ドクター・ヤブ田の、らくらく医学講座
口臭を考えるとき、一番のネックは、本人がそれに気付かないことである。
におい関係の問題はいずれも共通点があって、「加齢臭」なども本人に自覚されないのが最大の難点である。
口臭も誰かが指摘してあげれば、早めに対策を立てられるが、そうでないことが多い。
本当は、奥さんか家族が、それとなく、本人のプライドを傷つけないように気づかせてあげられればよいが、それは意外に難しいことである。
そのため、そのまま放っておかれるので、結局、被害に遭うのは、私のような医者である。
口臭のひどい人が診察室に入ると、とたんに部屋中が臭くなる。
診察室に入ると、患者さんは緊張するものだが、緊張するとよけい口臭や体臭は強くなる。
それほど強い口臭でなくても、軽い口臭は診察中にわかる。
対面して、聴診器をあて心臓や呼吸の音を聴くが、その時、口臭の被害に遭うことになる。
おなかの診察の時は、もっと被害が大きい。
患者さんは仰向けにベッドに寝るので、吐く息が、真上に上昇して私の鼻にまともに吹きつけられる。
こういうとき、患者さんがどんな美人でも、それだけでイメージは損なわれてしまう。
このことを、昔から、「百の説法、屁ひとつ」などといっている。
美人でない場合は大丈夫かというと、もちろんそうではない。不美人の印象はさらに強固になるものである。
作品名:ドクター・ヤブ田の、らくらく医学講座 作家名:ヤブ田玄白