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呪縛の緊急避難

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 きてほしいと言われて行ってみると、真美の部屋はカギが開いていた。中に入ってみると、玄関先にはキチンと鬱は脱がれていたのだが、リビング迄の通路にブラウスが脱ぎ捨てるように置いてアリ、几帳面な真美にしては信じがたい光景であった。いかにも普段と違う光景であることに嫌な予感を感じたあいりは、部屋の中に入ってみた。
 キッチンと合わせると八畳くらいのリビングは、テーブルとテレビ、そしてテレビ台を本棚替わりにしているので、本棚などの余計なものは、置いていないので、サッパリした部屋に見える。几帳面というよりも、本当は片づけを嫌う真美が、片づけなければいけないものを最初から置いていないだけだ。片づけが下手で、モノもなかなか捨てられないあいりからすれば、
――まったく違う性格だ――
 と、そこだけで断言できるほどであった。
 ところどころに距離をかん汁あいりだったが、実際にはすぐそばにいるのが真美だと思っていたが。真美の方は逆に、
「あいりとはいつもそばにいるような感じがするんだけど、これって私の勘違いなのかしら?」
 と言っていたことがあり、それを聞いた時、少し愕然とした、
 まったく正反対であるが、両面の感覚を持っているという意識の持ち方が類似しているということで、真美と一緒にいる理由がそのあたりにあるのではないかと感じるほどだった。
 あいりは真美と仲良くなったのは本当に偶然であったが、偶然だと思っていたことが本当は、
「出会うべくして出会った相手」
 だと思うようになるということもあるということを、身に染みて知ったような気がする。
 今まで知らなかった世界を教えてもらえそうだというのもその一つであったが、気付いていないところでの共通点の多さ、そんなことを感じているうちに、
――親友というのは、こういう関係をいうのかも知れない――
 と感じるようになった。
 真美があいりのことをどう思っているかは分からないが、少なくともあいりは米のことを自分なりに分析しているつもりだった。
 そして、最近になって気になっていたのが、
――真美に誰か彼氏ができたのではないか?
 という危惧だった。
 自分にいない彼氏を先に作られたという嫉妬からの器具ではないかと、普通であれば感じるだろうが、あいりのその予感は違っていた。
――真美が誰か、変なやつにかどわかされてているのではないか――
 という思いであった。
 会社の帰りもいつも一緒だったにも関わらず、最近は別々に帰ることも多いし、最近ではスマホを見ながら喜んだり、何かを心配している残念な表情になっていたりと、今までではありえない上場をしていた。明らかに恋をしている雰囲気だった。
「自分に恋愛経験がないにも関わらず、どうして他人のことなら分かるのか?」
 と言われるが、
「分かるものは分かる」
 としか言いようがない。
 特に親友だと思っている相手には、自分と重ね合わせてみることが多いので、当然自分との違いが浮き彫りになってくる。その部分をさらに見つめようとすると、普段は見えるはずのないものが見えてくる気がした。それがきっと、
「自分に恋愛経験がないにも関わらず、どうして他人のことなら分かるのか?」
 という質問に対しての答えなのかも知れないと思うのだ、
 ただ、そんなややこしい過剰をいかに表現すればいいかを悩み、さらに相手にそれが伝わらなければ、何をやっているのか分からなっくなる、それであれば、回答も、
「力技」
 でいけばいいのではないかと思うのも無理のないことではないだろうか。
 あいりは、真美の勝手知ったる部屋を、なるべくしの状態を崩さないようにした。
 刑事ドラマなどでは、
「現状をなるべく動かしてはいけない。現状維持が大切だ」
 と言われているのを見ていたから、そう思ったわけではない。
 単純に、几帳面な真美に、
「何か触った」
 と思われるのが嫌だったのだ。
 しかも、彼女の部屋には余分なものが何もないことから、少々何かが散らかっていても、そこには何かの意味があるのではないかと余計なことを考えてしまう。そういう余計なことを考えてしまうのも、あいりの悪い癖の一つではないだろうか。
 通路にブラウスが一枚落ちていたがが、リビングに入ってみると、、別に何か散らかっているわけではない、ただ、一つ気になったのが、テレビがついていたことだった。
 テレビがついていることで、それだけで生活反応を感じる、
「たった今まで、ここに真美はいたんだ」
 と思って間違いないだろう。
 どうしてテレビが付いたままなのか、深くは考えず、消そうとも思わなかった。一つ気になったこととすれば、
「何かボリュームが大きい気がする」
 というものだった。
 真美を知らない人には気づかないことだろう、しかし、真美を知っている人は、
「このボリュームはちょっと大きいわね」
 と思うだろう。
 彼女は、元々あまり騒音の場所は嫌っていた、映画やカラオケなどは誘っても来ない。スポーツ観戦も来ないことから、それだけでまわりからm
「付き合いが悪い」
 と言われていたが、その理由はすべてを冷静に考えれば容易に分かることで、つまりは、
「騒音が嫌いだ」
 ということなのだ。
 あいりも騒音は苦手だったが、大丈夫なものと苦手なものがある。きっと世間一般の人は皆あいりのような性格なのだろう。
 つまり好きなことであれば、別に騒音も気にならないが、好きになれないことやどうでもいいことに対しては、大きな音は騒音として苦痛にしか感じないということである。
 あいりだって、音楽が好きなので、コンサートやライブは気にならないが、映画館には二時間であっても苦痛である。
「ライブやコンサートだって、二時間以上あるでしょう?」
 と言われるが、
「音楽と映画のようなセリフとではまったく違うのよ」
 と説明しても、映画好きの人には理解できないようだが、
「でも気持ちは分かるよ」
 と言ってくれた。
 しかし、真美に関しては、そのどちらも最初から敬遠している。したがって気持ちも分かるはずがないというのが、彼女の感覚なのだろう。
 そんな真美がいくら自分の部屋で自分一人しかいないとはいえ、テレビのボリュームを大きくするというのは、どう考えても理屈に合わない。そのことを気にしながら、キッチンの方に行ってみると、昼食を摂ったあとの食器がそのまま洗う前の状態で置かれていた。
 ただ、一度水洗いをしてある。これは、より綺麗にするためには、一度水洗いをしておいて大雑把なところで汚れを落としておいてから、少し時間が経ってから潜在で洗うという真美なりの後片付けのやり方だった。
 それがいいのか悪いのかは、あいりには分からなかったが、真美がそれでいいと思っているのだから、否定することはできない。ただ、
「私にはできないことだ」
 と思うだけだった。
 ということは、昼食を摂ってからそんなには掛かっていないということか、少なくとも一時間は経っていないだろう。
作品名:呪縛の緊急避難 作家名:森本晃次