ドクター・ヤブ田の、らくらく医学講座
加齢臭の人たちはどうか知らないが、世の中全体は臭いに対して敏感になってきたようだ。
以前、NHKのニュースで、「臭気判定士」のことを取り上げていた。
その中で、食品への「移り香」を実験的に証明するのが面白かった。
カップめんと防虫剤を一晩一緒に冷蔵庫に入れておいて、翌日、カップめんを精密な分析器で測定すると、防虫剤の成分が検出されたのである。
この原理からいけば、加齢臭のある人と長時間一緒にいると、私の体内に加齢臭の成分が移ってしまう危険がある。気をつけなければいけない。
私も「臭気判定士」ほどではないが、嗅覚は敏感なほうだ。
魚が生臭くなったり、カニが古くなっているとすぐにわかるし、人間が古くなったのもすぐにわかる。
私の部屋を訪れる営業マンの整髪料やタバコの臭いで、誰が来たかすぐにわかるから、好みの匂い以外は入室を許可しないことにしている。
患者さんも同じだ。
ほのかな芳香は許せるが、ドギツイ香水はやめて欲しい。
いつだったか、診察室に、フィリピンパブの女性が香水をプンプンさせながら入ってきたことがある。
非常に迷惑である。
私は診療を忘れて一杯飲みたい気持になった。仕事のあとで来てほしかった。
作品名:ドクター・ヤブ田の、らくらく医学講座 作家名:ヤブ田玄白