ドクター・ヤブ田の、らくらく医学講座
加齢による症状は関節だけではない。例えば、
「先生、このごろ目が疲れるんですけど、どういうわけでしょう?」
「腰が痛いんですけど、・・・」
「足が痛いんですけど・・・」など。
こういう時、医者としては、患者さんにどう対処すべきなのだろう?
「年のせいです。」は禁句なのだ。
どのような表現に換えて、患者さんを納得させるかによって、医者の実力が試される。
私の場合、表現力に問題があるため、笑ってごまかすか、「特別な病気ではないでしょう」と突き放すか、いずれかにしている。
「年のせいです。」と、正しい意見を言っていけないのは、なぜなのか?
理由は、患者さんが決して賛成しないからだ。(「ハイ」と返事しても、心の中では〈そんなはずない〉と思っている)
「年のせい」が許されるのは、まあ90歳以上だろう。
80代でも微妙なところがあり、70代ではかなり注意しなければならない。
60代では原則禁止であり、50代、40代の場合は殺されるかもしれない。
しかし、まれに勇気のある医者もいる。
私の膝を診察した整形外科の専門医などだ。
彼は、私の話を聞いただけで、「それは『変形性膝関節症』という老化現象です」と言った。
患者が人格者だったからよかったが、病院にいる別の医者が患者だったら、専門医は二、三発くらっていたところだろう。
それほど、「年のせい」は患者さんにとって痛い言葉なのである。
作品名:ドクター・ヤブ田の、らくらく医学講座 作家名:ヤブ田玄白