ドクター・ヤブ田の、らくらく医学講座
今朝、外来に来たのは、75歳ぐらいの女性だった。
「このごろ、正座すると足が痺れるんですが、何かよい治療法はないでしょうか?」と言う。
〈正座して足が痺れない人はないだろう〉と思ったが、一応、
「以前には正座しても痺れることはなかったのですか?」と尋ねると、
「ハイ、踊りなどやっていたものですから、正座しても昔はなんともなかったんですが、最近は痺れるようになりました」と言う。
〈肥ったせいだろう〉と思ったが、黙っていた。
私にとっては、正座できること自体が羨ましい。
私は膝が悪いため、法事の席ではいつも困っている。
「正座できるだけで大したものですヨ。とても羨ましい。それに、正座して足が痺れるのは、特に病気ではないでしょう」
と私としては、精一杯やさしく励ましたつもりだったが、あまり嬉しそうでなかった。
「変形性膝関節症」では、関節を支える筋肉を鍛えることが重要である。
私も、暇があれば、ソファに横になって、片足を20秒から30秒、挙上するトレーニングをしている。
重力に逆らって足を上げるだけだが、膝を支える筋肉は鍛えられるようだ。
私は右膝が悪かったため、右足ばかりやっていた。
一ヶ月後、右足の筋肉だけが太くなっていて、気味が悪かった。
たまには左足もやったほうがよかった、と反省している。
作品名:ドクター・ヤブ田の、らくらく医学講座 作家名:ヤブ田玄白