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天才少女の巡り合わせ

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「それとも少し違うような気がする。一つ言えることは、ここまで生きてくると、今まで一緒だった人が次々といなくなるということを身に染みて感じてきたというのかな? 極端な話が、ずっと毎日会っていて、いつもくだらない話に花を咲かせてきて、昨日まで一緒にこうやって話をしていた人が、今日は姿を見せないと思ったら、脳溢血か何かで帰らぬ人になっていたなんてよくあることになってくるんだよ。それが、死に対しての感覚をマヒさせたというのであれば、そうなのかも知れないけど、感覚がマヒする前に、何か別の感覚が生まれるようなきするんだよね」
「なるほど」
「だから、その感覚が何かの力を持っていて、虫の知らせを呼ぶんじゃないかって思うと自分で納得が行くんだよ。きっと自分の死ぬ時も、誰か予感してくれる人がいるんだろうなって感じているよ」
「おばあさんのまわりに同じような力を持った人がいるということですか?」
「私はいると思っているんだよ。類は友を呼ぶという言葉があるだろう? まさにあの言葉通りの感覚だね」
 綾子はおばあさんと話をしていると、自分の中に眠っていた何かの力が芽生えてきた気がした。その力というのは今までに感じたものではなく、何か別の力が影響しているように思えた。
――ひょっとすると、おばあさんと仲良くなったことで、おばあさんの力と自分の力が共鳴したのか、おばあさんによって、潜在していた力が意識として目覚めようとしているのか、久しぶりに意識のある予感めいたものが生まれてきた気がするのだった……。

              ナイトのようなお兄さん

 綾子にとって最近の楽しみは、学校の近くにある交番に立ち寄ることだった。そこには中学生の頃からお世話になっている巡査さんがいたのだ、その巡査は綾子が初めて拾得物を拾って、交番に届けた時にいた「お巡りさん」で、本当に丁寧に接してくれた、
 確かに仕事だとはいえ、今までこんなに優しく接してもらったことはなかった。小学生の頃、テレビでウソつき呼ばわりされて、まわりを恨むことは表向きにはなかったが、やり場のない気持ちをどうしていいのか思いあぐねていたのは確かである。
 そんな時、優しくされると初めて自分が人間扱いされたような気がして、本当に嬉しかった。学校でも家でも、完全に自分の存在を消すことだけを考え、あるかどうか分からない自分の気配を消す力を必死に押し出そうとしていた日々がやるせなかった。
 おかげで誰も相手にしてくれなくはなったが、そのうちに苛めの対象になる時期が来てしまった。
――余計なことをしたからかしら?
 と無理に潜在的なことを意識してしまったことが、自分の命取りになったと思ったのである。
 だが、苛められていた時期も本の少しだけだった。
――これから本格的な苛めに入ってしまうかも知れない――
 と思っていたところを綾子は免れたのだ、
 他に苛めの対象が移ってしまったことで、事なきを得たのだが、それは自分の力によって、苛めている連中が綾子を怖がったことで、綾子を敬遠するようになったということで、偶然などではなく、必然だったのかも知れない。
 綾子にとって中学時代に味わった苛めが、もしなかったとすれば、高校に入ってからの綾子は何を考えていただろう。
 きっとそれまでの人との出会いもまったく違っていただろうし、それによって、人生が百八十度変わってしまっていたかも知れない。
 お巡りさんと知り合ったのも、苛めを受けている頃だった。
「捨てる神あれば拾う神ある」
 という言葉通り、苛めがなければ、このお巡りさんと知り合うこともなかっただろうし、超能力も封印してしまい、二度と使うこともなかったに違いない。
 お巡りさんは、綾子は苛めに遭っている場面に必ずと言っていいほど現れた。学校の中でだけはさすがに入ってこれなかったが、苛めをしている連中は、学校では決して綾子を苛めることはしなかった。
 綾子を苛めている連中は、学校で苛めをしてしまうと、先生にバレてしまう。先生にバレると、進学にも困るということで、彼女たちからすれば、ストレス解消のための苛めで、自らの立場を崩すところまではしたくないという。臆病風に吹かれた苛めしかできない小心者だったのだ。
 だから、綾子を苛めている時に必ず現れるお巡りさんを、最初はただの偶然だと思っていたかも知れないが、それが偶然ではないと思うようになると、今度は綾子が急に怖くなった。
「あの子を苛めていると、お巡りさんがそばにいつもいる」
 という定説が出来上がってしまい、お巡りさんが怖いというよりも、お巡りさんを引き寄せる綾子が怖かったのである。
 その心情は他の人に言わせれば、
「そんなバカなことがあるはずないじゃない。バカみたい」
 ということになるのだろうが、実際には彼女たちの思っていた通りだった。
 綾子の中にある助けてほしいという意識が、そのお巡りさんの頭に予感のようなものとして湧いてくる。
 これは超常現象の中でも超能力として一般的に言われている、
「テレパシー」
 というものではないだろうか。
 自分に襲ってくる危険を、彼女は助けてほしいという気持ちを普通であれば誰ともいえず、不特定多数相手に発信する、
 しかし、不特定多数に発信すれば、パノラマ状に広げれば広げるほど、その力は薄くなってしまう。そんな薄い意識であれば、どんなに霊感やテレパシーを持っている人であっても、その意識をキャッチすることは難しいだろう。
 万が一、その発信を受信することができたとしても、
「錯覚なんじゃないか?」
 と思ってしまうと、まず、そのどこの誰からの発信かということすら分からず、一度きりの意識であれば、完全にスルーしてしまうだろう。
 そう、不特定打数なのだから、相手を限定していない。だから、キャッチした相手が動くことができないのだ。
 不特定多数に自分のピンチを発信するということは、何も綾子のような超常現象をもっていなくても、ちょっと練習すればできることである。しかし、それを一人の人をターゲットにして送ろうとすると、そこには普通の人間では難しい力の存在を必要とする。
 綾子は、それができる数少ない人の一人だった。相手をお巡りさんに絞って意識を送り続ければ、お巡りさんはその意識を察してくれて、苛めが行われる寸前のところで回避させてくれる。
 もし、苛められている部分を目の当たりにすれば、それこそ警察沙汰である、なるべく苛めを未然に防ぐというやり方をしないと、意味がないのだった。
 しかも、苛めの前にお巡りさんが出現するということで、苛めっ子たちの方で、自分たちがまるで見張られているのではないかという疑心暗鬼に捉われるのではないだろう。
 そう思うと、綾子にとって、その巡査を利用することは、本当は忍びないと思いながらも、
「背に腹は代えられない」
 という自己防衛のための、一種の緊急避難のようなものだったのだ。
作品名:天才少女の巡り合わせ 作家名:森本晃次