重要なことではないだろうか。
 これが、キャバクラなどになると、犯罪が多くなるのだろう。なぜなら、性的交渉をしていない場合が多いからだ。キャバクラなどでは、
「いかに男をその気にさせて、金を貢がせるか?」
 ということが問題なのであろうが、ソープなどのような性風俗特殊営業となると、
「男の肉体的な最終目標は、お金を伴うということで満足でき、さらに癒しを貰うということで、精神的にも成就できる」
 だから、それ以上を望まない限りは、男性も満足できるのだろうが、中にはそれ以上を望む人もいるかも知れない。
 この場合のそれ以上というのは、どういうことであろうか?
 いわれる、
「疑似恋愛の疑似という言葉がとれたような感情になり、自分のことだけを好きになったのではないか?」
 と思うことであろう。
作品名:泡の世界の謎解き 作家名:森本晃次